付き合う理由は可哀想だから
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昨日のことを悶々と考えていたせいで、すっかり寝不足。
目の下にうっすらとクマができていて、鏡を見るたびに憂鬱になった。
重い足取りで教室の扉を開けると、窓から嫌味なほど眩しい朝の光が私を照らす。
その窓から逃げるように視線を逸らすと、鉄朗と目が合った。
彼はいつものように気怠げに頬杖をついている。
「おはよ……」
掠れた声で挨拶をすると、鉄朗はわずかに眉をひそめた。
「どうした、元気ないな。昨日彼氏に会って来たんじゃないのか」
「てつろぉ~」
情けない声が自分でも驚くほど喉から漏れ出た。
鉄朗は一瞬、きょとんとした後、少し戸惑ったように目を泳がせる。
そんなに戸惑わなくてもいいのに。
それでも、いつもの彼らしく、私の肩にかけていた鞄をそっと剥ぎ取り、机の上に置いた。
それはまるで、話を聞く態勢を整えてくれたようで、少しだけ心が温かくなる。
「んで、どうした?」
「実はね────」
なんだかんだ話を聞いてくれる鉄朗の優しさが嬉しかった。
私は彼に、昨日の出来事を全て話した。
「なるほどね。限りなく黒に近いグレーだな、それは」
話を終えると、鉄朗は顎に手をやって、まるで探偵のように思案するポーズを取った。
その様子に、少しだけ腹が立つ。
「面白がっていない?」
「そりゃあ他人事だからな。だからいつも言ってるだろ?俺にしておけって」
皮肉っぽく笑う彼の言葉に、私はすぐに反論した。
「好きって思ってくれる人とじゃないと嫌だもん」
「その好きって思ってくれる相手がグレーなことしてんだから、考え直した方がいいと思うけどな」
ぐうの音も出なかった。
正論だ。
でも、鉄朗の言葉に反発するように、私は自分に言い聞かせる。
彼女である私が信じなくて、どうする。
きっと、プリントを届けてくれたのは単なるクラスメイトで、彼のことを一方的に慕っている子に違いない。
それか、男子だって、丸文字を書く人だっている。
そもそも、彼が「先生が届けてくれた」と言ったのも、高熱で朦朧としていたせいで記憶違いだったのかもしれない。
そう、そうに決まっている。
だけど、もし、今日もお見舞いに行って、その人と鉢合わせしたら?
もし、それが私よりもずっと可愛くて、守ってあげたくなるような女の子だったら?
嫌な想像が頭の中を駆け巡る。
そんな不安に囚われて、私はその日、彼のお見舞いに行けなかった。
それからの私は、彼に会いに行くのを控えて、メッセージアプリでのやり取りしかしなくなった。
ただただ画面とにらめっこする日々が続くばかり。
