〜第一章〜 ただのバレー好きな男の子
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「ねー!どこ行くのー!」
「あ?聞こえねー!」
私の声は、バイクのエンジン音と、風を切り裂く轟音に掻き消された。
信号で止まった時に改めて聞けばいいか。
そう思いながら、大人しくしていることにした。
しばらくバイクを走らせると、遠くからけたたましいサイレンが聞こえてきた。
「そこのバイク!止まりなさい!」
どうやら、私たちを追いかけているらしい。
心臓がドクンと嫌な音を立てる。
「なんで追いかけられてるのよー!」
「後ろ向くな、顔写真取られる」
ヘルメットはかぶっているし、賢太郎が無免許なはずもない。
それなのに、なんで追いかけられるの?
賢太郎に心当たりがあるのか尋ねたかった。
でも、それよりも先に、捕まることへの恐怖が押し寄せる。
特に賢太郎は私服だけど、私は制服だ。
後ろ姿が似ている制服はたくさんあるけれど、顔と照合されれば一発アウトだ。
私はギュッと賢太郎の服を掴んで、頭を背中に埋めた。
賢太郎の背中から伝わる熱と振動が、私の恐怖を少しだけ和らげてくれる。
ーーーー
どれくらい走っただろうか。
サイレンの音は遠ざかり、私たちのバイクは静かに止まった。
「着いたぞ」
こんなリスクを冒してまで行きたかった場所とは。
「海……」
目の前に広がるのは、どこまでも続く水平線と、波が砕ける音。
潮の匂いが鼻をくすぐる。
私と賢太郎は防波堤に腰を下ろした。
ぼーっと海を眺めていると、不意に賢太郎が口を開いた。
「去年は来れなかったから」
昨年の夏、賢太郎と海に行く約束をした。
だけど、期末テストで大量の赤点を取った賢太郎の夏休みは、ほとんど補習に費やされ、結局海へは行けなかった。
そのお詫びに、と賢太郎は誕生日月の12月にバイクの免許を取って、私を海に連れて行くと言ってくれた。
だけど、賢太郎の言葉はなかなか実現しなかった。
勉強が苦手な賢太郎は、学科試験に半年以上も苦戦したのだ。
ようやく取れた免許で、今日、賢太郎は私を連れ出してくれた、と言うワケか。
波が静かに打ち寄せる音だけが響く。
私は少しだけ、賢太郎の横顔を盗み見た。
「約束を守ってくれたのは嬉しいけど、部活も行った方がいいよ。喧嘩した先輩も、もういないんでしょ?」
賢太郎が自動車学校に通えたのは、部活に行っていないから。
1年生だった賢太郎は、当時の3年生と喧嘩をして、部活に居づらくなった。
そんな時期に、私は賢太郎と再会した。
事情を知らなかった私は、無邪気に遊びに誘い、賢太郎が部活をサボるきっかけを作った。
原因は喧嘩だったかもしれない。
でも、きっかけは私が作ってしまった。だからこそ、もう1年が経った今、もう一度部活に戻るように促したかった。
部活には行っていなくても、社会人チームと練習していることを知っている。
それでもいいと思っていたけど、やっぱり、同じ年代の人たちと練習するのも大切だと思う。
「バレー、好きなんでしょ?」
「……おう」
賢太郎の目に、わずかな戸惑いが見えた。きっと、彼も思うところがあるのだろう。
「約束ね」
「善処する」
「ふふっ」
賢太郎が“善処”なんて言葉を知っていたことに、思わず笑みが溢れた。
私の彼氏はちょっぴりヤンチャで、口が悪くて、おバカで協調性に欠ける。
でも、ただ真っすぐにバレーを愛している、そんな男の子だ。
目の前に広がる海も、真っすぐにどこまでも続いていた。
ーーFinーー
「あ?聞こえねー!」
私の声は、バイクのエンジン音と、風を切り裂く轟音に掻き消された。
信号で止まった時に改めて聞けばいいか。
そう思いながら、大人しくしていることにした。
しばらくバイクを走らせると、遠くからけたたましいサイレンが聞こえてきた。
「そこのバイク!止まりなさい!」
どうやら、私たちを追いかけているらしい。
心臓がドクンと嫌な音を立てる。
「なんで追いかけられてるのよー!」
「後ろ向くな、顔写真取られる」
ヘルメットはかぶっているし、賢太郎が無免許なはずもない。
それなのに、なんで追いかけられるの?
賢太郎に心当たりがあるのか尋ねたかった。
でも、それよりも先に、捕まることへの恐怖が押し寄せる。
特に賢太郎は私服だけど、私は制服だ。
後ろ姿が似ている制服はたくさんあるけれど、顔と照合されれば一発アウトだ。
私はギュッと賢太郎の服を掴んで、頭を背中に埋めた。
賢太郎の背中から伝わる熱と振動が、私の恐怖を少しだけ和らげてくれる。
ーーーー
どれくらい走っただろうか。
サイレンの音は遠ざかり、私たちのバイクは静かに止まった。
「着いたぞ」
こんなリスクを冒してまで行きたかった場所とは。
「海……」
目の前に広がるのは、どこまでも続く水平線と、波が砕ける音。
潮の匂いが鼻をくすぐる。
私と賢太郎は防波堤に腰を下ろした。
ぼーっと海を眺めていると、不意に賢太郎が口を開いた。
「去年は来れなかったから」
昨年の夏、賢太郎と海に行く約束をした。
だけど、期末テストで大量の赤点を取った賢太郎の夏休みは、ほとんど補習に費やされ、結局海へは行けなかった。
そのお詫びに、と賢太郎は誕生日月の12月にバイクの免許を取って、私を海に連れて行くと言ってくれた。
だけど、賢太郎の言葉はなかなか実現しなかった。
勉強が苦手な賢太郎は、学科試験に半年以上も苦戦したのだ。
ようやく取れた免許で、今日、賢太郎は私を連れ出してくれた、と言うワケか。
波が静かに打ち寄せる音だけが響く。
私は少しだけ、賢太郎の横顔を盗み見た。
「約束を守ってくれたのは嬉しいけど、部活も行った方がいいよ。喧嘩した先輩も、もういないんでしょ?」
賢太郎が自動車学校に通えたのは、部活に行っていないから。
1年生だった賢太郎は、当時の3年生と喧嘩をして、部活に居づらくなった。
そんな時期に、私は賢太郎と再会した。
事情を知らなかった私は、無邪気に遊びに誘い、賢太郎が部活をサボるきっかけを作った。
原因は喧嘩だったかもしれない。
でも、きっかけは私が作ってしまった。だからこそ、もう1年が経った今、もう一度部活に戻るように促したかった。
部活には行っていなくても、社会人チームと練習していることを知っている。
それでもいいと思っていたけど、やっぱり、同じ年代の人たちと練習するのも大切だと思う。
「バレー、好きなんでしょ?」
「……おう」
賢太郎の目に、わずかな戸惑いが見えた。きっと、彼も思うところがあるのだろう。
「約束ね」
「善処する」
「ふふっ」
賢太郎が“善処”なんて言葉を知っていたことに、思わず笑みが溢れた。
私の彼氏はちょっぴりヤンチャで、口が悪くて、おバカで協調性に欠ける。
でも、ただ真っすぐにバレーを愛している、そんな男の子だ。
目の前に広がる海も、真っすぐにどこまでも続いていた。
ーーFinーー
