モーニングルーティン
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はじめこそ教室でひとり、静寂の中で早朝勉強をしていたけれど、季節が移り変わり、クラスメイトたちが次々と部活動を引退し始めた頃から、朝の教室は私だけの空間ではなくなっていった。
私が登校する時間には、すでに何人もの生徒が机に向かい、黙々と参考書と格闘している。
そんな周囲の焦りや変化の中でも、牛島君だけは、部活の引退後も変わらず毎朝のジョギングをストイックに続けていた。
この日も、私は彼と細やかな会話をするために、いつも通り早く家を出るつもりだった。
「……っ、やばい!」
飛び起きて時計を見た瞬間、血の気が引いた。
目覚まし時計のセットを誤り、いつも家を出る時間をとうに過ぎていたのだ。
今から全力で準備しても、いつもの時間には絶対に間に合わない。
「どうしよう……!」
パニックになりながらも急いで制服に着替え、鞄をひったくる。
走って家を飛び出しながら、頭の中は牛島君のことでいっぱいだった。
彼は遅れていく私を待っているはずがない。
そもそも、私が遅れることすら知らない。
そう思った瞬間、足の動きが鈍った。
「……そうだよね。もう、行っちゃったよね」
頑張って向かったところで、牛島君は走り去っているに決まっている。
通学路に差し掛かった時、私はすっかり息を切らしていた。
後ろからは、いつもの足音は聞こえてこない。
胸の奥が痛んだ。
自業自得なのに、涙が出そうになる。
やっぱり、私だけの片想いで、彼にとってはただの偶然の重なりだったんだ。
そう諦めて、トボトボと力なく校門をくぐろうとした、その時。
「……遅かったな」
不意に聞き馴染んだ低い声が降ってきた。
「え……?」
驚いて顔を上げると、そこには校門の隅で仁王立ちをしている牛島君がいた。
いつもならとっくに走りを終え、制服に着替えているはずの時間なのに、彼はまだトレーニングウェア姿のまま、何食わぬ顔でそこに立っている。
「牛島、君……。どうして、ここに……?」
牛島君は私の目を見ると、ホッとしたように小さく息を吐いた。
「◯◯が来なかったからだ。事故にでも遭ったのかと心配した」
彼は大真面目な顔で、とんでもなく破壊力のある言葉を口にした。
「待っててくれたの……?ランニングのメニュー、崩れちゃうのに……」
呆然とする私に、牛島君は少しきまり悪そうに視線を逸らした。
だけど、すぐにまたその真っ直ぐな瞳を私に向ける。
「メニューなら、◯◯を待つ間にこの周辺を往復して消化した。問題ない」
「え……?」
「それに……」
彼は一歩、私に近付くと、いつもの落ち着いた声で言った。
「朝、◯◯と話すことが、俺のルーティンになっていたようだ。これがないと、どうも1日が始まらない」
心臓が、今日1番の大きな音を立てている。
決して、寝坊してここまで走ってきたからでも、息が切れているからでもない。
「私も……っ!私も、牛島君に会えないと、1日が始まらないと思ってた!」
見上げながら想いの丈を一気に吐き出すと、牛島君はこれまでに見たこともないような、柔らかく愛おしそうな笑みを浮かべていた。
「そうか。では、明日も、明後日も声をかけよう」
「うん!」
校門をくぐっていく生徒たちが、不思議そうに私たちをチラチラと盗み見しながら通り過ぎていく。
そんなことも気にならないくらい、私は胸がいっぱいだった。
明日も、明後日も、そして、これからも。
私たちのモーニングルーティンは続いていく。
ーーFinーー
私が登校する時間には、すでに何人もの生徒が机に向かい、黙々と参考書と格闘している。
そんな周囲の焦りや変化の中でも、牛島君だけは、部活の引退後も変わらず毎朝のジョギングをストイックに続けていた。
この日も、私は彼と細やかな会話をするために、いつも通り早く家を出るつもりだった。
「……っ、やばい!」
飛び起きて時計を見た瞬間、血の気が引いた。
目覚まし時計のセットを誤り、いつも家を出る時間をとうに過ぎていたのだ。
今から全力で準備しても、いつもの時間には絶対に間に合わない。
「どうしよう……!」
パニックになりながらも急いで制服に着替え、鞄をひったくる。
走って家を飛び出しながら、頭の中は牛島君のことでいっぱいだった。
彼は遅れていく私を待っているはずがない。
そもそも、私が遅れることすら知らない。
そう思った瞬間、足の動きが鈍った。
「……そうだよね。もう、行っちゃったよね」
頑張って向かったところで、牛島君は走り去っているに決まっている。
通学路に差し掛かった時、私はすっかり息を切らしていた。
後ろからは、いつもの足音は聞こえてこない。
胸の奥が痛んだ。
自業自得なのに、涙が出そうになる。
やっぱり、私だけの片想いで、彼にとってはただの偶然の重なりだったんだ。
そう諦めて、トボトボと力なく校門をくぐろうとした、その時。
「……遅かったな」
不意に聞き馴染んだ低い声が降ってきた。
「え……?」
驚いて顔を上げると、そこには校門の隅で仁王立ちをしている牛島君がいた。
いつもならとっくに走りを終え、制服に着替えているはずの時間なのに、彼はまだトレーニングウェア姿のまま、何食わぬ顔でそこに立っている。
「牛島、君……。どうして、ここに……?」
牛島君は私の目を見ると、ホッとしたように小さく息を吐いた。
「◯◯が来なかったからだ。事故にでも遭ったのかと心配した」
彼は大真面目な顔で、とんでもなく破壊力のある言葉を口にした。
「待っててくれたの……?ランニングのメニュー、崩れちゃうのに……」
呆然とする私に、牛島君は少しきまり悪そうに視線を逸らした。
だけど、すぐにまたその真っ直ぐな瞳を私に向ける。
「メニューなら、◯◯を待つ間にこの周辺を往復して消化した。問題ない」
「え……?」
「それに……」
彼は一歩、私に近付くと、いつもの落ち着いた声で言った。
「朝、◯◯と話すことが、俺のルーティンになっていたようだ。これがないと、どうも1日が始まらない」
心臓が、今日1番の大きな音を立てている。
決して、寝坊してここまで走ってきたからでも、息が切れているからでもない。
「私も……っ!私も、牛島君に会えないと、1日が始まらないと思ってた!」
見上げながら想いの丈を一気に吐き出すと、牛島君はこれまでに見たこともないような、柔らかく愛おしそうな笑みを浮かべていた。
「そうか。では、明日も、明後日も声をかけよう」
「うん!」
校門をくぐっていく生徒たちが、不思議そうに私たちをチラチラと盗み見しながら通り過ぎていく。
そんなことも気にならないくらい、私は胸がいっぱいだった。
明日も、明後日も、そして、これからも。
私たちのモーニングルーティンは続いていく。
ーーFinーー
6/6ページ
