隣にいるための理由
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時間に追われていると、あっという間に閉店時間になった。
「◯◯さん、お疲れ様でした。さっそくテストするよ~。あ、伊藤さんはそのまま片付け始めてね」
前半の接客スタッフの山田さんが帰った後、入れ換えで入ってきた伊藤さん。
天童さんは伊藤さんに締めの作業を任せた後、邪魔にならない場所でスマホを取り出して、ケーキの写真を見せてきた。
「はい、今から順番にケーキ写真を見せていくから、商品名と特徴、値段を答えて言ってネ」
テストってこういうタイプか。
どうやってやるのかと思っていたけど、あらかじめ聞いておけばよかった。
なんとかショーケースに並んでいた残像を思いだし、順々に答えた。
「次はこれネ」
「えーっと……」
ピンク色と緑色の二層構造のムースのケーキの写真。
いちごか、チェリーかラズベリーか……。
緑は抹茶?
いや、でも抹茶は他にもあったから、2種類も置くはずないし……。
まずい。
材料から名前を推測しようかと思ったけど、全然出てこない。
「最初は“フ”だよ」
それを見かねた天童さんはヒントを出してくれた。
「フ……」
「レー」
「レー」
「ズ」
「ズ………あっ!」
フレーズはいちごだから、緑はピスタチオのムース!
つまり、
「フレーズピスターシュだ!」
「はい、正解!思い出せて偉いね~」
半分は天童さんが答えを教えてくれたような物なのに、凄く褒めてくれた。
たったこれだけなのに、天童さんが指導係でよかったと思った。
「おーい、天童。そろそろ戻ってこい!」
「は~い」
オーナーの佐藤さんに呼ばれた天童さん。
「じゃあ残りは明日やるから、◯◯さんはもう上がっていいよ」
「天童さんはまだ帰らないんですか?」
「僕らはまだ明日の仕込みがあるからね」
「そうですか……」
「暗いから気を付けて帰るんだよ」
そう言って頭をポンっと撫でてくれた天童さんは製造へと戻っていった。
製造しながら私の指導、絶対に大変なはずなのに。
それでも私のことを気に掛けてくれる様に、私も天童さんのようなパティシエになりたいと思った。
更衣室で着替えを済ませると、今日一日立ち仕事だったからか、足がパンパン。
そのうち慣れるよね。
私は製造場へ顔を出し挨拶をしてから帰ることにした。
「お、お疲れさまでした。お先に失礼します」
「はい、お疲れー」
残っている職人さんたちは皆、手元の作業に集中して、誰一人として私を見てくれなかった。
天童さんを除いて。
あー、やっぱりいい人だ。
その後に直ぐ作業に戻った彼のその真剣な表情、繊細な動き。
ずっと売場にいたから気が付かなかったけど、天童さんもちゃんとパティシエなんだ、と思い知らされた。
いつか肩を並べて私もここで製造ができるだろうか。
期待と不安がいっぱいな初日が終わった。
「◯◯さん、お疲れ様でした。さっそくテストするよ~。あ、伊藤さんはそのまま片付け始めてね」
前半の接客スタッフの山田さんが帰った後、入れ換えで入ってきた伊藤さん。
天童さんは伊藤さんに締めの作業を任せた後、邪魔にならない場所でスマホを取り出して、ケーキの写真を見せてきた。
「はい、今から順番にケーキ写真を見せていくから、商品名と特徴、値段を答えて言ってネ」
テストってこういうタイプか。
どうやってやるのかと思っていたけど、あらかじめ聞いておけばよかった。
なんとかショーケースに並んでいた残像を思いだし、順々に答えた。
「次はこれネ」
「えーっと……」
ピンク色と緑色の二層構造のムースのケーキの写真。
いちごか、チェリーかラズベリーか……。
緑は抹茶?
いや、でも抹茶は他にもあったから、2種類も置くはずないし……。
まずい。
材料から名前を推測しようかと思ったけど、全然出てこない。
「最初は“フ”だよ」
それを見かねた天童さんはヒントを出してくれた。
「フ……」
「レー」
「レー」
「ズ」
「ズ………あっ!」
フレーズはいちごだから、緑はピスタチオのムース!
つまり、
「フレーズピスターシュだ!」
「はい、正解!思い出せて偉いね~」
半分は天童さんが答えを教えてくれたような物なのに、凄く褒めてくれた。
たったこれだけなのに、天童さんが指導係でよかったと思った。
「おーい、天童。そろそろ戻ってこい!」
「は~い」
オーナーの佐藤さんに呼ばれた天童さん。
「じゃあ残りは明日やるから、◯◯さんはもう上がっていいよ」
「天童さんはまだ帰らないんですか?」
「僕らはまだ明日の仕込みがあるからね」
「そうですか……」
「暗いから気を付けて帰るんだよ」
そう言って頭をポンっと撫でてくれた天童さんは製造へと戻っていった。
製造しながら私の指導、絶対に大変なはずなのに。
それでも私のことを気に掛けてくれる様に、私も天童さんのようなパティシエになりたいと思った。
更衣室で着替えを済ませると、今日一日立ち仕事だったからか、足がパンパン。
そのうち慣れるよね。
私は製造場へ顔を出し挨拶をしてから帰ることにした。
「お、お疲れさまでした。お先に失礼します」
「はい、お疲れー」
残っている職人さんたちは皆、手元の作業に集中して、誰一人として私を見てくれなかった。
天童さんを除いて。
あー、やっぱりいい人だ。
その後に直ぐ作業に戻った彼のその真剣な表情、繊細な動き。
ずっと売場にいたから気が付かなかったけど、天童さんもちゃんとパティシエなんだ、と思い知らされた。
いつか肩を並べて私もここで製造ができるだろうか。
期待と不安がいっぱいな初日が終わった。