朝起きると招平君の姿がなかった。

テーブルには朝ご飯とお弁当、置き手紙。


“バイトに行ってきます。●●ちゃんもお仕事がんばレバー”


最後の語尾、なぜ急に他人行儀な感じになったのか。
頭にはてなを浮かべながら用意してくれた朝ご飯を食べた。

うん、相変わらず美味しい。


ーーーー


お昼休憩になり、自分のデスクで招平君が作ってくれたお弁当のフタを開けた。


「◯◯さんのお弁当、今日も美味しそうですね」


私がまじまじと中身を見る前に、いつもお弁当をチェックしてくる同僚の原田君。
あなたが散々ヒモだの、売れない芸人だの貶した人が作ったお弁当ですよ、と苛立ちを覚えながらも、


「ありがとう」


と適当に受け流した。

さてさて、そんなことよりお弁当の中身は何かな。
ふりかけご飯、卵焼き、ブロッコリーの胡麻和え、レバーの甘辛煮………あっ！
置き手紙に書いてあった″がんばレバー″とはこのことだったのか。

招平君のギャグを理解した後の弁当はより美味しく感じた。

そうだ、私も日頃の感謝をギャグで返したい。

そう思い立ってから、仕事をしながらどんなギャグがいいか考えた。


ーーーー


「お疲れ様でした。お先に失礼します」


終業時刻になり、誰にも捕まらないように素早く退勤した。

帰り道の途中にあるスーパーに立ち寄り、ギャグに必要なアイテムを探した。

調味料コーナー…お菓子コーナー…。
普段招平君に買い物を任せているせいで、お目当ての物がどこにあるのか見つけられない。

結局店員さんに聞いて、ようやく買うことができた。


「ただいま！招平君、私からの気持ち」


私は先ほどスーパーで購入したオリゴ糖を招平君に突き付けた。

招平君は一瞬戸惑っているように見えたが、


「ありがとう、オリゴ糖……」


直ぐに理解してくれた。
頭の回転が早くて助かる。


「勢いでオリゴ糖買っちゃったけど、使い道ある？」

「大丈夫」


甘いシロップと言う認識しか持っていない私では持て余してしまうオリゴ糖。
料理が上手なだけあって、招平君は即答した。