天童君は私にだけ冷たい
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あの体育倉庫の事件を境に、天童君は私に冷たい態度を取らなくなった。
決して優しくなったワケではない。
だけど、あれほど執拗だった嫌味や押し付けがぱたりと止んだのだ。
それだけでも、今までのことを考えると、幾分平和な日常を送れている。
良いことは重なるもので、小学校時代の友人から、数年ぶりの集まりに誘われた。
卒業以来、一度も会えていなかった彼女たちとの再会。
およそ6年ぶり。
私は跳ねるような心持ちで、約束の場所へと向かった。
ーーーー
「みんな久しぶりー!」
「変わってないね」
「●●も元気そうで良かったよ!」
集まったのは、地元の小さなカラオケルーム。
安っぽい芳香剤の匂いと、壁から漏れてくる隣の部屋の歌声。
だけど、久しぶりに再会した友人と一緒なら、そこはどんな高級ホテルのラウンジよりも輝かしい場所に思えた。
私たちはマイクを握ることも忘れ、6年という空白を埋めるように夢中で言葉を交わした。
「それでは、ここでとっておきの物を見せまーす!」
「なになに、気になる!」
1人の友人が鞄から取り出した1冊の本。
「じゃじゃーん!卒業アルバム!」
「うわ、懐かしい!」
「私、どっかいっちゃったよ」
同級生が口々に言う中、私はその存在を初めて見た。
「卒業アルバム……、本当にあったんだ」
私の小学校の卒業アルバムは、精神的に追い詰められていた私のために、両親によって隠されてしまった。
今まで一度も見ることも、手にすることもなかった代物。
それが今、目の前にある。
友人がパラパラとページを捲るたび、幼い日の行事や、今はもう名前も思い出せない先生たちの顔が通り過ぎていく。
「私って、何組だったっけ?」
「えーっと、●●はね……。あ、ここ!ほら、写ってるよ!」
差し出されたページを覗き込む。
そこには、今よりも少し幼く、屈託のない笑顔を浮かべる自分の姿があった。
「あはは、このときの私、まだ子供だなー」
そして、その周囲に並ぶクラスメイトの顔を順に追っていったとき。
指先が、凍りついたように止まった。
「あれ、この子……」
おかっぱ頭で、目が大きくて……。
周りの子供たちとは明らかに違う、雰囲気を纏っていた。
「どれどれ……。あー、天童君ね。●●、やたら彼のことを気に掛けていたよね」
「え……本当?覚えてないな……」
私は乾いた声でそう答えた。
だけど、それは嘘だ。
その写真を見た瞬間、全ての記憶が脳内に流れ込んできた。
私が助けたかったクラスメイト。
掃除用具入れに押し込まれるきっかけを作った子。
白鳥沢高校3年生、私に冷たい態度を取っていた彼。
「……天童、君」
カラオケルームのモニターに映る華やかな映像が、今にも泣きそうな私の顔を照らしていた。
決して優しくなったワケではない。
だけど、あれほど執拗だった嫌味や押し付けがぱたりと止んだのだ。
それだけでも、今までのことを考えると、幾分平和な日常を送れている。
良いことは重なるもので、小学校時代の友人から、数年ぶりの集まりに誘われた。
卒業以来、一度も会えていなかった彼女たちとの再会。
およそ6年ぶり。
私は跳ねるような心持ちで、約束の場所へと向かった。
ーーーー
「みんな久しぶりー!」
「変わってないね」
「●●も元気そうで良かったよ!」
集まったのは、地元の小さなカラオケルーム。
安っぽい芳香剤の匂いと、壁から漏れてくる隣の部屋の歌声。
だけど、久しぶりに再会した友人と一緒なら、そこはどんな高級ホテルのラウンジよりも輝かしい場所に思えた。
私たちはマイクを握ることも忘れ、6年という空白を埋めるように夢中で言葉を交わした。
「それでは、ここでとっておきの物を見せまーす!」
「なになに、気になる!」
1人の友人が鞄から取り出した1冊の本。
「じゃじゃーん!卒業アルバム!」
「うわ、懐かしい!」
「私、どっかいっちゃったよ」
同級生が口々に言う中、私はその存在を初めて見た。
「卒業アルバム……、本当にあったんだ」
私の小学校の卒業アルバムは、精神的に追い詰められていた私のために、両親によって隠されてしまった。
今まで一度も見ることも、手にすることもなかった代物。
それが今、目の前にある。
友人がパラパラとページを捲るたび、幼い日の行事や、今はもう名前も思い出せない先生たちの顔が通り過ぎていく。
「私って、何組だったっけ?」
「えーっと、●●はね……。あ、ここ!ほら、写ってるよ!」
差し出されたページを覗き込む。
そこには、今よりも少し幼く、屈託のない笑顔を浮かべる自分の姿があった。
「あはは、このときの私、まだ子供だなー」
そして、その周囲に並ぶクラスメイトの顔を順に追っていったとき。
指先が、凍りついたように止まった。
「あれ、この子……」
おかっぱ頭で、目が大きくて……。
周りの子供たちとは明らかに違う、雰囲気を纏っていた。
「どれどれ……。あー、天童君ね。●●、やたら彼のことを気に掛けていたよね」
「え……本当?覚えてないな……」
私は乾いた声でそう答えた。
だけど、それは嘘だ。
その写真を見た瞬間、全ての記憶が脳内に流れ込んできた。
私が助けたかったクラスメイト。
掃除用具入れに押し込まれるきっかけを作った子。
白鳥沢高校3年生、私に冷たい態度を取っていた彼。
「……天童、君」
カラオケルームのモニターに映る華やかな映像が、今にも泣きそうな私の顔を照らしていた。
