マグロの呪い
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鉄朗とシたのかの真偽は分からずじまい。
仮にしたとして、鉄朗も戻カレと同じように私のことをマグロだって思ったのだろうか。
それとも、お互い酔っていたから仕方がない、と割り切っていたのか。
そんなことを考えているからか、仕事が手に付かない。
「◯◯さん、ここミスしてたよ」
同僚から声をかけられ、思わずビクッと肩が震える。
普段しないような初歩的なミスをするなんて。
「すみません、すぐに直します」
このままではダメだ。
切り替えないと。
私はプライベートのスマホを操作して鉄朗に一通のメッセージを送った。
“今晩改めて話をしませんか”
と言う内容。
「よしっ」
スマホの電源を切り、それをデスクの引き出しに仕舞い込んだ。
そして、仕事に集中した。
ーーーー
終業時間になり、スマホの電源を付けると鉄朗から返事が来ていた。
“いつもの居酒屋で待っている”
短いけれど、私には伝わる。
ただ、昨日の今日だから今日はシラフで話したかった。
だけど、時間的に飲んでいるかもしれない。
覚悟を決めて、大人しく指定された居酒屋へと向かった。
……。
…………。
店の扉を開けると、一気に騒がしくなった。
揚げ物とアルコールの混ざった匂いが充満している。
「いらっしゃいませ」
「連れがいるんですけど……」
店内を見渡すと、カウンター席の一番奥に、見慣れたスーツ姿の鉄朗を見つけた。
「おーい、こっちこっち」
呂律の回っていないような声を上げて手を振る。
やっぱり、既に飲んでいた。
店員さんにペコリと頭を下げてから、鉄朗の隣の席に座った。
「話ってなんだよ」
鉄朗はグラスを傾けながら、軽い調子で尋ねる。
「その前に……すみません、烏龍茶下さい」
店員さんに飲み物を注文した。
今日は絶対に飲まない。
「飲まないのか」
「昨日の今日だしね」
「ふーん」
鉄朗は特に追求もせず、酒を口にした。
しばらくして、烏龍茶と鉄朗が頼んでいた肴が揃った。
そろそろ本題に入ってもいいだろう。
「その……さ、昨日振られた理由、話したじゃん」
「おう、マグロはつまらねぇってヤツだろ?」
「うん。それで………」
私は鉄朗に耳打ちするように身体を乗り出した。
「私ってやっぱりマグロだった?」
それは、今朝からずっと胸に引っ掛かっていた疑問だった。
「なんだ、そんなこと」
回りに聞こえないように小声で伝えたのにも関わらず、鉄朗は大胆に笑ってきた。
「笑わないでよ、こっちは真剣なんだから」
「悪い、悪い。ふざけすぎた」
鉄朗は笑いを止め、少しだけ真面目な顔に戻る。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「昨日は何もなかったよ」
「……へ?」
私の頭は、一瞬だけフリーズした。
「俺だって、意識のないやつ襲うほど落ちぶれてないってーの」
そう言って、彼は豪快にお通しの冷奴を掻き込む。
「じゃあ、なんでお互いあんな格好だったのよ」
ホテルでのあの光景は、どう説明するのだ。
「本当に覚えてないのな。●●は自分から暑いって脱いだんだよ。ちなみに、俺は普段からあの格好で寝てる」
良かったのか、良くなかったのか。
ひとまず、致していないことに安心した。
だけど、同時に腑に落ちない気持ちも残る。
意識があれば致していたの?
セフレにならないかって言うのも、冗談じゃなかった?
「まあ、ここじゃ大広げな話できないから、それ食べたら家で飲み直すぞ」
鉄朗はそう言って、残っていた冷奴を平らげた後、伝票を持ってレジへ向かった。
「先に出て待ってろ」
お金を渡すタイミングを逃してしまった。
昨日のホテル代だって、気が付いたら鉄朗が払っていた。
ガラガラと扉を開けてお店から出てきた鉄朗。
「ごめん、お金……」
「いいって、俺がほとんど飲み食いしたし。それよりコンビニ行くぞ」
鉄朗は私の肩を軽く叩き、先を歩く。
「あ、待ってよ」
私は、そんな彼に置いていかれないよう、後を追いかけた。
仮にしたとして、鉄朗も戻カレと同じように私のことをマグロだって思ったのだろうか。
それとも、お互い酔っていたから仕方がない、と割り切っていたのか。
そんなことを考えているからか、仕事が手に付かない。
「◯◯さん、ここミスしてたよ」
同僚から声をかけられ、思わずビクッと肩が震える。
普段しないような初歩的なミスをするなんて。
「すみません、すぐに直します」
このままではダメだ。
切り替えないと。
私はプライベートのスマホを操作して鉄朗に一通のメッセージを送った。
“今晩改めて話をしませんか”
と言う内容。
「よしっ」
スマホの電源を切り、それをデスクの引き出しに仕舞い込んだ。
そして、仕事に集中した。
ーーーー
終業時間になり、スマホの電源を付けると鉄朗から返事が来ていた。
“いつもの居酒屋で待っている”
短いけれど、私には伝わる。
ただ、昨日の今日だから今日はシラフで話したかった。
だけど、時間的に飲んでいるかもしれない。
覚悟を決めて、大人しく指定された居酒屋へと向かった。
……。
…………。
店の扉を開けると、一気に騒がしくなった。
揚げ物とアルコールの混ざった匂いが充満している。
「いらっしゃいませ」
「連れがいるんですけど……」
店内を見渡すと、カウンター席の一番奥に、見慣れたスーツ姿の鉄朗を見つけた。
「おーい、こっちこっち」
呂律の回っていないような声を上げて手を振る。
やっぱり、既に飲んでいた。
店員さんにペコリと頭を下げてから、鉄朗の隣の席に座った。
「話ってなんだよ」
鉄朗はグラスを傾けながら、軽い調子で尋ねる。
「その前に……すみません、烏龍茶下さい」
店員さんに飲み物を注文した。
今日は絶対に飲まない。
「飲まないのか」
「昨日の今日だしね」
「ふーん」
鉄朗は特に追求もせず、酒を口にした。
しばらくして、烏龍茶と鉄朗が頼んでいた肴が揃った。
そろそろ本題に入ってもいいだろう。
「その……さ、昨日振られた理由、話したじゃん」
「おう、マグロはつまらねぇってヤツだろ?」
「うん。それで………」
私は鉄朗に耳打ちするように身体を乗り出した。
「私ってやっぱりマグロだった?」
それは、今朝からずっと胸に引っ掛かっていた疑問だった。
「なんだ、そんなこと」
回りに聞こえないように小声で伝えたのにも関わらず、鉄朗は大胆に笑ってきた。
「笑わないでよ、こっちは真剣なんだから」
「悪い、悪い。ふざけすぎた」
鉄朗は笑いを止め、少しだけ真面目な顔に戻る。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「昨日は何もなかったよ」
「……へ?」
私の頭は、一瞬だけフリーズした。
「俺だって、意識のないやつ襲うほど落ちぶれてないってーの」
そう言って、彼は豪快にお通しの冷奴を掻き込む。
「じゃあ、なんでお互いあんな格好だったのよ」
ホテルでのあの光景は、どう説明するのだ。
「本当に覚えてないのな。●●は自分から暑いって脱いだんだよ。ちなみに、俺は普段からあの格好で寝てる」
良かったのか、良くなかったのか。
ひとまず、致していないことに安心した。
だけど、同時に腑に落ちない気持ちも残る。
意識があれば致していたの?
セフレにならないかって言うのも、冗談じゃなかった?
「まあ、ここじゃ大広げな話できないから、それ食べたら家で飲み直すぞ」
鉄朗はそう言って、残っていた冷奴を平らげた後、伝票を持ってレジへ向かった。
「先に出て待ってろ」
お金を渡すタイミングを逃してしまった。
昨日のホテル代だって、気が付いたら鉄朗が払っていた。
ガラガラと扉を開けてお店から出てきた鉄朗。
「ごめん、お金……」
「いいって、俺がほとんど飲み食いしたし。それよりコンビニ行くぞ」
鉄朗は私の肩を軽く叩き、先を歩く。
「あ、待ってよ」
私は、そんな彼に置いていかれないよう、後を追いかけた。
