元気の源
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向かった先とは、お世辞にも綺麗とは言えない町中華屋さんだった。
壁は剥げているし、床だってベタついている。
正直あんな現場を見てしまったせいで食欲がない。
かと言って入店しておいて何も食べないのはお店に悪い。
だから軽めな物だけにしよう。
杏仁豆腐があるか確認するためにメニュー表に手を伸ばすと、
「大将、ラーメンと餃子を2人前、後チャーハン」
勝手に私の分まで注文をしだした飛雄君。
「待って、私そんなに!」
だけど、私の静止も虚しく注文は通ってしまった。
「ここの飯、どれも旨いから」
「はぁ〜」
そこまで言うなら……。
諦めて受け入れることにした。
配膳された水を飲みながら料理を待っている間に、他愛のない雑談をした。
「ここ、よく来るの?」
「たまに。部活帰りとか、大会が終わってからとか。あと姉ちゃんとも」
「へぇ〜。部活は何をやってるの?」
「バレーっす」
「ああ、それっぽいね」
美羽と一緒だ。
マジマジと飛雄君の顔を見ると、本当に若い頃の美羽にそっくりだと思った。
以前、髪を切るかどうか悩んでいた美羽。
あのときに切っていたら、飛雄君みたいになっていたのかな。
「今日は休み?」
「はい、自主練で走ろうとしたところ姉ちゃんに呼び出されて」
自主練を中断させてしまって、悪いことをしたな。
ほどなくして、料理が運ばれてきた。
「頂きます」
熱々のラーメンに息をかけて、冷ましてから口へ運ぶ。
「んっ!美味しい!」
「餃子も旨いっすよ」
「どれどれ」
餃子自体のサイズは小ぶりだけれど、パリパリの羽根がついていて、大きく見える。
それを1つ箸で摘んで食べる。
「本当だ!ニンニクが効いてるね!」
さっきまでの食欲がないと思っていたのが、嘘のように胃に入っていく。
「やっと笑顔になった」
「えっ……」
「カフェで会ったときから元気なかったから」
「そっか……。2回しか会ったことないのに、私のことをよく見ているんだね」
そう言うと、飛雄君は少し悩んだ素振りをしてから口を開いた。
「●●さんは俺のことあまり知らないと思いますけど、俺は●●さんのことをずっと前から知っていました」
「んんっ!?」
危うく啜っていたラーメンを喉に詰まらせるところだった。
前から知っているってどう言うこと?
「姉ちゃんから●●さんの話をよく聞かされていたので」
「美羽ったら……」
一体どんなことを話しているのよ。
変なことを話していないでしょうね。
また今度問い詰めようかしら。
「昔、俺が悩んでいた時、姉ちゃんが飯に連れて行ってくれたことがあって……」
飛雄君は箸を置いて昔話を始めた。
「旨い物は人を元気にさせるって励ましてくれたんです。それが●●さん、アナタが姉ちゃんを励ました時と同じ励まし方だって、聞きました」
「同じ……」
「はい。だから、もし●●さんと会う機会があって、そのときにアナタが落ち込んでいたら同じことをしようと決めていました」
そう言えば、美羽が高校でバレーを続けるかどうか悩んでいたときにご飯をご馳走したことがある。
だけど、それはもう10年近く前のこと。
美化しすぎて記憶に齟齬があるかもしれない。
「買いかぶり過ぎだよ」
仮に飛雄君の話が本当だとしても、当時の私はそこまで深く考えていない。
「それでも、俺にとって●●さんは人を元気にさせる連鎖の源だと思っているんで」
「……」
そんなこと言われても困るよ。
さっきまで平気で啜っていたラーメンが、急に恥ずかしくなって喉を通らない。
彼氏の浮気現場を見たところなのに、私の傷付いた心は飛雄君色に染まりつつあった。
ーーFinーー
壁は剥げているし、床だってベタついている。
正直あんな現場を見てしまったせいで食欲がない。
かと言って入店しておいて何も食べないのはお店に悪い。
だから軽めな物だけにしよう。
杏仁豆腐があるか確認するためにメニュー表に手を伸ばすと、
「大将、ラーメンと餃子を2人前、後チャーハン」
勝手に私の分まで注文をしだした飛雄君。
「待って、私そんなに!」
だけど、私の静止も虚しく注文は通ってしまった。
「ここの飯、どれも旨いから」
「はぁ〜」
そこまで言うなら……。
諦めて受け入れることにした。
配膳された水を飲みながら料理を待っている間に、他愛のない雑談をした。
「ここ、よく来るの?」
「たまに。部活帰りとか、大会が終わってからとか。あと姉ちゃんとも」
「へぇ〜。部活は何をやってるの?」
「バレーっす」
「ああ、それっぽいね」
美羽と一緒だ。
マジマジと飛雄君の顔を見ると、本当に若い頃の美羽にそっくりだと思った。
以前、髪を切るかどうか悩んでいた美羽。
あのときに切っていたら、飛雄君みたいになっていたのかな。
「今日は休み?」
「はい、自主練で走ろうとしたところ姉ちゃんに呼び出されて」
自主練を中断させてしまって、悪いことをしたな。
ほどなくして、料理が運ばれてきた。
「頂きます」
熱々のラーメンに息をかけて、冷ましてから口へ運ぶ。
「んっ!美味しい!」
「餃子も旨いっすよ」
「どれどれ」
餃子自体のサイズは小ぶりだけれど、パリパリの羽根がついていて、大きく見える。
それを1つ箸で摘んで食べる。
「本当だ!ニンニクが効いてるね!」
さっきまでの食欲がないと思っていたのが、嘘のように胃に入っていく。
「やっと笑顔になった」
「えっ……」
「カフェで会ったときから元気なかったから」
「そっか……。2回しか会ったことないのに、私のことをよく見ているんだね」
そう言うと、飛雄君は少し悩んだ素振りをしてから口を開いた。
「●●さんは俺のことあまり知らないと思いますけど、俺は●●さんのことをずっと前から知っていました」
「んんっ!?」
危うく啜っていたラーメンを喉に詰まらせるところだった。
前から知っているってどう言うこと?
「姉ちゃんから●●さんの話をよく聞かされていたので」
「美羽ったら……」
一体どんなことを話しているのよ。
変なことを話していないでしょうね。
また今度問い詰めようかしら。
「昔、俺が悩んでいた時、姉ちゃんが飯に連れて行ってくれたことがあって……」
飛雄君は箸を置いて昔話を始めた。
「旨い物は人を元気にさせるって励ましてくれたんです。それが●●さん、アナタが姉ちゃんを励ました時と同じ励まし方だって、聞きました」
「同じ……」
「はい。だから、もし●●さんと会う機会があって、そのときにアナタが落ち込んでいたら同じことをしようと決めていました」
そう言えば、美羽が高校でバレーを続けるかどうか悩んでいたときにご飯をご馳走したことがある。
だけど、それはもう10年近く前のこと。
美化しすぎて記憶に齟齬があるかもしれない。
「買いかぶり過ぎだよ」
仮に飛雄君の話が本当だとしても、当時の私はそこまで深く考えていない。
「それでも、俺にとって●●さんは人を元気にさせる連鎖の源だと思っているんで」
「……」
そんなこと言われても困るよ。
さっきまで平気で啜っていたラーメンが、急に恥ずかしくなって喉を通らない。
彼氏の浮気現場を見たところなのに、私の傷付いた心は飛雄君色に染まりつつあった。
ーーFinーー