〜第二章〜 ただの変わり者好きな女の子
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去年の春。
高校を入学して直ぐの頃、仲良くなったナナコと映画を観に行く約束をした。
待ち合わせの駅でワクワクしながら彼女を待っていると、約束の時間の5分前にスマホの画面に1通の知らせが届いた。
“ごめん、映画いけなくなった!”
続きを読んでみると、その理由がツラツラと書き記されていた。
どうらや、電車で向かっている途中で財布を落としたことに気付き、問い合わせたら遠くの駅で見つかったという。
取りに行くのに時間がかかるから、今日は無理だと。
仕方がない。
そう自分に言い聞かせながらも、楽しみにしていた予定が台無しになった喪失感が胸に広がる。
それに、すでに買っておいた映画のチケットが無駄になるのはもったいない。
1人で観るか。
私はナナコにその旨を伝え、肩を落としながら映画館へ向かうことにした。
スマホから視線を上げたその時、不意に声がかけられた。
「ねぇ、お姉さん」
振り返ると、いかにもチャラそうな男性がニヤニヤと笑いかけてくる。
見たこともない人だった。
「ずっと1人でいるよね?もしかしてドタキャンされた?よかったら俺と遊ぼうよ」
いわゆるナンパだ。
気分が沈んでいたところに、さらに嫌な気分になる。
だけど、ドタキャンされたのは図星だったため、どう言葉を返せばいいのか一瞬戸惑ってしまった。
「えっと…」
言葉を探していると、ナンパ男は私の腕を掴んできた。
「いいから、行こうぜ」
「やめっ……!」
咄嗟に抵抗したけれど、思ったより力が強くて振り払えない。
腕を掴まれたまま引っ張られ、心臓がバクバクと音を立てる。
誰か、誰か助けて!
その時、背後からドスのきいた低い声が響いた。
「おい、邪魔だ」
声の主を見ると、そこにはハミチキを片手に持った、見覚えのある人物が立っていた。
金髪の坊主頭に黒い2本線が入った刈り上げ。
髪の色は変わっていたけれど、紛れもなく中学の同級生、京谷賢太郎だった。
「な、なんだよ、お前」
ナンパ男は、京谷君の威圧的な雰囲気にすっかり怖気づいているようだった。
「何って喧嘩売ってんだ、買えよ」
京谷君は淡々とそう言い放った。
助けてくれたのはありがたいけど、喧嘩だけは勘弁してほしい。
だけど、それは杞憂に終わった。
「はぁ?誰が買うかよ。良く見たらその女大したことないし。せいぜい仲良くやんな」
ナンパ男は負けを悟ったのか捨て台詞を吐いて去っていった。
それにしても、大したことないって……。
散々な言われよう。
ひとまず、京谷君にお礼を言うことにした。
「ありがとう、京谷君」
私の言葉に、京谷君は、
「あ゛ぁ?」
と威嚇混じりの返事をした。
もしかして私のこと、覚えてないのかもしれない。
それならそれで、見ず知らずの人を助けた志に感心する。
そう思っていると、彼の口元が小さく歪んだ。
「こんなところで何やってんだよ、◯◯」
覚えてるんじゃん。
私の名前を呼んだ京谷君の声は、どこか少しだけ、安堵しているように聞こえた気がした。
「友達と映画観る約束してたんだけど、来られなくなっちゃったみたいで」
私がそう言うと、京谷君は手に持っていたハミチキを一口噛り、
「ふーん」
と興味なさそうに答えた。
このまま別れるのもなんだか気まずい。
それに、助けてもらったお礼もしたい。
そう思い、映画に誘ってみることにした。
「あの……、京谷君時間ある?よかったら一緒に映画どう?お礼も兼ねて」
少し期待しながらそう尋ねると、京谷君は一瞬ためらったように見えた。
「もちろん、興味あればだけど」
「……」
何も言わない彼に、やっぱり迷惑だったかな、と思ったその時、小さな声が聞こえた。
「……く」
「ん?」
聞き取れずに聞き返すと、彼は少しだけ視線を逸らし、はっきりと答えた。
「行く」
「!?」
まさかの返事に、誘っておいて驚いてしまった。
取り敢えず、映画のチケットが無駄にならずに済んで良かった。
私は満面の笑みで京谷君の手を引いた。
「じゃあ、行こうか!」
高校を入学して直ぐの頃、仲良くなったナナコと映画を観に行く約束をした。
待ち合わせの駅でワクワクしながら彼女を待っていると、約束の時間の5分前にスマホの画面に1通の知らせが届いた。
“ごめん、映画いけなくなった!”
続きを読んでみると、その理由がツラツラと書き記されていた。
どうらや、電車で向かっている途中で財布を落としたことに気付き、問い合わせたら遠くの駅で見つかったという。
取りに行くのに時間がかかるから、今日は無理だと。
仕方がない。
そう自分に言い聞かせながらも、楽しみにしていた予定が台無しになった喪失感が胸に広がる。
それに、すでに買っておいた映画のチケットが無駄になるのはもったいない。
1人で観るか。
私はナナコにその旨を伝え、肩を落としながら映画館へ向かうことにした。
スマホから視線を上げたその時、不意に声がかけられた。
「ねぇ、お姉さん」
振り返ると、いかにもチャラそうな男性がニヤニヤと笑いかけてくる。
見たこともない人だった。
「ずっと1人でいるよね?もしかしてドタキャンされた?よかったら俺と遊ぼうよ」
いわゆるナンパだ。
気分が沈んでいたところに、さらに嫌な気分になる。
だけど、ドタキャンされたのは図星だったため、どう言葉を返せばいいのか一瞬戸惑ってしまった。
「えっと…」
言葉を探していると、ナンパ男は私の腕を掴んできた。
「いいから、行こうぜ」
「やめっ……!」
咄嗟に抵抗したけれど、思ったより力が強くて振り払えない。
腕を掴まれたまま引っ張られ、心臓がバクバクと音を立てる。
誰か、誰か助けて!
その時、背後からドスのきいた低い声が響いた。
「おい、邪魔だ」
声の主を見ると、そこにはハミチキを片手に持った、見覚えのある人物が立っていた。
金髪の坊主頭に黒い2本線が入った刈り上げ。
髪の色は変わっていたけれど、紛れもなく中学の同級生、京谷賢太郎だった。
「な、なんだよ、お前」
ナンパ男は、京谷君の威圧的な雰囲気にすっかり怖気づいているようだった。
「何って喧嘩売ってんだ、買えよ」
京谷君は淡々とそう言い放った。
助けてくれたのはありがたいけど、喧嘩だけは勘弁してほしい。
だけど、それは杞憂に終わった。
「はぁ?誰が買うかよ。良く見たらその女大したことないし。せいぜい仲良くやんな」
ナンパ男は負けを悟ったのか捨て台詞を吐いて去っていった。
それにしても、大したことないって……。
散々な言われよう。
ひとまず、京谷君にお礼を言うことにした。
「ありがとう、京谷君」
私の言葉に、京谷君は、
「あ゛ぁ?」
と威嚇混じりの返事をした。
もしかして私のこと、覚えてないのかもしれない。
それならそれで、見ず知らずの人を助けた志に感心する。
そう思っていると、彼の口元が小さく歪んだ。
「こんなところで何やってんだよ、◯◯」
覚えてるんじゃん。
私の名前を呼んだ京谷君の声は、どこか少しだけ、安堵しているように聞こえた気がした。
「友達と映画観る約束してたんだけど、来られなくなっちゃったみたいで」
私がそう言うと、京谷君は手に持っていたハミチキを一口噛り、
「ふーん」
と興味なさそうに答えた。
このまま別れるのもなんだか気まずい。
それに、助けてもらったお礼もしたい。
そう思い、映画に誘ってみることにした。
「あの……、京谷君時間ある?よかったら一緒に映画どう?お礼も兼ねて」
少し期待しながらそう尋ねると、京谷君は一瞬ためらったように見えた。
「もちろん、興味あればだけど」
「……」
何も言わない彼に、やっぱり迷惑だったかな、と思ったその時、小さな声が聞こえた。
「……く」
「ん?」
聞き取れずに聞き返すと、彼は少しだけ視線を逸らし、はっきりと答えた。
「行く」
「!?」
まさかの返事に、誘っておいて驚いてしまった。
取り敢えず、映画のチケットが無駄にならずに済んで良かった。
私は満面の笑みで京谷君の手を引いた。
「じゃあ、行こうか!」
