モーニングルーティン
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3日連続となる、薄暗い朝。
正真正銘、今日は早く登校する理由など何もない。
それでも私は、昨日、一昨日と同じ時間に家を出て、同じ通学路を歩いていた。
心臓が変なリズムを刻む。
もし、今日も牛島君に会えたら…。
「今日はどうしたんだ」なんて、あの真っ直ぐな瞳で聞かれたらどうしよう。
昨日、一昨日の言い訳はもう使えない。
……そうだ。
今年から受験生になったんだ。
早く学校に行って勉強しようと思ったことにしよう。
これなら自然のはずだ。
歩きながら、頭の中で何度もそのセリフを反芻する。
「うん、大丈夫……」
我ながら完璧な言い訳だと、小さく頷いた、その時だった。
タッ タッ タッ タッ
背後から聞こえてきたのは、もうすっかり耳に馴染んでしまった足音。
心臓がドクリと跳ねる。
本当に、昨日と同じタイミングだった。
私は歩調を緩め、道の端に寄りながら、振り返るような形で視線を上げた。
足音の持ち主は、予想通り牛島君だった。
彼は私の姿を捉えると、一昨日、昨日と全く同じように、スッと速度を落として並走する。
軽い足踏みをしながら、汗の浮かぶ額を拭いもせず、彼はじっと私を見つめた。
「おはよう」
「お、おはよう。牛島君」
低い声に答える私の声が、緊張で少し上擦る。
私は彼の「今日はどうしたんだ」と聞かれる質問を待ち構えた。
だけど、牛島君から返ってきたのは、予想とは少し違う言葉だった。
「……今日は、忘れ物でも、委員会の仕事でもなさそうだな」
「えっ?」
見透かされたような言葉に、思わず足が止まりそうになる。
彼は足を動かし続けたまま、大真面目な顔で言葉を続けた。
「昨日までは、急ぐように早足だった。だが、今日は落ち着いて見える」
まさか、私の歩く速度を観察されていたなんて。
あまりの名推理に頭が真っ白になり、準備していた言い訳が一瞬飛んでしまう。
「あ、ううん!その……えっと、今年から受験生、だから……。早く行って、勉強しようかなって……」
消え入るような声で絞り出す。
嘘ではないけれど、後ろめたい気持ちになり、顔が赤くなりそう。
そんな言い訳を、牛島君は真っ直ぐな瞳で受け止める。
そして、フッと彼の口元が緩んだように見えた。
それは、とても穏やかな表情だった。
「そうか。感心だな」
彼は大真面目にそう言うと、足踏みを止め、前を向いた。
「では、今日も頑張れよ」
「うん……!牛島君も頑張って」
「ああ」
彼は短く応じると、昨日までと同じように一気に加速した。
あっという間に小さくなっていく彼の背中。
私はその場に立ち尽くしていた。
言い訳をしてしまった恥ずかしさと、それ以上に、牛島君が私を見ていてくれたことへの喜びで胸がいっぱいになる。
ただの偶然から始まった、ほんの数十秒のモーニングルーティン。
明日も、明後日も、私はきっとこの時間に家を出るだろう。
正真正銘、今日は早く登校する理由など何もない。
それでも私は、昨日、一昨日と同じ時間に家を出て、同じ通学路を歩いていた。
心臓が変なリズムを刻む。
もし、今日も牛島君に会えたら…。
「今日はどうしたんだ」なんて、あの真っ直ぐな瞳で聞かれたらどうしよう。
昨日、一昨日の言い訳はもう使えない。
……そうだ。
今年から受験生になったんだ。
早く学校に行って勉強しようと思ったことにしよう。
これなら自然のはずだ。
歩きながら、頭の中で何度もそのセリフを反芻する。
「うん、大丈夫……」
我ながら完璧な言い訳だと、小さく頷いた、その時だった。
タッ タッ タッ タッ
背後から聞こえてきたのは、もうすっかり耳に馴染んでしまった足音。
心臓がドクリと跳ねる。
本当に、昨日と同じタイミングだった。
私は歩調を緩め、道の端に寄りながら、振り返るような形で視線を上げた。
足音の持ち主は、予想通り牛島君だった。
彼は私の姿を捉えると、一昨日、昨日と全く同じように、スッと速度を落として並走する。
軽い足踏みをしながら、汗の浮かぶ額を拭いもせず、彼はじっと私を見つめた。
「おはよう」
「お、おはよう。牛島君」
低い声に答える私の声が、緊張で少し上擦る。
私は彼の「今日はどうしたんだ」と聞かれる質問を待ち構えた。
だけど、牛島君から返ってきたのは、予想とは少し違う言葉だった。
「……今日は、忘れ物でも、委員会の仕事でもなさそうだな」
「えっ?」
見透かされたような言葉に、思わず足が止まりそうになる。
彼は足を動かし続けたまま、大真面目な顔で言葉を続けた。
「昨日までは、急ぐように早足だった。だが、今日は落ち着いて見える」
まさか、私の歩く速度を観察されていたなんて。
あまりの名推理に頭が真っ白になり、準備していた言い訳が一瞬飛んでしまう。
「あ、ううん!その……えっと、今年から受験生、だから……。早く行って、勉強しようかなって……」
消え入るような声で絞り出す。
嘘ではないけれど、後ろめたい気持ちになり、顔が赤くなりそう。
そんな言い訳を、牛島君は真っ直ぐな瞳で受け止める。
そして、フッと彼の口元が緩んだように見えた。
それは、とても穏やかな表情だった。
「そうか。感心だな」
彼は大真面目にそう言うと、足踏みを止め、前を向いた。
「では、今日も頑張れよ」
「うん……!牛島君も頑張って」
「ああ」
彼は短く応じると、昨日までと同じように一気に加速した。
あっという間に小さくなっていく彼の背中。
私はその場に立ち尽くしていた。
言い訳をしてしまった恥ずかしさと、それ以上に、牛島君が私を見ていてくれたことへの喜びで胸がいっぱいになる。
ただの偶然から始まった、ほんの数十秒のモーニングルーティン。
明日も、明後日も、私はきっとこの時間に家を出るだろう。
