〜第一章〜 美味しいお米の育て方
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頭から首までを覆う広いつばの農作業帽に、目を隠す大きなサングラス。
全身をすっぽりと覆う長袖のシャツと長ズボンを長靴の中にしまい込み、一切の素肌を許さない厳重な装備で、私は黙々と玉ねぎを収穫していた。
夏休みだというのに、友人たちと遊ぶでもなく、真夏の太陽がじりじりと照りつける畑で、泥と汗にまみれていた。
「あのー……」
そんな私の耳に、涼しげな声が届いた。
日頃、収穫した作物を売ってほしいと声をかけてくる通行人は少なくない。
今回もまた、そうだろうと思っていた。
だけど、青年は私の予想とは違う言葉を口にした。
「ここの地主さんは誰ですか?」
どうやら、作物が目的ではないらしい。
地主である、私のじいちゃんに用があるようだ。
私は近くで作業をしているじいちゃんを大きな声で呼んだ。
「じいちゃーん、お客さん!」
耳が遠くなったじいちゃんは、私の声が届かなかったのか、一瞬こちらを向いたものの、すぐにまた作業に戻ってしまった。
「また耳が遠くなったな、全く……。案内するから付いてきて」
私はそう言って、畑の土を踏みしめながら進み始めた。
青年は、土で汚れることを気にしている様子もなく、私の後をついてくる。
足元を見ると、なんだか綺麗そうな靴を履いていた。
畑で泥だらけになってもいいのだろうか。
そんなことを思いながら、じいちゃんの元へとたどり着いた。
「じいちゃん、お客さん」
青年は私にぺこりと頭を下げ、じいちゃんと話し始めた。
私は、2人の会話が気になりながらも、さっきまで作業をしていた場所へと戻る。|
……。
…………。
しばらくして、じいちゃんに呼ばれた。
「●●ちゃん!」
「なにー?」
「彼に空いてる畑の案内をしてやってくれ」
じいちゃんの言葉に、私は戸惑った。
意図が分からないけれど、言われた通りに青年を連れていくことにした。
照りつける日差しに、耐えきれなくなって私は農作業帽とサングラスを脱いだ。
帽子を脱ぐと、汗で額に張り付いた髪が、風に揺れる。
「地主さんのことをじいちゃんって呼んでたから、ひょっとしてと思うてたけど、君若いんやね」
「高校3年生。夏休みだからじいちゃんの畑手伝ってるの」
「偉いな」
見ず知らずの人に褒められても、特に嬉しいという感情は湧かなかった。
「ここが空いてる畑。ここからあそこまでと、もう1つが農道挟んだ向こう側」
私は、空いている畑を指差しながら説明した。
本当は他にも空いている畑はあるけれど、近々都心開発がどうとかで、駐車場になることが決まっている。
「おおきに」
青年はそう言って、畑の土を触ったり、歩幅で距離を測ったり、農業用水路を確認したりと、熱心に畑を見て回っていた。
彼も私に負けず劣らず若く見える。
一体、何のためにこの畑を見に来たのだろうか。
農家の卵なのか、それとも別の建物を建てるための下見なのか。
様々な疑問が頭をよぎった。
一通り畑を見終えた彼は、またじいちゃんのところまで連れていってほしいと私に頼んだ。
人のことをパシリにしすぎではないか?
そう思いつつ、私は再び彼をじいちゃんの元へと案内した。
青年とじいちゃんは、また何やら話し込んでいる。
そして、2人の話が終わると、じいちゃんは作業をしていた従業員と私を呼び集めた。
「彼は農業大学の3年生の北信介君だ。空いている畑を貸すことにしたから、何かあったら手伝ってやってくれ。特に●●ちゃんは歳が近いから、仲良くな」
まさか、こんな若い人に畑を貸すなんて。
じいちゃんが許可したということは、きっと彼に何か感じるものがあったのだろう。
北信介……。
これが私と彼の出会いだった。
全身をすっぽりと覆う長袖のシャツと長ズボンを長靴の中にしまい込み、一切の素肌を許さない厳重な装備で、私は黙々と玉ねぎを収穫していた。
夏休みだというのに、友人たちと遊ぶでもなく、真夏の太陽がじりじりと照りつける畑で、泥と汗にまみれていた。
「あのー……」
そんな私の耳に、涼しげな声が届いた。
日頃、収穫した作物を売ってほしいと声をかけてくる通行人は少なくない。
今回もまた、そうだろうと思っていた。
だけど、青年は私の予想とは違う言葉を口にした。
「ここの地主さんは誰ですか?」
どうやら、作物が目的ではないらしい。
地主である、私のじいちゃんに用があるようだ。
私は近くで作業をしているじいちゃんを大きな声で呼んだ。
「じいちゃーん、お客さん!」
耳が遠くなったじいちゃんは、私の声が届かなかったのか、一瞬こちらを向いたものの、すぐにまた作業に戻ってしまった。
「また耳が遠くなったな、全く……。案内するから付いてきて」
私はそう言って、畑の土を踏みしめながら進み始めた。
青年は、土で汚れることを気にしている様子もなく、私の後をついてくる。
足元を見ると、なんだか綺麗そうな靴を履いていた。
畑で泥だらけになってもいいのだろうか。
そんなことを思いながら、じいちゃんの元へとたどり着いた。
「じいちゃん、お客さん」
青年は私にぺこりと頭を下げ、じいちゃんと話し始めた。
私は、2人の会話が気になりながらも、さっきまで作業をしていた場所へと戻る。|
……。
…………。
しばらくして、じいちゃんに呼ばれた。
「●●ちゃん!」
「なにー?」
「彼に空いてる畑の案内をしてやってくれ」
じいちゃんの言葉に、私は戸惑った。
意図が分からないけれど、言われた通りに青年を連れていくことにした。
照りつける日差しに、耐えきれなくなって私は農作業帽とサングラスを脱いだ。
帽子を脱ぐと、汗で額に張り付いた髪が、風に揺れる。
「地主さんのことをじいちゃんって呼んでたから、ひょっとしてと思うてたけど、君若いんやね」
「高校3年生。夏休みだからじいちゃんの畑手伝ってるの」
「偉いな」
見ず知らずの人に褒められても、特に嬉しいという感情は湧かなかった。
「ここが空いてる畑。ここからあそこまでと、もう1つが農道挟んだ向こう側」
私は、空いている畑を指差しながら説明した。
本当は他にも空いている畑はあるけれど、近々都心開発がどうとかで、駐車場になることが決まっている。
「おおきに」
青年はそう言って、畑の土を触ったり、歩幅で距離を測ったり、農業用水路を確認したりと、熱心に畑を見て回っていた。
彼も私に負けず劣らず若く見える。
一体、何のためにこの畑を見に来たのだろうか。
農家の卵なのか、それとも別の建物を建てるための下見なのか。
様々な疑問が頭をよぎった。
一通り畑を見終えた彼は、またじいちゃんのところまで連れていってほしいと私に頼んだ。
人のことをパシリにしすぎではないか?
そう思いつつ、私は再び彼をじいちゃんの元へと案内した。
青年とじいちゃんは、また何やら話し込んでいる。
そして、2人の話が終わると、じいちゃんは作業をしていた従業員と私を呼び集めた。
「彼は農業大学の3年生の北信介君だ。空いている畑を貸すことにしたから、何かあったら手伝ってやってくれ。特に●●ちゃんは歳が近いから、仲良くな」
まさか、こんな若い人に畑を貸すなんて。
じいちゃんが許可したということは、きっと彼に何か感じるものがあったのだろう。
北信介……。
これが私と彼の出会いだった。
