いつもの私
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〜いつもの私〜
文化祭で喫茶店をやることになった私のクラス。
準備期間中、メニューや制服を考えるのもさながら、私たち女子は別のことで忙しくしていた。
賑わう教室の片隅で、私は鏡とにらめっこをしている。
その向かいで、友達のトウカが器用に私の顔に色を乗せていく。
いつもは地味な私なのに、目元にはきらめくラメ、頬にはふんわりと優しいピンクが彩られる。
「なんか、凄い……!」
思わずそう呟くと、トウカは満足げに笑った。
「でしょ?似合ってるよ、●●!」
他の友達も集まってきて、
「雰囲気変わったね!」
「最初、誰か分かんなかった!」
なんて言ってくれる。
みんなの反応が嬉しくて、心が弾んだ。
この気持ちを、どうしても彼に見てもらいたかった。
私の片思いの相手、牛島若利君。
彼はいつもクラスの中心にいて、遠くから見ているだけの存在だった。
でも、今日だけは違った。
変われたかもしれない自分を見てほしくて、私は勇気を出して彼の元へ向かった。
「牛島君!」
声をかけると、彼はいつものように鋭い目で私を見た。
「ん、なんだ、◯◯」
私は緊張しながらも、彼の前に立つ。
だけど、眉ひとつ動かさない彼の表情に、少し不安になった。
「えっと……どうかな?」
照れくさくて、つい前髪をいじってしまう。
すると、牛島君は少し考えてから言った。
「どうか、と聞かれても……。別に、いつもの◯◯だが」
その言葉に、胸に刺さるような痛みが走った。
別に期待していたワケじゃない。
でも、ほんの少しでも可愛いって思ってほしかった。
トウカやみんながあんなに言ってくれたのに、牛島君には何も響かなかったんだ。
「そっか……。ごめんね、なんでもない!」
そう言って、私はその場から逃げ出した。
向かった先は女子トイレ。
鏡に映る、普段とは違う自分。
その顔を消したくて、私は手にクレンジングを取り、化粧を洗い流した。
そして、再び鏡を目にしたときには、いつもの冴えない私が映っていた。
そう、これが本当の私なんだ。
……。
…………。
教室に戻ると、トウカが心配そうに駆け寄ってきた。
「どこ行ってたの?急に教室から飛び出すから……って、メイク落としちゃったの?」
残念そうな声に、私は嘘を吐いた。
「ごめんね、ちょっと私の肌に合わなくて……」
すると、トウカはすぐに明るい声で、
「他にも化粧品あるから試そうよ!」
と提案してくれた。
だけど、もういいの。
もう、誰かに可愛く見られたいなんて、思えない。
私はその場で、ただ苦笑いをするしかなかった。
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