バカはバカなりに
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「●●!あの返事、納得ができねェ」
「はあ?」
翌朝、始業前の教室に、クラスの違う影山が乗り込んできた。
クラスメイトたちの視線が集まるのも構わず、彼は私の机の前で仁王立ちになる。
「朝から何なのよ」
「俺もお前の本心が分からねェ」
大方、バレー部の頭の切れる先輩にでも意味を聞いてきたのだろう。
「じゃあ、お互い様ってことで。はい、この話は終わり。教室から出ていって」
「おい、待てよ!●●!」
食い下がる彼の大きな背中を、私は無理やり両手で押して、廊下へと追い出した。
ーーーー
その日の放課後。
教室を出ると、壁に背を預けた影山が私を待ち伏せしていた。
「……部活は?」
「遅れるって連絡してある」
呆れた。
バレーバカのクセに、私なんかを優先して。
影山は視線を落とし、絞り出すように過去の話を始めた。
「あのときの俺はバカだったから……」
「今もバカでしょ」
「う゛っ!……罰ゲームの意味が分からなかった」
意味が分からない、の意味が分からない。
他にどんな解釈があるというのか。
「好きなヤツに告白するチャンスを、周りが作ってくれたんだと……勘違いしてた」
影山の言葉に、心臓が跳ねた。
あの日の、すんなりとした「分かった」という返事。
それは冷酷な快諾ではなく、彼なりの純粋な喜びだったというのか。
つまり、本当に私のことが好きで告白してきたの?
「なのに、返事を聞く前にアイツらが残念だとか嘘だとかでしゃばってくるし、●●は俺のこと名前で呼ばなくなるし。俺だって●●が何を考えているのか分からねェ」
「……聞いちゃったの」
「え?」
私は、あの日廊下で聞いてしまった男子たちの会話を打ち明けた。
「あんなの聞かされたら、嘘だと思うでしょ」
影山は絶句し、やがて顔を真っ赤にして項垂れた。
「悪 い」
「本当にアンタはバカなんだから。中学のときは周りに流されて告白するし、次は夏目漱石の受け売り?告白くらい人の言葉を借りずに、自分の言葉で言いなさいよ」
私の言葉に、影山がハッと顔を上げた。
彼はその場で姿勢を正し、逃げ場のないほど真っ直ぐに私の目を見据えた。
「何度も勘違いさせて、遠回りさせて悪かった。……俺は今も昔も、●●のことが好きだ。俺と付き合ってください」
夕暮れの廊下、影山の声が響いた。
誰かの言葉じゃない、無骨で、飾り気のない、彼自身の言葉。
「……はい」
ようやく言えた。
2年越しに、あのときの返事を。
私たちは影山の三度目の告白によって、お付き合いすることができた。
「あのさ……また、名前で呼んでくれないか」
照れくさそうに、けれど切実な目をして彼は言う。
私は一番呼びたかった名前を呼んだ。
「飛雄!」
飛雄は一瞬驚いたように目を見開き、それから満足そうな顔で、ニカッと笑った。
ーーFinーー
「はあ?」
翌朝、始業前の教室に、クラスの違う影山が乗り込んできた。
クラスメイトたちの視線が集まるのも構わず、彼は私の机の前で仁王立ちになる。
「朝から何なのよ」
「俺もお前の本心が分からねェ」
大方、バレー部の頭の切れる先輩にでも意味を聞いてきたのだろう。
「じゃあ、お互い様ってことで。はい、この話は終わり。教室から出ていって」
「おい、待てよ!●●!」
食い下がる彼の大きな背中を、私は無理やり両手で押して、廊下へと追い出した。
ーーーー
その日の放課後。
教室を出ると、壁に背を預けた影山が私を待ち伏せしていた。
「……部活は?」
「遅れるって連絡してある」
呆れた。
バレーバカのクセに、私なんかを優先して。
影山は視線を落とし、絞り出すように過去の話を始めた。
「あのときの俺はバカだったから……」
「今もバカでしょ」
「う゛っ!……罰ゲームの意味が分からなかった」
意味が分からない、の意味が分からない。
他にどんな解釈があるというのか。
「好きなヤツに告白するチャンスを、周りが作ってくれたんだと……勘違いしてた」
影山の言葉に、心臓が跳ねた。
あの日の、すんなりとした「分かった」という返事。
それは冷酷な快諾ではなく、彼なりの純粋な喜びだったというのか。
つまり、本当に私のことが好きで告白してきたの?
「なのに、返事を聞く前にアイツらが残念だとか嘘だとかでしゃばってくるし、●●は俺のこと名前で呼ばなくなるし。俺だって●●が何を考えているのか分からねェ」
「……聞いちゃったの」
「え?」
私は、あの日廊下で聞いてしまった男子たちの会話を打ち明けた。
「あんなの聞かされたら、嘘だと思うでしょ」
影山は絶句し、やがて顔を真っ赤にして項垂れた。
「
「本当にアンタはバカなんだから。中学のときは周りに流されて告白するし、次は夏目漱石の受け売り?告白くらい人の言葉を借りずに、自分の言葉で言いなさいよ」
私の言葉に、影山がハッと顔を上げた。
彼はその場で姿勢を正し、逃げ場のないほど真っ直ぐに私の目を見据えた。
「何度も勘違いさせて、遠回りさせて悪かった。……俺は今も昔も、●●のことが好きだ。俺と付き合ってください」
夕暮れの廊下、影山の声が響いた。
誰かの言葉じゃない、無骨で、飾り気のない、彼自身の言葉。
「……はい」
ようやく言えた。
2年越しに、あのときの返事を。
私たちは影山の三度目の告白によって、お付き合いすることができた。
「あのさ……また、名前で呼んでくれないか」
照れくさそうに、けれど切実な目をして彼は言う。
私は一番呼びたかった名前を呼んだ。
「飛雄!」
飛雄は一瞬驚いたように目を見開き、それから満足そうな顔で、ニカッと笑った。
ーーFinーー
