マグロの呪い
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「お邪魔します」
久しぶりに足を踏み入れた鉄朗の家。
ワンルームな簡素な間取りは、相変わらず生活感に溢れていた。
「おう、適当に寛いで」
鉄朗は慣れた様子でキッチンに向かう。
私は取りあえず、ベッドにもたれかかる形で床に座った。
「グラス1つしかないから、●●が使って」
「ありがとう」
鉄朗は、グラスと先ほど道中で買ったコンビニお酒の缶、つまみをローテーブルに並べた。
1つしかないグラス。
ここに引っ越しをしてから彼女がいなかったのか、それとも彼女も缶を直飲みするタイプなのか、はたまたグラスを割って今は1つしかないのか。
変に詮索してしまう自分がいた。
私はグラスに缶ビールを注ぎ、それを口に含む。
……あれ?今日はシラフで話したいと思っていたのに。
まあ、いいか。
鉄朗は私の向かいに座り、缶ビールを直に飲むと、真っ直ぐな目で私を見た。
「話の続きなんだけどさ、俺は●●と本気でセフレになりたいって思っているよ」
静かな部屋に、彼の低い声が響く。
「サイテー」
私は思わずそう言ってしまった。
だけど、鉄朗は動じない。
「まあ、最後まで話を聞いてくださいな。これは、寂しいときに俺を利用して良いって言う俺なりの気遣いなの。昨日みたいに愚痴を聞くだけでも良いし、必要ならば抱き締めるし」
私にとっては都合の良い存在。
だけど、1つの疑問が浮かぶ。
「それをして、鉄朗に何のメリットがあるのよ」
「メリット、デメリットの話じゃないんだけどなー」
そう言いながら、鉄朗はグイッと缶ビールを飲んだ。
「それに、マグロを克服したいんだろ?」
痛いところを突いてくる。
「うん……」
「それではここで問題。セックスするのに大切なことってなんだと思う?」
いきなりなんなのよ。そんなの、
「テクニック……とか?」
「ぶーぶーハズレ、正解は相手を思いやる気持ち。だから、俺は無理やりお前を抱かない。だけど、それ以外はする」
「それ以外……」
マグロと言われている段階でテクニックがないのは明確だけど、思いやりの気持ち……。
私や元カレにはそれがあっただろうか。
鉄朗は空いた缶をテーブルに置いた。
「試しにハグからするか?」
なにもしていないとは言え、全裸で同じベッドに寝たことを考えれば、ハグなんて大したことがないように思える。
どうぞ、と腕を広げている鉄朗の中に私は恐る恐る入った。
「どうだ?怖いか?」
彼のTシャツの柔らかさと、肌の温もりが私を包む。
「温かい……」
「そりゃ、生きてますから」
彼の言葉に、少しだけ笑みがこぼれた。
ハグなんてしたのが遠い昔のようだ。
元カレとは行為はあっても、ただ抱き締め合うだけの時間は、付き合いが長くなるにつれなくなっていた。
彼の腕の中で数秒が過ぎ、鉄朗はそっと体を離した。
「次、キスするか?」
鉄朗とのキス……。
どんなキスをするんだろう。
「うん……」
私の小さな返事を合図するように、鉄朗は私の唇をはみはみと甘噛をしてきた。
遊びのようなキス。
いきなり激しくはしない、彼なりの優しさなのだろうか。
気が済んだのか、その後にちゅっちゅっと小鳥のようなキスからの口をこじ開けて、歯をなぞるように口内を犯す。
「んっ………ふ………ぁ」
エスカレートしていく鉄朗の行為に、頭が警告音を鳴らす。
でも、どうして止めないといけないのか。
お互い恋人がいるわけでもないし、誰にも迷惑なんてかけていない。
「俺の舌、追いかけてたまに吸って」
働かない頭で、鉄朗の言葉だけが素直に耳に入ってくる。
言われたとおり、私も少しだけ舌を動かした。
だけと、流れで私の服に手を掛けた鉄朗に、反射的に拒絶してしまった。
「嫌っ!」
元カレに「マグロ」だと言われた記憶がフラッシュバックした。
「おーけ、おーけ。キスまでね。もうしないから」
鉄朗はすぐに両手を上げ、私から身を引いた。
「今日はもう帰る」
「送ってく」
「いい。片付けしなくてごめん」
そう言い残し、私は荷物をまとめて逃げるように鉄朗の家を後にした。
久しぶりに足を踏み入れた鉄朗の家。
ワンルームな簡素な間取りは、相変わらず生活感に溢れていた。
「おう、適当に寛いで」
鉄朗は慣れた様子でキッチンに向かう。
私は取りあえず、ベッドにもたれかかる形で床に座った。
「グラス1つしかないから、●●が使って」
「ありがとう」
鉄朗は、グラスと先ほど道中で買ったコンビニお酒の缶、つまみをローテーブルに並べた。
1つしかないグラス。
ここに引っ越しをしてから彼女がいなかったのか、それとも彼女も缶を直飲みするタイプなのか、はたまたグラスを割って今は1つしかないのか。
変に詮索してしまう自分がいた。
私はグラスに缶ビールを注ぎ、それを口に含む。
……あれ?今日はシラフで話したいと思っていたのに。
まあ、いいか。
鉄朗は私の向かいに座り、缶ビールを直に飲むと、真っ直ぐな目で私を見た。
「話の続きなんだけどさ、俺は●●と本気でセフレになりたいって思っているよ」
静かな部屋に、彼の低い声が響く。
「サイテー」
私は思わずそう言ってしまった。
だけど、鉄朗は動じない。
「まあ、最後まで話を聞いてくださいな。これは、寂しいときに俺を利用して良いって言う俺なりの気遣いなの。昨日みたいに愚痴を聞くだけでも良いし、必要ならば抱き締めるし」
私にとっては都合の良い存在。
だけど、1つの疑問が浮かぶ。
「それをして、鉄朗に何のメリットがあるのよ」
「メリット、デメリットの話じゃないんだけどなー」
そう言いながら、鉄朗はグイッと缶ビールを飲んだ。
「それに、マグロを克服したいんだろ?」
痛いところを突いてくる。
「うん……」
「それではここで問題。セックスするのに大切なことってなんだと思う?」
いきなりなんなのよ。そんなの、
「テクニック……とか?」
「ぶーぶーハズレ、正解は相手を思いやる気持ち。だから、俺は無理やりお前を抱かない。だけど、それ以外はする」
「それ以外……」
マグロと言われている段階でテクニックがないのは明確だけど、思いやりの気持ち……。
私や元カレにはそれがあっただろうか。
鉄朗は空いた缶をテーブルに置いた。
「試しにハグからするか?」
なにもしていないとは言え、全裸で同じベッドに寝たことを考えれば、ハグなんて大したことがないように思える。
どうぞ、と腕を広げている鉄朗の中に私は恐る恐る入った。
「どうだ?怖いか?」
彼のTシャツの柔らかさと、肌の温もりが私を包む。
「温かい……」
「そりゃ、生きてますから」
彼の言葉に、少しだけ笑みがこぼれた。
ハグなんてしたのが遠い昔のようだ。
元カレとは行為はあっても、ただ抱き締め合うだけの時間は、付き合いが長くなるにつれなくなっていた。
彼の腕の中で数秒が過ぎ、鉄朗はそっと体を離した。
「次、キスするか?」
鉄朗とのキス……。
どんなキスをするんだろう。
「うん……」
私の小さな返事を合図するように、鉄朗は私の唇をはみはみと甘噛をしてきた。
遊びのようなキス。
いきなり激しくはしない、彼なりの優しさなのだろうか。
気が済んだのか、その後にちゅっちゅっと小鳥のようなキスからの口をこじ開けて、歯をなぞるように口内を犯す。
「んっ………ふ………ぁ」
エスカレートしていく鉄朗の行為に、頭が警告音を鳴らす。
でも、どうして止めないといけないのか。
お互い恋人がいるわけでもないし、誰にも迷惑なんてかけていない。
「俺の舌、追いかけてたまに吸って」
働かない頭で、鉄朗の言葉だけが素直に耳に入ってくる。
言われたとおり、私も少しだけ舌を動かした。
だけと、流れで私の服に手を掛けた鉄朗に、反射的に拒絶してしまった。
「嫌っ!」
元カレに「マグロ」だと言われた記憶がフラッシュバックした。
「おーけ、おーけ。キスまでね。もうしないから」
鉄朗はすぐに両手を上げ、私から身を引いた。
「今日はもう帰る」
「送ってく」
「いい。片付けしなくてごめん」
そう言い残し、私は荷物をまとめて逃げるように鉄朗の家を後にした。
