負けは格好悪いですか
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大会当日。
体育館に足を踏み入れると、エアーサロンパスの臭いが鼻をかすめた。
照明は煌々とコートを照らす。
私は予定通り勝ち残った。
タイムシフト通りに進む試合に、高鳴る心臓を抑えきれない。
このまま行けば、あと20分後には決勝戦が始まる。
相手は、先月の練習試合で私を打ち破った、白鳥沢の部長、宮田さんだ。
あの時とは違う、最高のコンディション。
今度こそは勝ってみせる。
観客席を見渡すと、既にいくつかの学校が帰ったようで、まばらに席が空いていた。
その中で、彼の姿を探す。
………いた!
彼のずば抜けた身長は、遠くにいてもすぐに見つけられた。
声をかけようと一歩踏み出した、その時。
「牛島君、来てくれたんだ!嬉しい!」
明るく弾んだ声が、私の耳に届く。
視線の先では、白鳥沢のユニフォームを着た女子が、牛島君と話していた。
後ろ姿しか見えないけれど、あの声は宮田さんだ。
「もうすぐ決勝戦が始まるの。応援してね!」
宮田さんは浮足立つ様子だった。
「……ああ」
牛島君の簡潔な返事。
でも、その声はどこか穏やかだった。
ああ、そうだよね。
やっぱり私より、同じ学校の選手を応援するよね。
そんなことは最初から分かっていた。
なんなら、私が「自分の学校の応援を優先していいから」って伝えたのに。
それなのに、なんでこんなにも胸がモヤモヤするんだろう。
この場にいるのが急に辛くなって、私はそっと身を翻し、ウォーミングアップの場所へと向かった。
……。
…………。
決勝戦が始まった。
「「よろしくお願いします」」
ネット越しに握手をする手に、自然と力が入る。
見上げるほどの長身。
まるで私を見下しているような宮田さん。
こんな奴に負けたくない。
………試合に?
それとも、牛島君を独り占めしようとしている彼女に?
なんでこんな時に牛島君が頭に浮かぶんだろう。
私はただの知り合い。
友達と呼べるかどうかも分からない。
……ダメだ。
今は試合に集中しないと。
「ラブオールプレイ!」
審判の試合開始合図と共に、私はサーブを打った。
……。
…………。
負けた。
あんなに優勝すると豪語しておいて、負けてしまった。
片付けと表彰式を終え、顧問から「20分後にミーティングをするから、帰宅準備をしろ」と告げられた。
牛島君は帰っちゃったかな……。
そんなことを思いながら更衣室へ向かうと、体育館の出口付近に、まさしく今考えていた人が立っていた。
「牛島君……」
「お疲れ」
「ありがとう。格好悪いところを見せちゃったね」
下を向いて絞り出すようにそう言うと、彼は真っ直ぐな声で返してくれた。
「◯◯は格好良かったぞ」
その言葉に顔を上げると、真剣な眼差しと目が合った。
その瞳があまりにも真っ直ぐで、私の感情を全て見透かされているようで、堪えきれなくなる。
「うっ……」
溢れそうになる涙を必死に堪えていると、彼がそっと私の背中を擦ってくれた。
「汗かいてるから」
「気にしない」
私が気にする。
体育館に足を踏み入れると、エアーサロンパスの臭いが鼻をかすめた。
照明は煌々とコートを照らす。
私は予定通り勝ち残った。
タイムシフト通りに進む試合に、高鳴る心臓を抑えきれない。
このまま行けば、あと20分後には決勝戦が始まる。
相手は、先月の練習試合で私を打ち破った、白鳥沢の部長、宮田さんだ。
あの時とは違う、最高のコンディション。
今度こそは勝ってみせる。
観客席を見渡すと、既にいくつかの学校が帰ったようで、まばらに席が空いていた。
その中で、彼の姿を探す。
………いた!
彼のずば抜けた身長は、遠くにいてもすぐに見つけられた。
声をかけようと一歩踏み出した、その時。
「牛島君、来てくれたんだ!嬉しい!」
明るく弾んだ声が、私の耳に届く。
視線の先では、白鳥沢のユニフォームを着た女子が、牛島君と話していた。
後ろ姿しか見えないけれど、あの声は宮田さんだ。
「もうすぐ決勝戦が始まるの。応援してね!」
宮田さんは浮足立つ様子だった。
「……ああ」
牛島君の簡潔な返事。
でも、その声はどこか穏やかだった。
ああ、そうだよね。
やっぱり私より、同じ学校の選手を応援するよね。
そんなことは最初から分かっていた。
なんなら、私が「自分の学校の応援を優先していいから」って伝えたのに。
それなのに、なんでこんなにも胸がモヤモヤするんだろう。
この場にいるのが急に辛くなって、私はそっと身を翻し、ウォーミングアップの場所へと向かった。
……。
…………。
決勝戦が始まった。
「「よろしくお願いします」」
ネット越しに握手をする手に、自然と力が入る。
見上げるほどの長身。
まるで私を見下しているような宮田さん。
こんな奴に負けたくない。
………試合に?
それとも、牛島君を独り占めしようとしている彼女に?
なんでこんな時に牛島君が頭に浮かぶんだろう。
私はただの知り合い。
友達と呼べるかどうかも分からない。
……ダメだ。
今は試合に集中しないと。
「ラブオールプレイ!」
審判の試合開始合図と共に、私はサーブを打った。
……。
…………。
負けた。
あんなに優勝すると豪語しておいて、負けてしまった。
片付けと表彰式を終え、顧問から「20分後にミーティングをするから、帰宅準備をしろ」と告げられた。
牛島君は帰っちゃったかな……。
そんなことを思いながら更衣室へ向かうと、体育館の出口付近に、まさしく今考えていた人が立っていた。
「牛島君……」
「お疲れ」
「ありがとう。格好悪いところを見せちゃったね」
下を向いて絞り出すようにそう言うと、彼は真っ直ぐな声で返してくれた。
「◯◯は格好良かったぞ」
その言葉に顔を上げると、真剣な眼差しと目が合った。
その瞳があまりにも真っ直ぐで、私の感情を全て見透かされているようで、堪えきれなくなる。
「うっ……」
溢れそうになる涙を必死に堪えていると、彼がそっと私の背中を擦ってくれた。
「汗かいてるから」
「気にしない」
私が気にする。
