隣にいるための理由
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そんなある日、私に転機が訪れた。
「いらっしゃいませ~………」
いつものようにお客様を迎え入れると、
「天童さん……」
「◯◯ちゃん……」
まさか天童さんがこんなところに来るとは。
先輩キャストさんは、知り合いならあなたが接客しなさい、と気を利かせてくれた。
ありがたいけど、正直気まづい。
あんなにお世話になったのに、結局ちゃんと挨拶せずに辞めてしまったから。
「久しぶりだね●●ちゃん」
「はい、天童さんこそ元気そうで何よりです」
「もう仕事の先輩後輩じゃないんだし、覚さん……いやサトリンって呼んでよ~」
天童さんは相変わらずのテンションで話しかけてくれた。
「覚さんもお酒飲まれるんですね」
サトリンじゃないのかよ!と突っ込みが飛んできたけど、スルーをしたら諦めたのか会話を続けてくれた天童さん。
「うん、強くないけどね」
天童さんはウイスキーのマッカランのロックとおつまみにチョコレートを注文した。
シェイカーを使わないお酒なら私も作れるので、適切なサイズに砕いた氷をグラスに入れた後にマッカランを注いだ。
天童さんはそれを一口含んだ。
「俺ね、来年パリに行くことにした」
「え………」
それは急な告白だった。
だって5年以内とは言っていたけど、まさか来年だとは。
「そうなんですね、寂しくなります」
「うん、オーナーにはお世話になったけど、やっぱり本場で修行したくて。ショコラティエになるのが俺の夢なんだ」
知らなかった。
てっきりパティシエで功績を残したいのかと思っていたから。
そうかショコラティエの方なんだ……。
私って本当に天童さんのこと知らないんだな。
「それでね、ここからは俺の一人言だと思って聞いてほしいんだけど」
そう言って天童さんは語り始めた。
「俺にはね気になる女の子がいるんだ。初めてあ会ったときはガチガチに緊張していて、だけど彼女なりに頑張っているのがヒシヒシと伝わってきて。彼女を見るたびに初心を忘れちゃいけないって気持ちにさせられた」
「………」
「そんな彼女ともっと関係を深めたいと思っていたのに、ある日突然ケガで仕事を辞めちゃった」
天童さんの話に出てくる女の子がまるで私のことのようで、なんて返事をすればいいのか分からなかった。
「だけどね、たまたまお酒好きな従業員が、このお店で彼女が働いているのを見つけて教えてくれたの。だから俺は彼女に思いを伝えたいと思って、あまり嗜まないお酒を飲みにここまでやって来ました」
「………」
「●●ちゃん、君のことだよ」
「覚さん………」
「これから先、俺の隣にいて欲しいし、パリにも付いてきて欲しい。どうかな?」
「そんな……」
そんなこと言われても……。
「私、もうパティシエは諦めたので……」
天童さんの隣にいる資格なんてない。
「何もビジネスパートナーの誘いじゃないんだよ。パティシエとしてじゃなくて、お嫁さんとして側にいて欲しい」
「それって……」
「俺はね、●●ちゃんのことが好き」
「わ、私も覚さんのことがっ!」
その先を言い掛けたところで、仕事中だと言うことに気が付いた。
チラッと店長の方を見るとニヤニヤとこちらを見ていた。
「あ、………えっと……今日は0時までのシフトなので……」
天童さんにそれまで待っていて貰えないか聞こうとしたら、店長に名前を呼ばれた。
「◯◯さん」
「あ、はい!」
「あなた、今日体調が悪いって言っていたわよね?」
「え?」
そんなことを言った覚えはないし、むしろすこぶる元気だ。
「言っていたわよね!」
それなのに圧が凄くて、思わず“はい”と返事をしてしまった。
「今日もう上がりなさい。そちらのお客様、よければこの子を送ってくださらないかしら」
「勿論だよ」
「店長………」
粋な計らいに涙腺が緩くなりそうだった。
「その代わりに、明日はバシバシ働いてもらいますからね!」
「はい!」
私はその場で一礼をした後、更衣室で急いで着替えを済ませ、外で待っていた天童さんの元へ駆けた。
「いらっしゃいませ~………」
いつものようにお客様を迎え入れると、
「天童さん……」
「◯◯ちゃん……」
まさか天童さんがこんなところに来るとは。
先輩キャストさんは、知り合いならあなたが接客しなさい、と気を利かせてくれた。
ありがたいけど、正直気まづい。
あんなにお世話になったのに、結局ちゃんと挨拶せずに辞めてしまったから。
「久しぶりだね●●ちゃん」
「はい、天童さんこそ元気そうで何よりです」
「もう仕事の先輩後輩じゃないんだし、覚さん……いやサトリンって呼んでよ~」
天童さんは相変わらずのテンションで話しかけてくれた。
「覚さんもお酒飲まれるんですね」
サトリンじゃないのかよ!と突っ込みが飛んできたけど、スルーをしたら諦めたのか会話を続けてくれた天童さん。
「うん、強くないけどね」
天童さんはウイスキーのマッカランのロックとおつまみにチョコレートを注文した。
シェイカーを使わないお酒なら私も作れるので、適切なサイズに砕いた氷をグラスに入れた後にマッカランを注いだ。
天童さんはそれを一口含んだ。
「俺ね、来年パリに行くことにした」
「え………」
それは急な告白だった。
だって5年以内とは言っていたけど、まさか来年だとは。
「そうなんですね、寂しくなります」
「うん、オーナーにはお世話になったけど、やっぱり本場で修行したくて。ショコラティエになるのが俺の夢なんだ」
知らなかった。
てっきりパティシエで功績を残したいのかと思っていたから。
そうかショコラティエの方なんだ……。
私って本当に天童さんのこと知らないんだな。
「それでね、ここからは俺の一人言だと思って聞いてほしいんだけど」
そう言って天童さんは語り始めた。
「俺にはね気になる女の子がいるんだ。初めてあ会ったときはガチガチに緊張していて、だけど彼女なりに頑張っているのがヒシヒシと伝わってきて。彼女を見るたびに初心を忘れちゃいけないって気持ちにさせられた」
「………」
「そんな彼女ともっと関係を深めたいと思っていたのに、ある日突然ケガで仕事を辞めちゃった」
天童さんの話に出てくる女の子がまるで私のことのようで、なんて返事をすればいいのか分からなかった。
「だけどね、たまたまお酒好きな従業員が、このお店で彼女が働いているのを見つけて教えてくれたの。だから俺は彼女に思いを伝えたいと思って、あまり嗜まないお酒を飲みにここまでやって来ました」
「………」
「●●ちゃん、君のことだよ」
「覚さん………」
「これから先、俺の隣にいて欲しいし、パリにも付いてきて欲しい。どうかな?」
「そんな……」
そんなこと言われても……。
「私、もうパティシエは諦めたので……」
天童さんの隣にいる資格なんてない。
「何もビジネスパートナーの誘いじゃないんだよ。パティシエとしてじゃなくて、お嫁さんとして側にいて欲しい」
「それって……」
「俺はね、●●ちゃんのことが好き」
「わ、私も覚さんのことがっ!」
その先を言い掛けたところで、仕事中だと言うことに気が付いた。
チラッと店長の方を見るとニヤニヤとこちらを見ていた。
「あ、………えっと……今日は0時までのシフトなので……」
天童さんにそれまで待っていて貰えないか聞こうとしたら、店長に名前を呼ばれた。
「◯◯さん」
「あ、はい!」
「あなた、今日体調が悪いって言っていたわよね?」
「え?」
そんなことを言った覚えはないし、むしろすこぶる元気だ。
「言っていたわよね!」
それなのに圧が凄くて、思わず“はい”と返事をしてしまった。
「今日もう上がりなさい。そちらのお客様、よければこの子を送ってくださらないかしら」
「勿論だよ」
「店長………」
粋な計らいに涙腺が緩くなりそうだった。
「その代わりに、明日はバシバシ働いてもらいますからね!」
「はい!」
私はその場で一礼をした後、更衣室で急いで着替えを済ませ、外で待っていた天童さんの元へ駆けた。