最低最善の恋人
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鉄朗と過ごす時間が増えるにつれ、私の復讐心には、迷いが生じ始めてきた。
夕暮れが近付くラウンジでは、カチャカチャというキーボードの音や、近くの学生たちのひそひそ話が聞こえてくる。
私と鉄朗も、いつも座る壁際の席で、互いにレポートを広げていた。
彼の隣にいるのは、驚くほど心地よい。
もう何年もこうして側にいたかのようだ。
誰から見ても不釣り合いだと言わせない。
それもこれも、努力して手に入れた体型のおかげ。
彼はごく自然に受け入れ、私の話を聞き、笑う。
その屈託のない笑顔を見るたびに、私の中に封印していたはずの“好き”という感情が、憎しみの底から這い上がってくるのを感じた。
こんなに優しい人が、本当にあの時の私をただ見た目だけで切り捨てたのだろうか。
心が揺らぐ度に、私は目を閉じた。
瞼の裏には、小学生の時の、彼の冷酷な瞳と、「お前、太ってるから」という容赦のない言葉を思い出し、憎しみの炎を燃やそうとした。
だけど、彼の優しさが本物だと感じれば感じるほど、この復讐計画は、私自身の心を蝕んでいく。
もし、このまま告白させて彼を振ったら。
私は結局、人を傷つけるために偽りの愛情を利用した、彼と同じ人間になってしまうのではないか。
その時、沈黙を破って鉄朗が口を開いた。
「あのさ」
彼は組んでいた足を軽く崩し、少しだけ照れたように、こちらに体を向けた。
その目には、真っ直ぐな好意が宿っているのが、私にもはっきりと伝わってくる。
「今度の日曜日、もし空いてたらさ、2人でどこか出掛けない?」
初めての遠出。
計画は順調。
最後の仕上げの段階に入っている。
それなのに、胸に広がるのは達成感ではなく、まるで彼を騙しているかのような、得体の知れない罪悪感だった。
素直に喜べない自分が情けなく、私は慌てて思考を現実に引き戻した。
「……●●ちゃん?」
鉄朗が心配そうに私を覗き込む。
「あ、ごめんね、ぼーっとしてた」
私は笑顔の仮面を貼り直した。
「お出掛け、いいね!どこに行こうか?」
鉄朗は安堵したように、再び笑顔を向けた。
「じゃあさ、俺が行きたいところあるから、付き合ってくれない?」
罪悪感から逃げるためには、このデートを断り、距離を置くべきだった。
なのに、私の口から出たのは、
「いいよ」
の一言。
「おっけー!詳しいことはまた連絡するわ」
鉄朗はそう言って、満足そうに缶コーヒーを一口飲んだ。
彼の嬉しそうな横顔を見る度に、私の心は疲弊していった。
夕暮れが近付くラウンジでは、カチャカチャというキーボードの音や、近くの学生たちのひそひそ話が聞こえてくる。
私と鉄朗も、いつも座る壁際の席で、互いにレポートを広げていた。
彼の隣にいるのは、驚くほど心地よい。
もう何年もこうして側にいたかのようだ。
誰から見ても不釣り合いだと言わせない。
それもこれも、努力して手に入れた体型のおかげ。
彼はごく自然に受け入れ、私の話を聞き、笑う。
その屈託のない笑顔を見るたびに、私の中に封印していたはずの“好き”という感情が、憎しみの底から這い上がってくるのを感じた。
こんなに優しい人が、本当にあの時の私をただ見た目だけで切り捨てたのだろうか。
心が揺らぐ度に、私は目を閉じた。
瞼の裏には、小学生の時の、彼の冷酷な瞳と、「お前、太ってるから」という容赦のない言葉を思い出し、憎しみの炎を燃やそうとした。
だけど、彼の優しさが本物だと感じれば感じるほど、この復讐計画は、私自身の心を蝕んでいく。
もし、このまま告白させて彼を振ったら。
私は結局、人を傷つけるために偽りの愛情を利用した、彼と同じ人間になってしまうのではないか。
その時、沈黙を破って鉄朗が口を開いた。
「あのさ」
彼は組んでいた足を軽く崩し、少しだけ照れたように、こちらに体を向けた。
その目には、真っ直ぐな好意が宿っているのが、私にもはっきりと伝わってくる。
「今度の日曜日、もし空いてたらさ、2人でどこか出掛けない?」
初めての遠出。
計画は順調。
最後の仕上げの段階に入っている。
それなのに、胸に広がるのは達成感ではなく、まるで彼を騙しているかのような、得体の知れない罪悪感だった。
素直に喜べない自分が情けなく、私は慌てて思考を現実に引き戻した。
「……●●ちゃん?」
鉄朗が心配そうに私を覗き込む。
「あ、ごめんね、ぼーっとしてた」
私は笑顔の仮面を貼り直した。
「お出掛け、いいね!どこに行こうか?」
鉄朗は安堵したように、再び笑顔を向けた。
「じゃあさ、俺が行きたいところあるから、付き合ってくれない?」
罪悪感から逃げるためには、このデートを断り、距離を置くべきだった。
なのに、私の口から出たのは、
「いいよ」
の一言。
「おっけー!詳しいことはまた連絡するわ」
鉄朗はそう言って、満足そうに缶コーヒーを一口飲んだ。
彼の嬉しそうな横顔を見る度に、私の心は疲弊していった。
