負けは格好悪いですか
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~負けは格好悪いですか~
来月行われる大会に向けて、白鳥沢学園と練習試合をすることになった。
うちのような公立高校は体育館が1つしかなくて、今日は他の部活が使うために利用できない。
必然と練習場所は白鳥沢。
目的地に向かうために朝早くから電車に乗り込み、あくびを噛み殺しながらぼーっと窓の景色を眺める。
ちなみに、他のチームメイトとは路線が違うので下車駅の改札を出たところで落ち合う予定。
後、3駅か……。
扉の上に貼られている路線図を見ていると、いつの間にか次の停車駅に着いたようで、ゾロゾロと乗客してきた。
その中でもひときは目立つ長身男性。
だけど、その身長や体格に似つかず、学校制服を着ていた。
社会人かと思ったら、学生じゃん。
しかも今から向かう白鳥沢の制服。
窓の景色を見ているのもそろそろ飽きたから、あの男性を観察してみようかな。
彼は片手でつり革に掴まり、もう片方の手には鞄から取り出した単語帳を読み始めた。
あの単語帳、私が使っている単語帳と同じだ。
ってことは3年生か。
まあ、あの容姿で1年生って言われたら疑ってしまうから納得。
しばらく揺られていると目的の駅に到着した。
直ぐに降りられるように扉の近くへ移動しようとしたら、
「この人、痴漢です!」
女性が震えた声で痴漢と思わしき人の手を握って挙げた。
そう、私がさっきまで観察していた男性の手を。
車内は一気にザワつきだした。
「最低」
「そいつを取り押さえろ!」
男性は自分に言われていることだと理解していないのか、ただただ立ち尽くしていた。
私が助けないと。
停車駅で降ろされた男性と被害者の女性の後を急いで追って、私は声をあげた。
「その人、なにもしていません!私見ていました!」
私に注目が集まる。
「取り敢えず話を聞くから、一人ずつ駅長室へ」
駆けつけた駅長によって事情聴取が始まった。
きっと長くなるよね?
私は自分の番が回ってくる前に部活の顧問と副部長に連絡を入れることにした。
「────そういことなので、すみませんが遅れます。はい、失礼します」
これでよし、と。
電話を終えると、丁度順番が来た。
「失礼します」
「座ってください。さて、君は何を見たんだね?」
「彼は電車に乗ってからずっとつり革に掴まりながら本を読んでいたので、痴漢できなかったと思います」
「ほう」
「被害者の方に手を掴まれたのも、降りる駅に備えて本をしまって、その空いた手をたまたま掴まれただけで」
「なるほど、供述と同じだな……。分かりました。もう一度被害者と話をするので、もう少し待っていてください」
私が分かることは全て話をした。
後は待つだけだ。
───しばらくして、誤解が溶けたのか被害者が男性に謝って駅長室から出てきた。
冤罪を証明することができたようでよかった。
ホッとしていると、男性が私の元に来た。
「助かった。ありがとう」
「ううん」
「お礼がしたいから、良ければ連絡先を教えて貰えないか」
登録された電話帳には牛島若利の名が。
彼は白鳥沢学園3年生。
普段は寮生だけど、たまたま実家に帰っており、今日はその帰りだったそうだ。
連絡先を交換した後、同じ目的地のため一緒に白鳥沢へ行くことになった。
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