付き合う理由は可哀想だから
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~付き合う理由は可哀想だから~
学校に着いて早々、私はお目当ての人物を探した。
ツンツンと跳ねた寝癖に、片目が隠れるほど伸びた前髪の彼。
その彼は自分の席で眠そうな目を擦りながら座っていた。
「ねぇ、鉄朗聞いてよ〜!」
私の声に、鉄朗はうんざりしたようにため息を吐く。
「またかよ」
彼の反応もいつものこと。
私は彼氏であるショウの愚痴を聞いてもらうために、ほとんど毎日鉄朗の元を訪れている。
「今度は風邪のせいだって!弱気になっちゃったから、もう別れよう、だってさ。ありえないでしょ?」
「ハハッ、この前は原付の試験に落ちたから、だっけ?」
からかうように笑う鉄朗に、私は不満げに口を尖らせる。
「そうそう!本当にすぐ別れようって言うんだもん。なんなのもう!」
私の彼氏はとにかくネガティブで、何かにつけては“別れよう”と口にする。
その度に、私の心は振り回され、ぐったりと疲れてしまう。
「本当に別れればいいのに。そんなやつと付き合ってて、疲れないのか?」
「疲れるけど、放っておけないのよね。私がついててあげないと、って思っちゃうんだもん」
そう、私がついててあげないと。
そう思うと、どんなに疲れても彼を突き放すことができない。
「いっそのこと、俺と付き合えば?」
私の愚痴に付き合っては、いつものように鉄朗はそう言う。
冗談だって分かっている。
「部活忙しくて、構ってくれないじゃん」
「クラスが同じ俺の方が、一緒にいる時間は長いぞ?」
確かに間違いではない。
同じクラスの鉄朗は、他校に通う彼氏よりもよっぽど身近な存在だ。
だけど……。
「鉄朗って、いつも俺と付き合った方がいいって言うけど、別に私のこと好きじゃないでしょ」
私の問いに、彼は一瞬だけ目を見開いてから、いつもの意地悪な笑みを浮かべる。
「まぁ、正直に言うと、そうかな。なんか、お前を見てると……可哀想に思えて」
その瞬間、ざわりと胸の奥から不快な感情が湧き上がってくる。
「……なにそれ」
可哀想だから付き合う?
そんなの、愛でもなんでもない。
そんな感情で付き合うくらいなら、誰とも付き合わない方が、よっぽどマシだ。
私の存在を、ただの“可哀想なもの”として見られているようで、羞恥と怒りが込み上げてくる。
「好きって感情はなくても、●●の彼氏よりは幸せにする自信はあるぜ?」
鉄朗の声が、遠くに聞こえる。
幸せにするのに、“好き”という感情は必要ないの?
そんなのおかしい。
鉄朗はまるで、人の心の隙につけ込む詐欺師みたいだ。
「………」
鉄朗の言葉に反論したいのに、愚痴を聞いてもらっている手前、何も言い返せない。
その時、ガラガラと大きな音を立てて教室の扉が開いた。
「席に着けー!」
担任の先生の声が、教室に響き渡る。
まるで、この重苦しい空気を打ち破るかのように、絶妙なタイミングで。
「……席、戻るね」
そう言って、私は鉄朗から逃げるように自分の席へ向かった。
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