「お待たせしました～」

「お、来た来た！」


どう言うこと？

案内された席には既に男性三人がいた。
てっきり棚橋さんと森下さんの三人でご飯を食べるのかとばかり思っていたのに。

状況が飲み込めないけど、いつまでも立ちっぱなしな訳にはいかず、私たちは彼らと向かい合うように座った。


「僕たちは飲み物の注文先に済ませたので、女性陣も頼んじゃって下さい」


そう言って幹事らしき男性にメニュー表を渡された。

お酒苦手なんだけど、ここでノンアルなんか頼んだらシラケさせるよね………。
取りあえず皆に合わせてビールをお願いした。

飲み物が揃ったところで、幹事らしき人が咳払いをして注目を集めた。


「今日はお集まり頂きありがとうございます。特に、女性陣の皆さん！お忙しい中遠い所までありがとうございました。みんなで盛り上がって、楽しい会にしましょう！乾杯！」

「「「乾杯！！」」


ガシャンとジョッキ同士のぶつかる音が響く。


「では始めに自己紹介から～」


薄々察していたが、これは合コンだ。

予約をしてあると聞いておかしいと思った。

私に気を遣ってご飯に誘ってくれたのではなく、ただの人数合わせ、それか引き立て役。
もしくは急遽キャンセルが出たからその穴埋め。

どんな理由であれ、本来なら誘われない人間だと言うことだけは確かだ。

そんなことを考えていると、いつの間にか二人の男性の自己紹介が終わっており、私の目の前に座っている三人目の男性の番になっていた。

猫背に猫っぽい目。まるで猫みたいな男性。


「福永招平です。お笑い芸人です。料理が得意です」


へぇー芸人さんか。


「じゃあ、次は女性陣お願いします」


名前を聞きそびれた男性が仕切ってきた。

棚橋さんと森下さんは慣れたように自己紹介をしていった。
私は何を話せばいいんだろう。
内容を考えていると、


「ほら、次。◯◯さん」


森下さんはこっそり肘打ちをして順番が来たことを教えてくれた。


「あ、◯◯●●です。棚橋さんと森下さんの同期です。よろしくお願いします」


結局大したことは言えず、この自己紹介で福永さん以外の男性二人が何かを察したように私を見てきた。

…切実に帰りたい。
私は空気になるように徹しよう。