常にキミを見ている
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〜常にキミを見ている〜
入道家に仕えて数年。
主である
だけど、私たち使用人の業務は相変わらず、滞りなく行われる。
連助様がいつ帰省されても大丈夫なように、お部屋は常に清潔に、ベッドシーツも毎日取り替える。
リネンカートに洗濯物を乗せ、部屋を後にした、その時。
「おや、●●さん。今日も精が出ますね」
背後から色気を帯びた低い声。
「……仕事に戻ってください、暗さん」
私はカートのハンドルから手を離さず、彼を真っ直ぐに見据えて冷たく言い放った。
彼も私と同じく屋敷に仕える、同僚のたかはし暗さんだ。
そして、名前にそぐわず多くの女性を惑わすタラシだと言われている。
ただ、仕事をしっかりこなしてさえくれれば、プライベートでは好きにすればいい。
ただし、そのせいで使用人の間でいざこざが生まれなければの話。
「そんなに怖い顔をしなくてもいいじゃないですか」
私の冷ややかな対応にもめげず、暗さんはフッと妖艶な笑みを浮かべ、さらに一歩距離を詰めてきた。
「相変わらず真面目ですね」
「暗さんが不真面目なだけです」
「心外だな。僕は自分の仕事をした上で、空いた時間にキミの働きぶりを見ているだけですよ」
「どうだか……。今朝も使用人の1人が、アナタと一晩過ごしたと言っていましたよ?」
「口が軽いな、あの子……。まあ、いいけど」
彼は少しも悪びれる様子もなく、肩をすくめる。
「……それで、用件は何ですか。なければ、私は急ぎますので」
「用件?そうだな……。よければ、今晩は●●さんが僕の部屋に来ませんか?」
耳元で囁かれた低音に、私は一瞬だけ息を呑む。
だけど、この手の誘いは冗談だと理解している。
彼にとってはただの挨拶代わり。
少なくとも、私相手には。
なぜなら、彼とはこれまで一度も一線を越えたことがないから。
私はいつものように即答した。
「結構です」
「ふふ、そう言うと思いましたよ」
暗さんはわざとらしく笑うと、道を譲るように一歩下がった。
「では、失礼します」
私は彼の視線が背中に突き刺さるのを感じながら、カートを押し出した。
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