迷子の迷子の小悪魔ちゃん
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数日後。
「彼氏を●●に紹介したい!」というリンの猛烈な押しに負けて、私は人間界へと足を運んでいた。
移動中、聞いてもいないのにリンは彼氏の魅力について熱く語ってきた。
彼女にとっては白馬に乗った王子様なのかもしれないけれど、私にとってはそこら辺にいる人間とさほど変わらない。
適当に聞き流しながら、街並みを歩く。
「ちょっと分かりにくいけど、この廃屋の中を通ると近道なんだよ。付いてきて!」
「はいはい、分かったから」
いかにも彼女らしい、横着な考えだった。
私はリンの背中を追って、建物の中へと入った。
だけど、角を曲がった瞬間に冷たい風が吹き抜け、気が付けば側にいたはずのリンの気配が消えていた。
「……リン?」
返事はない。
「……あ、この部屋に入ったのかな?リンったら、言ってくれればいいのに」
私は直ぐ側の扉を開けた。
だけど、部屋の中はボロボロの外観にそぐわないくらいの、小綺麗な部屋だった。
その部屋の反対側にも別の扉がある。
「この先かな……?」
私は何も疑うことなく、奥の扉に手をかけた。
扉の向こうは、赤を基調とした立派な廊下が広がっていた。
おまけに、中央の吹き抜けには見たこともない立派な大樹がそびえ立つ。
「どこ……ここ……」
不安と困惑が混ざり合う。
私はあてもなく歩き回ったけれど、リンどころか出口さえ見つからなかった。
心細さが限界に達しようとしたその時、頭上から低い声が降ってきた。
「おい。見かけない顔だが、こんなところで何してる?」
「っ、あ……ちょっと迷子に……」
振り返りざまに答えると同時に、私は息を呑んだ。
そこにいたのは、制服を着た2人組の少年。
1人は小動物のように愛らしい小柄な子。
そしてもう1人は、金髪で、背が高くて、鋭く光る青い瞳。
髪の色が違う。
雰囲気も、記憶よりずっと大人っぽくなっている。
だけど、秘密を暴く力を持つ悪魔『シトリー』である私には、間違いなく彼だと分かった。
あの日、高天原で迷子になった私を助けてくれたスサノオノミコト君。
懐かしさと衝撃で叫び出したい衝動を、どうにか抑え込む。
ここでいきなり正体を問い詰めるのは得策ではない。
私は乱れる呼吸を整え、できるだけ平然を装って声を絞り出した。
「あの……どこかで会ったことない?例えば、高天原とか」
「……は?」
彼は露骨に嫌そうな顔をした。
「もしかして、スサノオノ……」
「俺は妖怪『疫病神』の佐野命だ」
私の言葉を遮るように、彼は冷たく言い放った。
「そんなヤツは知らねぇし、高天原なんて所も聞いたことねぇ。迷子なら案内してやるから、それ以上喋るな」
突き放すような冷たい声。
私の思い出の中にいる彼は、もっと柔らかいオーラを纏っていたはず。
……神様違いだったのだろうか。
いや、私の悪魔の力が彼だと言っている。
「豆、俺、コイツ送ってくから、先に教室行ってて」
「うん、分かった!佐野君、あんまり怖がらせちゃダメだよ?」
「ああ……」
豆と呼ばれた少年が心配そうに手を振りながら去っていく。
残されたのは、私と、冷たい眼差しを向ける佐野命。
「ジロジロ見んな。……付いてこいよ」
「あ、うん……」
ぶっきらぼうに背を向けた彼を追って歩き出す。
背中から伝わる威圧感に気圧され、しばらくは沈黙を守っていたけれど、どうしても黙っていられなかった。
「ねえ、聞きたいことがあるんだけど」
「……喋るなって言っただろ」
「じゃあ、これは独り言。……なんで、神様のアナタが妖怪と一緒にいるの?」
「……は?」
ピタリと彼の足が止まった。
ゆっくりと振り返ったミコト君の瞳には、あからさまな苛立ちを帯びている。
「私には秘密を暴く悪魔の力があるの。一緒にいたあの子、妖怪でしょ?」
「だったら何だよ。そういうお前だって、悪魔のクセにこんなところをうろついて……」
「私は本当にただの迷子よ」
「はっ……どうだかな」
案内された扉の前で、彼は顎で先を促した。
「ほら、この扉をくぐれば元の場所に帰れる。二度とここに迷い込んでくるな」
「あ、ありがとう……」
背を向けて去っていく後ろ姿を見送りながら、私は小さく息を吐いた。
力を使った瞬間に、悟ってしまった。
彼は本当に、私のことを覚えていないのだと。
今は佐野命として、生きているのかもしれない。
だけど、私は諦めない。
「待ってて。……絶対に、思い出させてみせるんだから」
思い出の人との再会に、私の胸は少しだけ高鳴った。
「彼氏を●●に紹介したい!」というリンの猛烈な押しに負けて、私は人間界へと足を運んでいた。
移動中、聞いてもいないのにリンは彼氏の魅力について熱く語ってきた。
彼女にとっては白馬に乗った王子様なのかもしれないけれど、私にとってはそこら辺にいる人間とさほど変わらない。
適当に聞き流しながら、街並みを歩く。
「ちょっと分かりにくいけど、この廃屋の中を通ると近道なんだよ。付いてきて!」
「はいはい、分かったから」
いかにも彼女らしい、横着な考えだった。
私はリンの背中を追って、建物の中へと入った。
だけど、角を曲がった瞬間に冷たい風が吹き抜け、気が付けば側にいたはずのリンの気配が消えていた。
「……リン?」
返事はない。
「……あ、この部屋に入ったのかな?リンったら、言ってくれればいいのに」
私は直ぐ側の扉を開けた。
だけど、部屋の中はボロボロの外観にそぐわないくらいの、小綺麗な部屋だった。
その部屋の反対側にも別の扉がある。
「この先かな……?」
私は何も疑うことなく、奥の扉に手をかけた。
扉の向こうは、赤を基調とした立派な廊下が広がっていた。
おまけに、中央の吹き抜けには見たこともない立派な大樹がそびえ立つ。
「どこ……ここ……」
不安と困惑が混ざり合う。
私はあてもなく歩き回ったけれど、リンどころか出口さえ見つからなかった。
心細さが限界に達しようとしたその時、頭上から低い声が降ってきた。
「おい。見かけない顔だが、こんなところで何してる?」
「っ、あ……ちょっと迷子に……」
振り返りざまに答えると同時に、私は息を呑んだ。
そこにいたのは、制服を着た2人組の少年。
1人は小動物のように愛らしい小柄な子。
そしてもう1人は、金髪で、背が高くて、鋭く光る青い瞳。
髪の色が違う。
雰囲気も、記憶よりずっと大人っぽくなっている。
だけど、秘密を暴く力を持つ悪魔『シトリー』である私には、間違いなく彼だと分かった。
あの日、高天原で迷子になった私を助けてくれたスサノオノミコト君。
懐かしさと衝撃で叫び出したい衝動を、どうにか抑え込む。
ここでいきなり正体を問い詰めるのは得策ではない。
私は乱れる呼吸を整え、できるだけ平然を装って声を絞り出した。
「あの……どこかで会ったことない?例えば、高天原とか」
「……は?」
彼は露骨に嫌そうな顔をした。
「もしかして、スサノオノ……」
「俺は妖怪『疫病神』の佐野命だ」
私の言葉を遮るように、彼は冷たく言い放った。
「そんなヤツは知らねぇし、高天原なんて所も聞いたことねぇ。迷子なら案内してやるから、それ以上喋るな」
突き放すような冷たい声。
私の思い出の中にいる彼は、もっと柔らかいオーラを纏っていたはず。
……神様違いだったのだろうか。
いや、私の悪魔の力が彼だと言っている。
「豆、俺、コイツ送ってくから、先に教室行ってて」
「うん、分かった!佐野君、あんまり怖がらせちゃダメだよ?」
「ああ……」
豆と呼ばれた少年が心配そうに手を振りながら去っていく。
残されたのは、私と、冷たい眼差しを向ける佐野命。
「ジロジロ見んな。……付いてこいよ」
「あ、うん……」
ぶっきらぼうに背を向けた彼を追って歩き出す。
背中から伝わる威圧感に気圧され、しばらくは沈黙を守っていたけれど、どうしても黙っていられなかった。
「ねえ、聞きたいことがあるんだけど」
「……喋るなって言っただろ」
「じゃあ、これは独り言。……なんで、神様のアナタが妖怪と一緒にいるの?」
「……は?」
ピタリと彼の足が止まった。
ゆっくりと振り返ったミコト君の瞳には、あからさまな苛立ちを帯びている。
「私には秘密を暴く悪魔の力があるの。一緒にいたあの子、妖怪でしょ?」
「だったら何だよ。そういうお前だって、悪魔のクセにこんなところをうろついて……」
「私は本当にただの迷子よ」
「はっ……どうだかな」
案内された扉の前で、彼は顎で先を促した。
「ほら、この扉をくぐれば元の場所に帰れる。二度とここに迷い込んでくるな」
「あ、ありがとう……」
背を向けて去っていく後ろ姿を見送りながら、私は小さく息を吐いた。
力を使った瞬間に、悟ってしまった。
彼は本当に、私のことを覚えていないのだと。
今は佐野命として、生きているのかもしれない。
だけど、私は諦めない。
「待ってて。……絶対に、思い出させてみせるんだから」
思い出の人との再会に、私の胸は少しだけ高鳴った。
