最低最善の恋人
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食堂から遠く離れた場所。
鉄朗は私を、人通りの少ない校舎の横にひっそりと佇む、古びた木製のベンチまで連れてきてくれた。
周りには背の低い木が植えられており、人目を遮断してくれている、そんな空間だった。
「座ってて」
そう言うと、彼はすぐに自動販売機へと走っていった。
そして戻ってくると、冷たいペットボトルのお茶を差し出した。
「これ、飲むと落ち着くよ。まだ顔色悪いな。無理しないで」
彼は、甲斐甲斐しく私の隣に座り、優しく私の背中をゆっくりと擦ってくれた。
その手の温かさが、あの日の冷たさを知っている私の心を、かえって強く逆撫でる。
嘘吐き。
私は心の中で毒づいた。
こんなに親切な振りをして、実は他人を見た目でしか判断しない、最低な人間だと、私は知っている。
「具合、良くなった?」
彼の声は、あの頃よりもずっと低い、大人の声になっていた。
私は、極力彼の顔を見ないように、俯きながら答える。
「あ、はい……大丈夫です。ありがとうございます」
「そっか、よかった」
鉄朗は安堵したように、ふわりと息を吐いた。
「驚かせちゃったな、急に抱き上げたりして。でも、ああするしかなかったから」
彼はそう言って、屈託のない笑みを浮かべた。
それでも私にはその笑顔に裏があるのでは、と常に疑ってしまう。
「えっと、改めて。俺、黒尾鉄朗。1回生。キミは?」
彼は、まるで運命的な出会いを楽しんでいるかのように、目を細めて私に尋ねた。
私は深呼吸をして、心の奥底に眠る憎悪を隠蔽する仮面をかぶった。
「……●●。同じく1回生です」
「●●ちゃんか〜。可愛い名前だね」
鉄朗は、少し胡散臭い笑みを浮かべながら、私の名前を口にした。
彼は、私の名前を聞いても、あの「太っていた●●」に辿り着いていない様子だった。
彼の視線は、私の細くなった顎のラインや、努力して整えたメイクに注がれている。
まあ、無理もないだろう。
体型だけでなく、化粧で多少雰囲気も変わっている。
何より、彼にとって私は存在を抹消した過去の汚点でしかないのだから。
彼は体ごと私の方へ向けた。
「あのさ、俺たち、運命的な出会いって感じしない?よかったらさ、同じ1回生同士、仲良くしようよ」
そして、彼は右手を差し出してきた。
差し出されたその手は、あの日の体育館で、私を救い上げてくれた温かい手と、まるで同じ形をしていた。
私はその手を振り払うこともできた。
ここで断って立ち去れば、二度と関わらずに済む。
だけど、その手を前にして、私の頭の中では、とある計画が浮かび上がった。
復讐。
私のことを好きにさせてやる。
あの時の私が、彼を好きだったように、彼もまた私に夢中になればいい。
そして、全てを手に入れたと錯覚したその瞬間に、こっ酷く振ってやろう。
彼が私を振った時のように、何の感情も持たずに、彼の心を砕いてやる。
あの時、私に与えられた屈辱と絶望を、彼にも味合わせるのだ。
私は、微かに唇の端を吊り上げた。
そして、決意を宿した瞳で鉄朗を見つめた。
「……いいよ。仲良くしよう」
彼の差し出した手を強く握り返した。
「よろしくね、黒尾君」
その瞬間、私の初恋は、7年の時を経て、最悪の復讐劇へと姿を変えた。
鉄朗は私を、人通りの少ない校舎の横にひっそりと佇む、古びた木製のベンチまで連れてきてくれた。
周りには背の低い木が植えられており、人目を遮断してくれている、そんな空間だった。
「座ってて」
そう言うと、彼はすぐに自動販売機へと走っていった。
そして戻ってくると、冷たいペットボトルのお茶を差し出した。
「これ、飲むと落ち着くよ。まだ顔色悪いな。無理しないで」
彼は、甲斐甲斐しく私の隣に座り、優しく私の背中をゆっくりと擦ってくれた。
その手の温かさが、あの日の冷たさを知っている私の心を、かえって強く逆撫でる。
嘘吐き。
私は心の中で毒づいた。
こんなに親切な振りをして、実は他人を見た目でしか判断しない、最低な人間だと、私は知っている。
「具合、良くなった?」
彼の声は、あの頃よりもずっと低い、大人の声になっていた。
私は、極力彼の顔を見ないように、俯きながら答える。
「あ、はい……大丈夫です。ありがとうございます」
「そっか、よかった」
鉄朗は安堵したように、ふわりと息を吐いた。
「驚かせちゃったな、急に抱き上げたりして。でも、ああするしかなかったから」
彼はそう言って、屈託のない笑みを浮かべた。
それでも私にはその笑顔に裏があるのでは、と常に疑ってしまう。
「えっと、改めて。俺、黒尾鉄朗。1回生。キミは?」
彼は、まるで運命的な出会いを楽しんでいるかのように、目を細めて私に尋ねた。
私は深呼吸をして、心の奥底に眠る憎悪を隠蔽する仮面をかぶった。
「……●●。同じく1回生です」
「●●ちゃんか〜。可愛い名前だね」
鉄朗は、少し胡散臭い笑みを浮かべながら、私の名前を口にした。
彼は、私の名前を聞いても、あの「太っていた●●」に辿り着いていない様子だった。
彼の視線は、私の細くなった顎のラインや、努力して整えたメイクに注がれている。
まあ、無理もないだろう。
体型だけでなく、化粧で多少雰囲気も変わっている。
何より、彼にとって私は存在を抹消した過去の汚点でしかないのだから。
彼は体ごと私の方へ向けた。
「あのさ、俺たち、運命的な出会いって感じしない?よかったらさ、同じ1回生同士、仲良くしようよ」
そして、彼は右手を差し出してきた。
差し出されたその手は、あの日の体育館で、私を救い上げてくれた温かい手と、まるで同じ形をしていた。
私はその手を振り払うこともできた。
ここで断って立ち去れば、二度と関わらずに済む。
だけど、その手を前にして、私の頭の中では、とある計画が浮かび上がった。
復讐。
私のことを好きにさせてやる。
あの時の私が、彼を好きだったように、彼もまた私に夢中になればいい。
そして、全てを手に入れたと錯覚したその瞬間に、こっ酷く振ってやろう。
彼が私を振った時のように、何の感情も持たずに、彼の心を砕いてやる。
あの時、私に与えられた屈辱と絶望を、彼にも味合わせるのだ。
私は、微かに唇の端を吊り上げた。
そして、決意を宿した瞳で鉄朗を見つめた。
「……いいよ。仲良くしよう」
彼の差し出した手を強く握り返した。
「よろしくね、黒尾君」
その瞬間、私の初恋は、7年の時を経て、最悪の復讐劇へと姿を変えた。
