隣にいるための理由
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~隣にいるための理由~
「今日からお世話になります、◯◯●●です!製菓学校を卒業したばかりで、まだまだ未熟なのでご教授ご鞭撻のほどを、よろしくお願いします!」
今日からここが私の職場。
オーナー佐藤さんのお店、パティスリーシュクレ。
「じゃあ◯◯さんは………天童。お前が色々教えてやれ」
「は~い」
天童さんと呼ばれた人は背が高く飄々とした雰囲気に、頭は丸坊主で涼しそうな男性だった。
「よ、よろしくお願いします!」
「まあまあ、そんなに緊張しないで~」
緊張をほぐそうとしてくれているのか、天童さんは気さくに話しかけてくれたけど、初日に打ち解けるメンタルは残念ながら持ち合わせていない。
まずは製造ではなく、接客の仕事から覚えるとのことで、私たちは売場へと移動した。
「今日は僕とオープンの準備を一緒にやるけど、明日から一人で出来るようにね」
そう言って天童さんはオープンの流れを説明しだした。
店内と駐車場、トイレの掃除、品出し、備品補充などなど。
メモが追い付かない。
「ショーケースは最低でも朝昼晩拭くけど、お子ちゃま連れのお客様が来るとベタベタにされるから、そのつど拭いてネ」
「はい!」
「それと、お客様が来ない空き時間に商品の名前と特徴、値段を覚えてネ。今日の終わりにテストするから」
「は、はい!」
ざっと30種類もあるケーキ、覚えられるだろうか。
不安しかない。
てきぱきと準備する天童さんの後に続き、なんとか開店前に準備を終えることが出来た。
これを明日から一人で……。
接客のやり方も天童さんが教えてくれるのだろうか。
そう思っていたら、接客スタッフさんらしき人がおはようこざいます、と挨拶をして入ってきた。
「バイトの山田です。よろしくお願いします」
「あ、今日から入社しました◯◯です。よろしくお願いします」
高校生らしい見た目なのに、私よりしっかりしているように見えた。
「じゃあ山田さん、◯◯さんに接客の流れを教えてあげてネ」
そう言って天童さんは製造の仕事へと戻っていった。
なんだ、天童さんが教えてくれる訳じゃないのか。
残念…………ざんねん?
私は天童さんを見送った後、気合いを入れ直して自分より若い山田さんに接客の流れを教えてもらった。
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