偽物の偽物は本物
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〜偽物の偽物は本物〜
眠い目を擦りながら大学の正門をくぐると、後ろから聞き慣れた元気な声が聞こえてきた。
「●●、おはよう!」
振り返ると、ケイコがこちらに駆け寄ってきた。
「ケイコじゃん。おはよう」
彼女の声はどことなく上機嫌に感じた。
「機嫌いいね。良いことでもあった?」
何の気なしに質問すると、ケイコはよくぞ聞いてくれた、言わんばかりの表情で話し始める。
「あのね!昨日彼氏ができたの!」
「おめでとう。どんな人?」
私はラウンジへ向かう足を止めずに尋ねた。
「バイト先が同じ人なんだけど、背が高くて朗らかな人なの!」
「へ〜」
私の相槌はあまりにも素っ気なかったけれど、ケイコは気にしていない様子。
周りが気にならないほど幸せオーラで溢れている。
そう思っていると、
「●●は彼氏さんと順調?えーと、めちゃくちゃハイスペックな彼なんだっけ?」
その質問に、私の足はわずかに止まった。
「ま、まあね」
明らかに上ずった声。
この話はもう終わりにしたい。
だけど、ケイコがそれを許さない。
「それなら、今度ダブルデートしない?まだ2人きりで会うと緊張しちゃうから、一緒に遊んでくれると嬉しいんだけど……」
若干私よりも背の低い彼女は自然と上目遣いになる。
そんな潤んだ瞳で頼まれたら、断るに断れない。
「いいよ」
気が付いたときには引き受けていた。
「やったー!場所は水族館がいいな!約束だよ!じゃあ、また後でね」
ケイコは私を追い越して講義棟へと走り去った。
「……はぁ」
ああ、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
私はため息を吐きながら、トボトボとラウンジへ向かった。
……。
…………。
これが昨日の話。
そして今、私は幼馴染の鉄朗の部屋で彼に向かって土下座をしている。
「ふーん。●●って彼氏いたんだ。しかもかなりハイスペックな男」
「それが大嘘でして……。見栄を張って、大学ではそんな彼氏がいる
「だろうな。そんなやつの話、一度も聞いたことないし」
目の前の鉄朗は、頬杖をつきながら、口元に意地の悪い笑みを浮かべている。
その口調からは、私を小馬鹿にする意図がうかがえる。
だけど、今日は鉄朗にお願いがって来ているため、刃向かうことは言えない。
「で、俺にその彼氏の振りをして欲しい、と」
「はい、おっしゃる通りです。理解が早くて助かります」
「まあ、確かに俺は背が高くてイケメンで優しくて誠実だけど?」
自分で言うなんて、と思ってしまったけれど否定できない。
「そんな面倒なこと引き受けるワケないじゃん」
鉄朗は考える素振りもなく一蹴りした。
だけど、ここで引き下がるワケにはいかない。
私は藁にすがる思いで頼み込んだ。
「じゃあ、鉄朗の大学のレポート、私が代わりにやるから!」
しかし、頭上からは無慈悲な言葉が降ってくる。
「俺より頭の悪い●●にできるのか?」
「ぐっ……」
確かに、鉄朗は頭が良い。
なんだったら、昔から彼に勉強を教えてもらっていた。
それならば、次の手段だ。
「じゃあ、焼肉奢る!」
「俺は肉より魚派だ」
「そうでした」
次の手段は呆気なく終わった。
他に何かないか。
鉄朗が引き受けてくれそうな条件は。
「えーと、んーと」
「ほらどうした?もうないのか?」
「……あ!10年くらい前、小学生の時に鉄朗が縄跳び忘れたことあったじゃん?体育の先生が怖いからどうしようって半泣きだった鉄朗に縄跳び貸した借りが残ってるよ!」
「いつの話だよ。んなもん、無効だ!無効」
「うっ……」
ここまでか……。
諦めかけたとき、鉄朗は大きくため息を吐いた。
「はぁ〜……。今回だけだからな。借り1つ」
「ほ、本当?!」
「ああ」
「うわー!鉄朗大好き!」
私は思いっきり鉄朗に抱き着いた。
久しぶりに触れる鉄朗は、なんだか私の知っているあの頃の彼じゃない気がしたけれど、今はそんなことどうでもいい。
さすが持つべきものは幼馴染。
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