付き合う理由は可哀想だから
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「今日もこれから例の彼氏のところへ行くのか?」
授業が終わり、帰り支度をしていると、後ろから聞き慣れた声が飛んできた。
振り返ると、ニヤニヤとからかうような笑みを浮かべた鉄朗が、手に持った部活の運動着の入った袋を揺らしている。
「そうだけど」
「本当に懲りないな」
彼の言葉に少しだけ胸がチクリとする。
病気で弱っている彼氏のところへ様子を見に行くのは、普通のことじゃないの?
放っておいたら、また寂しさから別れよう、なんて言い出すかもしれない。
そんな不安が頭をよぎる。
「鉄朗はこれから部活?」
「おう」
彼はそう言って、袋を少しだけ持ち上げた。
「明日も愚痴報告待ってる」
「その期待には答えられないかもね」
「だといいな」
教室のドアをくぐって行く鉄朗の背中に、私は見えないようにベーっと舌を出してやった。
さて、お見舞いに行く前に、ショウの好きなデザートでも買って行こうかな。
気分を立て直すように、私は軽く足取りを進めた。
……。
…………。
ピンポーン
呼び鈴を鳴らすと、少し間が空いてから、弱々しい声がインターフォン越しに聞こえた。
“……はい”
「私、●●だよ」
“鍵空いてるから入ってきて”
ドアに手を掛けると、言われた通り鍵が空いていた。
家に誰もいないのだろうか。
不用心だと思いながらも、私は静かな廊下を通ってショウの部屋へと足を踏み入れた。
「体調どう?プリンとスポドリ買ってきたよ」
私はそう言って、彼のベッドへと近付く。
ショウは横になっていたけど、スマホを弄っていて、私とは目を合わせてくれない。
それでも、別に構わないと思った。
スマホを触る元気があるなら、それだけ体調が良いってことだから。
「机に置いておくね」
「……」
返事はなかったけれど、買ってきた品を彼のサイドテーブルに置いた。
その時、ふと机に置かれた、とあるものに目が行った。
「ねえ、今日って私以外にも誰か来た?」
自分の声が、思ったよりも震えて聞こえる。
「は?なんで?」
ようやく私に視線を合わせてくれたショウは、驚くほど不機嫌そうな顔をしていた。
その表情に、私の胸は嫌な予感でいっぱいになる。
「机に今日の日付のプリントが置いてあるから」
「あー……先生が持ってきてくれた」
ショウは安堵したように言った。
だけど、言葉を聞いた瞬間、私の心臓は冷たくなった気がした。
だって、プリントの端に、“早く元気になってね”と、愛らしい丸文字が書かれていたから。
おまけに、その語尾に小さなハートマークが添えられている。
先生がそんなことを書くはずがない。
素直にクラスメイトだとでも言っていれば、冗談で書いたのかな、で済んだかもしれない。
それなのに、彼は嘘を吐いた。
本当は問い詰めたかった。
だけど、その気持ちを抑え込み、
「そっか……。じゃあ、風邪移るといけないし、もう帰るね!」
私は反射的にそう言って、足早に彼の部屋を出た。
重い扉が閉まる音。
そして、静まり返った廊下。
どうして嘘をついたんだろう。
思い返せば、プリントのことを聞いたときも、様子がおかしかった。
ねえ、プリントを届けてくれたのは誰?
スマホで何を見ていたの?
その子とやり取りをしていたの?
明日、また鉄朗にからかわれるんだろうな。
そんなことを考えると、涙が出そうになる。
あんなに行きは軽い足取りだったのに、同じ足なのかと疑うくらいに今は重かった。
授業が終わり、帰り支度をしていると、後ろから聞き慣れた声が飛んできた。
振り返ると、ニヤニヤとからかうような笑みを浮かべた鉄朗が、手に持った部活の運動着の入った袋を揺らしている。
「そうだけど」
「本当に懲りないな」
彼の言葉に少しだけ胸がチクリとする。
病気で弱っている彼氏のところへ様子を見に行くのは、普通のことじゃないの?
放っておいたら、また寂しさから別れよう、なんて言い出すかもしれない。
そんな不安が頭をよぎる。
「鉄朗はこれから部活?」
「おう」
彼はそう言って、袋を少しだけ持ち上げた。
「明日も愚痴報告待ってる」
「その期待には答えられないかもね」
「だといいな」
教室のドアをくぐって行く鉄朗の背中に、私は見えないようにベーっと舌を出してやった。
さて、お見舞いに行く前に、ショウの好きなデザートでも買って行こうかな。
気分を立て直すように、私は軽く足取りを進めた。
……。
…………。
ピンポーン
呼び鈴を鳴らすと、少し間が空いてから、弱々しい声がインターフォン越しに聞こえた。
“……はい”
「私、●●だよ」
“鍵空いてるから入ってきて”
ドアに手を掛けると、言われた通り鍵が空いていた。
家に誰もいないのだろうか。
不用心だと思いながらも、私は静かな廊下を通ってショウの部屋へと足を踏み入れた。
「体調どう?プリンとスポドリ買ってきたよ」
私はそう言って、彼のベッドへと近付く。
ショウは横になっていたけど、スマホを弄っていて、私とは目を合わせてくれない。
それでも、別に構わないと思った。
スマホを触る元気があるなら、それだけ体調が良いってことだから。
「机に置いておくね」
「……」
返事はなかったけれど、買ってきた品を彼のサイドテーブルに置いた。
その時、ふと机に置かれた、とあるものに目が行った。
「ねえ、今日って私以外にも誰か来た?」
自分の声が、思ったよりも震えて聞こえる。
「は?なんで?」
ようやく私に視線を合わせてくれたショウは、驚くほど不機嫌そうな顔をしていた。
その表情に、私の胸は嫌な予感でいっぱいになる。
「机に今日の日付のプリントが置いてあるから」
「あー……先生が持ってきてくれた」
ショウは安堵したように言った。
だけど、言葉を聞いた瞬間、私の心臓は冷たくなった気がした。
だって、プリントの端に、“早く元気になってね”と、愛らしい丸文字が書かれていたから。
おまけに、その語尾に小さなハートマークが添えられている。
先生がそんなことを書くはずがない。
素直にクラスメイトだとでも言っていれば、冗談で書いたのかな、で済んだかもしれない。
それなのに、彼は嘘を吐いた。
本当は問い詰めたかった。
だけど、その気持ちを抑え込み、
「そっか……。じゃあ、風邪移るといけないし、もう帰るね!」
私は反射的にそう言って、足早に彼の部屋を出た。
重い扉が閉まる音。
そして、静まり返った廊下。
どうして嘘をついたんだろう。
思い返せば、プリントのことを聞いたときも、様子がおかしかった。
ねえ、プリントを届けてくれたのは誰?
スマホで何を見ていたの?
その子とやり取りをしていたの?
明日、また鉄朗にからかわれるんだろうな。
そんなことを考えると、涙が出そうになる。
あんなに行きは軽い足取りだったのに、同じ足なのかと疑うくらいに今は重かった。
