〜第二章〜 恋人と呼びたくない
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~第二章〜 恋人と呼びたくない
大学3年生の夏。
研磨と一緒にしたゲーム実況をきっかけに、私たちは付き合いを始めた。
夏休み中は研磨の家に入り浸ってゲーム三昧。
時々気分転換に出かけ、他愛のないことで笑い合う。
そんな些細だけど、幸せすぎる日々を送っていた。
だけど、夏休みが明け大学へ行くと、回りの空気は一変した。
友達はみんな就活モードに入り、口を開けばエントリーシートだの、面接だの、将来について真剣に語り始める。
「●●もそろそろ準備した方がいいよ」
「早くない?私たち、まだ3年生だよ?」
友達の指摘に平静を装うけれど、内心気が気じゃなかった。
将来のことなんて、何も考えていない。
それを誤魔化すために、私は研磨の家で現実逃避した。
ーーーー
研磨は相変わらずゲームに没頭している。
画面から流れる効果音と、コントローラーを操作するカチカチ音が静かな部屋に響く。
その変わらない姿に安心しながら、私は研磨のベッドにうつ伏せになる。
だけど、心のそこでは将来についての不安は残ったまま。
そんな私を見透かしたように、研磨は気に掛けてくれた。
「●●、元気ないね。一緒にゲームする?」
その声はいつもより少しだけ優しく聞こえる。
「しない」
それなのに、私はぶっきらぼうに答えた。
「じゃあ、どこか出かける?」
「行かない」
「そっか……」
私のやる気のない返事に、研磨はきっと面倒くさそうな顔をしている。
見なくても分かる。
だって自分でもそう思うから。
同じ学生なのに、研磨は自分の好きなことで成功している。
そんな彼が誇らしいと思うと同時に、自分の将来に対する漠然とした不安が多きな嫉妬となって、心を侵食していった。
初めはゲームをしている研磨に安心していたのに、我ながら本当に勝手だ。
「研磨はいいよね、起業しているから。しかも、それが上手く行っているんだもん」
「……」
言い放った後で、直ぐにトゲのある言い方をしてしまったことに気が付いた。
研磨は黙ってコントローラーを置き、部屋の静けさがいっそう際立つ。
研磨を傷付けてしまったのではないかと、急に不安に駆られた。
だけど、彼はすぐに納得したように呟いた。
「ああ、そう言うこと。●●は将来やりたいことないの?」
彼の真っ直ぐ問いかけに、私は自分の感情を隠すように答える。
「ゲーム……とか?」
「プロゲーマーになりたいの?」
「それは違うかも」
趣味を仕事にするとツラくなったときの拠り所がなくなるから。
「企業説明会行ってみたら?やりたいこと見つかるかもしれないし」
「……うん、分かった」
本格的に就職活動が始まるのは来年。
研磨の言うとおり、今年は情報集めと本当にやりたい職種を決めることにしよう。
そう自分に言い聞かせながら、再び布団に顔を埋めた。
