〜第二章〜 ただの変わり者好きな女の子
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私の高校の赤点ラインは平均点の半分の点数だ。
1年生の1学期末ということもあってか、中間テストよりも平均点が高く、私は気が気でなかった。
それでも、日頃の努力が報われて幸いにも赤点にならずに済んだ。
安堵した私は、その日の夜に京谷君に電話をかけた。
偏見で申し訳ないけれど、お世辞にも勉強ができそうな見た目ではない彼が心配だったから。
「無事に赤点回避したよ。京谷君は?」
電話越しに聞こえたのは、いつもの低くて落ち着いた声ではなく、どこか緊張したような掠れた声だった。
“………ちょっと、出てこれるか?直接話したい”
コンビニへ行くために呼び出したり呼び出されたりはあったけれど、こんな誘い方は初めてだった。
なんとなく胸騒ぎがする。
「え、いいけど……」
“悪い、帰りは家まで送るから”
「うん、じゃあ、また後で」
電話を切ってすぐ、私は家の近くにある公園に向かった。
懐かしい通学路をたどり、公園に入ると、私はブランコに腰掛けた。
ブランコのチェーンがギシギシと軋む音が、静かな夜に響く。
ゆらゆらと揺れていると、1つの人影が公園に入ってきた。
京谷君だ。
「こんばんは」
「おう」
京谷君も私の隣のブランコに腰掛けた。
「……」
「……」
呼び出しておいて、京谷君は何も話さない。
ただ、ギコギコと錆びたブランコの音だけが響く。
しばらくして、ようやく京谷君が口を開いた。
「あのさ……悪い」
彼の口から出たのは、思いがけない謝罪だった。
「……海、行けそうにない」
「え、なんで?」
「……赤点補習が夏休みにある」
「だからあれほど勉強しなよって言ったのに」
私の言葉に、彼はブランコのチェーンを強く握りしめた。
その悔しそうな横顔は、暗闇の中でもはっきりと見えた。
「代わりになるか分かんねぇけど、冬になったら小型二輪の免許取る。そんで、お前を海に連れてく」
「それは嬉しいけど、部活と社会人チームの練習があって、自動車学校に通う余裕あるの?」
京谷君は勉強が得意ではない。
その彼が、自動車学校に通いながら部活やチームの練習と両立できるとは思えなかった。
すると、京谷君は静かに話し始めた。
「……俺さ、部活行ってないんだ」
その言葉に、私は息を飲んだ。
薄々勘づいていたことが確信に変わった。やっぱりそうだったんだ。
「入学して早々、部活の先輩に……その……ヘタクソだとか、打ちにくいだとか言って……」
バレーに対する真剣さゆえに、正直な性格ゆえに、つい口にしてしまったのだろうか。
だとしてもそれを口にするのは違う。
その時の彼の表情を想像すると、胸が締め付けられるようだった。
「しばらくは険悪な中でも部活行ってたけど、◯◯に映画に誘われた日、本当は部活があったけど、なんかどうでもよくなって初めてサボった」
私のせいで、彼に嫌な思いをさせてしまった。
私が京谷君をサボらせてしまったんだ。
自責の念に駆られ、顔を上げられずにいると、彼の優しい声が聞こえてきた。
「でも◯◯には感謝してる。そのおかげで社会人チームに入って、今はのびのびとバレーができてる」
「京谷君……」
「あの環境のままだと、本当にバレーが嫌いになって完全に辞めていたかもしれねぇ」
「私、本当に迷惑じゃなかった?」
「言ったろ、感謝してるって」
そう言って微笑んだ京谷君は、吹っ切れたようにすっきりとした表情をしていた。
その表情を見て、私も安堵した。
今まで1人で、心苦しい気持ちを抱えていたんだね。
「だから……さ」
彼の口から出た言葉は、まだ終わりではないことを告げていた。
先程とは打って変わって、どことなく緊張しているように見えた。
「こんな俺だけど、これからも側にいて欲しい」
「京谷君、それって……」
「……これ以上言わせんな」
京谷君は私の返事を聞く前に、
「ほら帰るぞ」
そう言って私の手を強く握ってくれた。
ああ、本当に不器用なんだから。
「私、離さないからね?」
答えるように、私も強く手を握り返した。
「やっぱり変なやつ」
暗くて京谷君の顔は見えなかったけど、耳を赤くした姿が想像できた。
1年生の1学期末ということもあってか、中間テストよりも平均点が高く、私は気が気でなかった。
それでも、日頃の努力が報われて幸いにも赤点にならずに済んだ。
安堵した私は、その日の夜に京谷君に電話をかけた。
偏見で申し訳ないけれど、お世辞にも勉強ができそうな見た目ではない彼が心配だったから。
「無事に赤点回避したよ。京谷君は?」
電話越しに聞こえたのは、いつもの低くて落ち着いた声ではなく、どこか緊張したような掠れた声だった。
“………ちょっと、出てこれるか?直接話したい”
コンビニへ行くために呼び出したり呼び出されたりはあったけれど、こんな誘い方は初めてだった。
なんとなく胸騒ぎがする。
「え、いいけど……」
“悪い、帰りは家まで送るから”
「うん、じゃあ、また後で」
電話を切ってすぐ、私は家の近くにある公園に向かった。
懐かしい通学路をたどり、公園に入ると、私はブランコに腰掛けた。
ブランコのチェーンがギシギシと軋む音が、静かな夜に響く。
ゆらゆらと揺れていると、1つの人影が公園に入ってきた。
京谷君だ。
「こんばんは」
「おう」
京谷君も私の隣のブランコに腰掛けた。
「……」
「……」
呼び出しておいて、京谷君は何も話さない。
ただ、ギコギコと錆びたブランコの音だけが響く。
しばらくして、ようやく京谷君が口を開いた。
「あのさ……悪い」
彼の口から出たのは、思いがけない謝罪だった。
「……海、行けそうにない」
「え、なんで?」
「……赤点補習が夏休みにある」
「だからあれほど勉強しなよって言ったのに」
私の言葉に、彼はブランコのチェーンを強く握りしめた。
その悔しそうな横顔は、暗闇の中でもはっきりと見えた。
「代わりになるか分かんねぇけど、冬になったら小型二輪の免許取る。そんで、お前を海に連れてく」
「それは嬉しいけど、部活と社会人チームの練習があって、自動車学校に通う余裕あるの?」
京谷君は勉強が得意ではない。
その彼が、自動車学校に通いながら部活やチームの練習と両立できるとは思えなかった。
すると、京谷君は静かに話し始めた。
「……俺さ、部活行ってないんだ」
その言葉に、私は息を飲んだ。
薄々勘づいていたことが確信に変わった。やっぱりそうだったんだ。
「入学して早々、部活の先輩に……その……ヘタクソだとか、打ちにくいだとか言って……」
バレーに対する真剣さゆえに、正直な性格ゆえに、つい口にしてしまったのだろうか。
だとしてもそれを口にするのは違う。
その時の彼の表情を想像すると、胸が締め付けられるようだった。
「しばらくは険悪な中でも部活行ってたけど、◯◯に映画に誘われた日、本当は部活があったけど、なんかどうでもよくなって初めてサボった」
私のせいで、彼に嫌な思いをさせてしまった。
私が京谷君をサボらせてしまったんだ。
自責の念に駆られ、顔を上げられずにいると、彼の優しい声が聞こえてきた。
「でも◯◯には感謝してる。そのおかげで社会人チームに入って、今はのびのびとバレーができてる」
「京谷君……」
「あの環境のままだと、本当にバレーが嫌いになって完全に辞めていたかもしれねぇ」
「私、本当に迷惑じゃなかった?」
「言ったろ、感謝してるって」
そう言って微笑んだ京谷君は、吹っ切れたようにすっきりとした表情をしていた。
その表情を見て、私も安堵した。
今まで1人で、心苦しい気持ちを抱えていたんだね。
「だから……さ」
彼の口から出た言葉は、まだ終わりではないことを告げていた。
先程とは打って変わって、どことなく緊張しているように見えた。
「こんな俺だけど、これからも側にいて欲しい」
「京谷君、それって……」
「……これ以上言わせんな」
京谷君は私の返事を聞く前に、
「ほら帰るぞ」
そう言って私の手を強く握ってくれた。
ああ、本当に不器用なんだから。
「私、離さないからね?」
答えるように、私も強く手を握り返した。
「やっぱり変なやつ」
暗くて京谷君の顔は見えなかったけど、耳を赤くした姿が想像できた。
