天童君は私にだけ冷たい
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〜天童君は私にだけ冷たい〜
私には小学6年生の終わりがけの記憶がない。
お医者さん曰く、精神的ストレスからだろう、と。
そのため、学校を休まざるを得なかった。
幸いにもあと数週間で卒業だったため、勉強面では問題ない。
卒業式に出られなかったのだけは心残りだけど。
友人関係も同じ中学に進学した友達の記憶はあったし、私生活に支障は出なかった。
高校だって外部受験で白鳥沢に受かるほどには順風満帆の生活を送っていた。
そんな高校生活で仲良くなった友達と食堂でお昼ご飯を食べているときのこと。
「天童君って本当に気さくで面白くて、誰にでも態度を変えないよね」
「分かるー!あの牛島君にもいつもの調子で話しているし」
「ははは」
話題は男子バレー部のひょうきん者、天童覚君のことで盛り上がっていた。
ただし私を除いて。
「あれ、●●って天童君のこと苦手なんだっけ?」
「うん、ちょっとね。天童君って私にだけ冷たくない?」
「そう言われてみると……」
「好きだから意地悪している、みたいなやつじゃない?」
「それならいいんだけどね」
だけど、どう見てもそんなレベルではない。
私、知らない間に天童君に何かしちゃったのかな。
理由が分からないから、解決のしようがない。
そのため極力関わりたくはないけれど、残念ながら同じクラスのため、必然と関わらないといけないときはやってくる。
それは担任が決めた班でグループワークを行うとき。
不運なことに天童君と同じ班になった。
「応用問題を書き出すから、相談して解け」
生徒の自主性や協調性を育てる目的のグループワーク。
一見数学の授業ではグループワークの必要性を感じられないのかもしれないけれど、偏差値が高い白鳥沢の応用問題は普通に授業を受けているだけでは解けない。
そこでグループワークが生きてくる。
4人1班。机を向かい合わせにして話し合いを始めた。
「俺はここの部分が─────だと思うんだよネ。サナちゃんはどう思う?」
「私は────を先に求めてから───」
意見が飛び交う中、私も発言せねばと口を開いた。
「私も……」
「◯◯さんには今聞いていないから」
「ごめんなさい」
天童君の圧の利いた言葉に何も言えなくなってしまった。
それに、天童君って基本的に女の子であろうと下の名前で呼ぶのに、何で私だけ……。
しばらくこのグループで授業を受けるのツライな。
一言も発言しないまま、時間ばかりが過ぎる。
「今日の授業はここまで。次回発表してもらうからまとめておけよ」
やっと終わった。
私は教材を片付けて机を定位置に戻そうとした。
すると天童君が、
「俺らの班は誰かを除いて優秀でよかったよ!おかげで意見もまとまったしネ」
「……っ!」
冷ややかな目で私を見ながら大きなひとり言を呟いた。
あからさまに私の悪口だ。
同じ班の子たちも気まずそうにしているけれど、我関せずを貫き通すのか、誰も何も言わない。
「せめて、発表用の図形なり原稿くらいは用意してほしいよ。ねえ、◯◯さんもそう思わない?」
「そうだね」
これは暗に私にやっておけ、と言っている。
「さすが!じゃあ任せたヨ!」
天童君は私の肩を痛いくらい強くポンと叩き、教室を出ていった。
これが好きの裏返しならそうとう性格が捻くれていると思う。
絶対に私のことを嫌っているに違いない。
私は叩かれた肩を擦りながら、休憩時間を使って先程の授業のまとめを始めた。
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