君に嫌われたい
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~君に嫌われたい~
「明日、弟のバレーの大会なんだけど、●●も一緒に行かない?」
お昼休み。
お弁当を食べていると、友達のアカリが唐突に誘ってきた。
せっかくの土曜日、溜まっているドラマを消化するつもりだったのに。
「弟いくつ?」
「中1」
5つ下か。
バレーのルールは詳しくないけど、部屋で引きこもるより、
「若者のフレッシュなエネルギーでも浴びに行こうかな」
そんなことを言ったらアカリから、
「私たちだってまだ華の高校2年生でしょ」
と言われてしまった。
ーーーー
そして迎えた大会の日。
「ほらほら、あれ!」
観客席からアカリが指差す方を見ると、スタメンなのか、コートに入っていた弟君。
どうやら小学生の頃からバレー教室に通っており、1年生にしてレギュラーらしい。
「おーよく跳ぶね」
「でしょ!」
自慢の弟なのか、応援するアカリはとても楽しそうだった。
そして、アカリの弟のチームは順調に準決勝まで勝ち上がった。
「試合始まる前に差し入れしてくる!」
アカリはあらかじめ用意していた人数分の飲み物を持って、選手控え席に向かった。
それなら私はその間少しだけ体育館を探索しようかな。
フラフラ歩いていると、2階の応援席と1階の体育館を繋ぐ階段にユニフォームを着た少年が一人座っていた。
なんとなく、その少年の隣に座る。
真っ直ぐで綺麗な前髪の少年。
「何してるの、暇なの?」
少年は最初こそ驚いていたが、よっぽど退屈だったのだろう。
初対面の私に話し始めた。
「俺のチーム、もう負けちゃったから。でも、閉会式が終わるまで帰れない」
早く帰って練習したい、と言うよりここにいてもやることがないし退屈だから帰りたい、そんなニュアンスだった。
少年のユニフォームに書かれている学校名に見覚えはなかったが、大方初戦あたりで敗退したのであろう。
確かに早々に負けて、半日以上やることのない体育館に拘束されていたら退屈だよね。
「それなら、次は勝ち続ければいい」
「……」
口でいうのは簡単だ。ただの理想論。
でも、それができないから悔しいし苦しい。時には諦めたくもなる。
少年はどっちに転ぶだろうか。
「ありがとうございます!頑張ります!」
どうやらいらない心配だったようだ。
吹っ切れたような顔をした少年は立ち上がり、ペコリとお辞儀をして去っていった。
私にも年の離れた弟がいたらこんな感じだったのかな。
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