ーー牛島sideーー


痴漢騒動から一夜明け、通常の月曜日が始まった。
◯◯には何を送ればいいのか分からず、結局連絡できず終い。

朝練を終え教室に入ると、いつもは気にならない女子生徒の会話が耳に入ってきた。


「昨日の練習試合、拍子抜けだったね」

「◯◯さんだっけ？遅れてきた割には大したことなかったし」

「なんか相手校の人が言ってたんだけど、痴漢に遭遇したから遅れたらしいよ」

「えーどういう趣味してるんだろうね」


おそらく、いや確実に◯◯のことを話している。
どこで話が食い違ったのか、俺を助けてくれた◯◯が被害者扱いになっている。

訂正すべきかタイミングをうかがっていると、いつの間にか話題が反れていた。


「◯◯さんって全国出場経験者でしょ？信じられないよね」

「あのレベルで出れるなら、私が来月の大会出たら優勝余裕なんじゃない？」

「大会はいつだ」


タイミングなどと言っている余裕はなく、気が付いたら彼女たちの会話に混ざっていた。


「え、牛島君。応援に来てくれるの？」


何故か期待の眼差しを向けてくる彼女たち。
俺はただ、これ以上◯◯の悪口を聞きたくなかった。


「そう言うわけでは……。すまない、忘れてくれ」


逃げるように彼女たちから離れた。

俺は◯◯の試合を見たいのか？
モヤモヤしながらその日を過ごした。

今晩も◯◯への返事は出来なかった。