最幸のお弁当
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朝、あんなに嬉しそうにお弁当を受け取ってくれたのに。
お昼を過ぎ、夕方を迎え、帰宅してからも鉄朗からの通知は1つも届かなかった。
「……忙しくて、食べる暇もなかったのかな」
それとも、実は口に合わなくて、感想に困っているのだろうか。
もしそうなら、普段のご飯も無理をしている可能性が……。
一度不安になると、負の感情が頭の中をグルグルと駆け巡る。
リビングのソファで膝を抱えて丸くなっていると、玄関からガチャリと音がした。
「は〜疲れたー。……ただいま」
「鉄朗、おかえり!」
リビングの扉が開く音と同時に、私は身を乗り出す勢いで出迎えた。
「うおっ、びっくりした……。ただいま、●●」
少し驚いたように目を丸くした後、鉄朗はいつものようにふにゃりと優しく笑った。
彼の仕事鞄を受け取ると、保冷バッグを抜き取る。
そして、逃げるようにキッチンへ向かい、震える手でお弁当箱を取り出した。
パカッ、と蓋を開ける。
そこには、米粒1つ残っていない、空っぽの景色があった。
「あ……」
ちゃんと、食べてくれたんだ……。
それだけで、張り詰めていた心の糸が解ける。
私はお弁当箱を洗い終えると、リビングでくつろぎ始めた彼に勇気を振り絞って尋ねた。
「あの……お弁当、どうだった?」
「おー!めちゃくちゃ美味かったよ。ありがとな」
「……よかったー!」
心底安堵した私の声に、鉄朗は不思議そうにこちらを振り返った。
「ったく、俺の奥さんは心配性なんだから。何をそんなに不安がることがあんのよ」
「だって……連絡ないから、口に合わなかったのかなって……」
「あー、悪ぃ。噛み締めてたら送るの忘れてた」
鉄朗はソファの背に頭を預け、どこか遠くを見るような目で、ぽつりぽつりと話し始めた。
「俺さ、親父と2人暮らしだったからさ……」
鉄朗の両親は、彼が幼い頃に離婚した。
お姉さんは母親に、鉄朗は父親に引き取られたという話は、以前彼から聞いたことがあった。
「いわゆる手作り弁当って、あんまり縁がなかったんだよね。6年生の遠足なんて、菓子パンだったんだぜ?当時はそれがすげェ嫌だったんだけどさ」
彼はそこで一度言葉を切り、私を見て、イタズラっぽく、けれど最高に愛おしそうな笑顔を浮かべた。
「今こうして、●●の弁当を美味しく食べられるのは、あの当時の出来事があったからだと思うとさ……。あの菓子パンも、案外悪くなかったのかもな、なんて思った」
少し照れくさそうに、けれど真っ直ぐに私を見つめるその瞳には、嘘偽りない温かさが宿っている。
「だからさ、●●。俺に弁当を作ってくれて、ありがとう。……俺と結婚してくれて、ありがとう」
不意に重なった感謝の言葉に、胸の奥が熱くなる。
彼の寂しかった過去が、私の作ったお弁当で少しだけ塗り替えられたのなら、これ以上に幸せなことはない。
「……っ、そんなの、私の方こそだよ」
視界がにじんで、私は堪えきれずに彼の腕の中に飛び込んだ。
鉄朗は少し驚いたように体を揺らした後、大きな手で私の背中を優しくさすってくれる。
「明日も、楽しみにしててね。鉄朗の好きなもの、もっとたくさん入れるから」
「おう。期待してるわ」
明日は何を詰めよう。
彼の胃袋も、そして心もいっぱいに満たせるような、最幸 のお弁当を。
既に、明日が待ち遠しくて仕方がなかった。
ーーFinーー
お昼を過ぎ、夕方を迎え、帰宅してからも鉄朗からの通知は1つも届かなかった。
「……忙しくて、食べる暇もなかったのかな」
それとも、実は口に合わなくて、感想に困っているのだろうか。
もしそうなら、普段のご飯も無理をしている可能性が……。
一度不安になると、負の感情が頭の中をグルグルと駆け巡る。
リビングのソファで膝を抱えて丸くなっていると、玄関からガチャリと音がした。
「は〜疲れたー。……ただいま」
「鉄朗、おかえり!」
リビングの扉が開く音と同時に、私は身を乗り出す勢いで出迎えた。
「うおっ、びっくりした……。ただいま、●●」
少し驚いたように目を丸くした後、鉄朗はいつものようにふにゃりと優しく笑った。
彼の仕事鞄を受け取ると、保冷バッグを抜き取る。
そして、逃げるようにキッチンへ向かい、震える手でお弁当箱を取り出した。
パカッ、と蓋を開ける。
そこには、米粒1つ残っていない、空っぽの景色があった。
「あ……」
ちゃんと、食べてくれたんだ……。
それだけで、張り詰めていた心の糸が解ける。
私はお弁当箱を洗い終えると、リビングでくつろぎ始めた彼に勇気を振り絞って尋ねた。
「あの……お弁当、どうだった?」
「おー!めちゃくちゃ美味かったよ。ありがとな」
「……よかったー!」
心底安堵した私の声に、鉄朗は不思議そうにこちらを振り返った。
「ったく、俺の奥さんは心配性なんだから。何をそんなに不安がることがあんのよ」
「だって……連絡ないから、口に合わなかったのかなって……」
「あー、悪ぃ。噛み締めてたら送るの忘れてた」
鉄朗はソファの背に頭を預け、どこか遠くを見るような目で、ぽつりぽつりと話し始めた。
「俺さ、親父と2人暮らしだったからさ……」
鉄朗の両親は、彼が幼い頃に離婚した。
お姉さんは母親に、鉄朗は父親に引き取られたという話は、以前彼から聞いたことがあった。
「いわゆる手作り弁当って、あんまり縁がなかったんだよね。6年生の遠足なんて、菓子パンだったんだぜ?当時はそれがすげェ嫌だったんだけどさ」
彼はそこで一度言葉を切り、私を見て、イタズラっぽく、けれど最高に愛おしそうな笑顔を浮かべた。
「今こうして、●●の弁当を美味しく食べられるのは、あの当時の出来事があったからだと思うとさ……。あの菓子パンも、案外悪くなかったのかもな、なんて思った」
少し照れくさそうに、けれど真っ直ぐに私を見つめるその瞳には、嘘偽りない温かさが宿っている。
「だからさ、●●。俺に弁当を作ってくれて、ありがとう。……俺と結婚してくれて、ありがとう」
不意に重なった感謝の言葉に、胸の奥が熱くなる。
彼の寂しかった過去が、私の作ったお弁当で少しだけ塗り替えられたのなら、これ以上に幸せなことはない。
「……っ、そんなの、私の方こそだよ」
視界がにじんで、私は堪えきれずに彼の腕の中に飛び込んだ。
鉄朗は少し驚いたように体を揺らした後、大きな手で私の背中を優しくさすってくれる。
「明日も、楽しみにしててね。鉄朗の好きなもの、もっとたくさん入れるから」
「おう。期待してるわ」
明日は何を詰めよう。
彼の胃袋も、そして心もいっぱいに満たせるような、
既に、明日が待ち遠しくて仕方がなかった。
ーーFinーー
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