ドアベル、今日のご機嫌は
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とある日の昼下がり。
ティータイムのピークが落ち着き、店内に落ち着きが戻ってきた頃、カランコロンとドアベルが軽快に鳴った。
「いらっしゃいませ!」
笑顔で出迎えた私は、思わず目を見張った。
ドアの枠にぶつかりそうなほど長身な男性2人が、揃って入店してきたからだ。
1人は、がっしりとした鍛え上げられた体格に、どこか厳格そうな顔立ち。
もう1人は、特徴的なぱっつん前髪をした青年だった。
「わあ、本当に天童さんの店だ!牛島さんも早く入ってください!」
「ああ。五色、そう急かすな」
2人の会話を聞いた瞬間、私の頭の中で過去に覚君から見せてもらった写真の記憶が蘇った。
彼らは覚君の高校時代の部活のチームメイトだ。
名前は確か、牛島若利さんと五色工さん。
覚君に知らせようと厨房の扉へ振り返ると、わずかに隙間が空いていることに気が付いた。
次の瞬間、扉が勢いよく開いた。
「懐かしい声がしたと思えば……。若利君に工じゃん!いらっしゃい!」
覚君が顔を出すと、五色さんはパッと目を輝かせた。
「天童さん、ご無沙汰してます!本当にパティシエになったんですね!格好良いです!」
「ふふん、でしょ?正確にはショコラティエだけど……。それにしても、2人して今日はどうしたの〜?」
「天童が店を出したと五色から聞いたからな。お邪魔させてもらった」
牛島さんの言葉に、覚君は嬉しそうに目を細める。
「へぇ〜、そっかそっか。……あ、そうだ!立ち話もなんだし、食べてってヨ!」
2人は店内奥の小さなイートインスペースのテーブル席へ案内されると、覚君のオススメのケーキセットを注文してくれた。
しばらくして、私はチョコレートケーキと、ホットコーヒーをトレーに乗せて2人の元へと運ぶ。
「お待たせいたしました。こちら、当店オススメのチョコレートケーキとコーヒーでございます」
テーブルの上にセットを並べると、2人の反応は対照的だった。
目を輝かせる五色さんと、全く表情を変えない牛島さん。
ガタイのいい男性が可愛らしいケーキを前にする姿が、少しだけ微笑ましくなる。
一口食べた牛島さんは、ゆっくりと噛み締め、低く呟いた。
「美味いな」
「やったね!若利君のお墨付きいただきました〜!」
五色さんも夢中でフォークを動かしていた。
……。
…………。
ケーキとコーヒーを綺麗に平らげ、2人がお会計のためにレジへと向かってくる。
「ご馳走さま」
牛島さんは財布からお札を出しながら、温かい眼差しで覚君を見つめた。
「天童の作った菓子には、周りを笑顔にさせる力がある」
真っ直ぐで、一切の飾りのないその言葉。
いつもはおちゃらけて軽口ばかり叩いている覚君が、一瞬だけ言葉を詰まらせ、それから照れくさそうに肩をすくめてみせた。
「……もう、若利君ったら嬉しいこと言ってくれちゃって!おだてたって何も出ないからネ」
覚君は、口ではそう言いながらも、本当に幸せそうな顔をしていた。
「また来る」
「次は他のケーキも全部食べますからね!頑張ってください、天童さん!」
「はいはい、工もありがとネー!またいつでもおいで〜!」
2人を見送ると、ドアベルがカランコロンと鳴った。
その響きは、まるで祭りのあとの寂しさの余韻を残すようだった。
外へと出ていく大きな背中をしばらく見送る覚君の横顔。
それを見つめながら、私は胸がキュッと締め付けられた。
高校を卒業し、それぞれが全く違う道へと歩み出した今でも、決して変わることのない彼らの関係性が尊かったからだ。
「帰っちゃったネ……」
覚君は小さく息を吐くと、どこか吹っ切れたような、清々しい笑顔で私を振り返る。
「よしっ!それじゃあ●●ちゃん、仕事に戻ろうか!」
その表情には、先ほどまで思い出に漂っていた影はどこにもなかった。
ティータイムのピークが落ち着き、店内に落ち着きが戻ってきた頃、カランコロンとドアベルが軽快に鳴った。
「いらっしゃいませ!」
笑顔で出迎えた私は、思わず目を見張った。
ドアの枠にぶつかりそうなほど長身な男性2人が、揃って入店してきたからだ。
1人は、がっしりとした鍛え上げられた体格に、どこか厳格そうな顔立ち。
もう1人は、特徴的なぱっつん前髪をした青年だった。
「わあ、本当に天童さんの店だ!牛島さんも早く入ってください!」
「ああ。五色、そう急かすな」
2人の会話を聞いた瞬間、私の頭の中で過去に覚君から見せてもらった写真の記憶が蘇った。
彼らは覚君の高校時代の部活のチームメイトだ。
名前は確か、牛島若利さんと五色工さん。
覚君に知らせようと厨房の扉へ振り返ると、わずかに隙間が空いていることに気が付いた。
次の瞬間、扉が勢いよく開いた。
「懐かしい声がしたと思えば……。若利君に工じゃん!いらっしゃい!」
覚君が顔を出すと、五色さんはパッと目を輝かせた。
「天童さん、ご無沙汰してます!本当にパティシエになったんですね!格好良いです!」
「ふふん、でしょ?正確にはショコラティエだけど……。それにしても、2人して今日はどうしたの〜?」
「天童が店を出したと五色から聞いたからな。お邪魔させてもらった」
牛島さんの言葉に、覚君は嬉しそうに目を細める。
「へぇ〜、そっかそっか。……あ、そうだ!立ち話もなんだし、食べてってヨ!」
2人は店内奥の小さなイートインスペースのテーブル席へ案内されると、覚君のオススメのケーキセットを注文してくれた。
しばらくして、私はチョコレートケーキと、ホットコーヒーをトレーに乗せて2人の元へと運ぶ。
「お待たせいたしました。こちら、当店オススメのチョコレートケーキとコーヒーでございます」
テーブルの上にセットを並べると、2人の反応は対照的だった。
目を輝かせる五色さんと、全く表情を変えない牛島さん。
ガタイのいい男性が可愛らしいケーキを前にする姿が、少しだけ微笑ましくなる。
一口食べた牛島さんは、ゆっくりと噛み締め、低く呟いた。
「美味いな」
「やったね!若利君のお墨付きいただきました〜!」
五色さんも夢中でフォークを動かしていた。
……。
…………。
ケーキとコーヒーを綺麗に平らげ、2人がお会計のためにレジへと向かってくる。
「ご馳走さま」
牛島さんは財布からお札を出しながら、温かい眼差しで覚君を見つめた。
「天童の作った菓子には、周りを笑顔にさせる力がある」
真っ直ぐで、一切の飾りのないその言葉。
いつもはおちゃらけて軽口ばかり叩いている覚君が、一瞬だけ言葉を詰まらせ、それから照れくさそうに肩をすくめてみせた。
「……もう、若利君ったら嬉しいこと言ってくれちゃって!おだてたって何も出ないからネ」
覚君は、口ではそう言いながらも、本当に幸せそうな顔をしていた。
「また来る」
「次は他のケーキも全部食べますからね!頑張ってください、天童さん!」
「はいはい、工もありがとネー!またいつでもおいで〜!」
2人を見送ると、ドアベルがカランコロンと鳴った。
その響きは、まるで祭りのあとの寂しさの余韻を残すようだった。
外へと出ていく大きな背中をしばらく見送る覚君の横顔。
それを見つめながら、私は胸がキュッと締め付けられた。
高校を卒業し、それぞれが全く違う道へと歩み出した今でも、決して変わることのない彼らの関係性が尊かったからだ。
「帰っちゃったネ……」
覚君は小さく息を吐くと、どこか吹っ切れたような、清々しい笑顔で私を振り返る。
「よしっ!それじゃあ●●ちゃん、仕事に戻ろうか!」
その表情には、先ほどまで思い出に漂っていた影はどこにもなかった。
