河童だって人魚の隣を歩きたい
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「●●の浮き輪も借りれたし、次はこれ。さっきのショップでついでに買っておいたんだ!」
サチコは、レンタルショップのロゴが入った小さなレジ袋から、真新しい日焼け止めのボトルを取り出した。
手慣れた手つきでキャップを開けると、私の背中にひんやりとしたクリームを広げた。
「冷たくて気持ちいい……」
「直射日光が苦手なら、尚更念入りに塗らないとね!」
今度は私がサチコの背中に手を伸ばした。
「サチコも……はい、塗るね」
「あはっ、くすぐったいってば!」
「こら、動かないの!」
「もう、そのくらいでいいよ!さて、私も泳いでくるけど、●●はどうする?」
「私は……」
相変わらずパラソルの下でうずくまっている泥田君をチラリと見た。
「泥田君、退屈していそうだし、私は残ってるよ」
「いいの?浮き輪もせっかく借りてきたのに」
サチコの視線の先には前田君が優雅に泳いでいた。
「うん……。でも、後で少しだけ浸かりに行くから。サチコは気にせず楽しんできて」
「そう……?じゃあ、早く来てね!」
サチコを見届けた後、私は砂を払って泥田君の横へ腰を下ろした。
パラソルの影に入ると、ジリジリとした肌の痛みが和らぎ、思ったよりも快適だった。
ふと、私は今日ここへ来た最大の目的を思い出した。
みさきさん……。
あの日、廊下で前田君の口からこぼれた名前。
隣にいる泥田君ですら知らなそうな口ぶりだった、謎の女性。
私はパラソルの隙間から、波打ち際をキョロキョロと見渡した。
パラソルの下で寛ぐ、モデルのようにスタイル抜群の女性。
海の家で忙しなく焼きそばを焼く、快活な看板娘。
あるいは、先ほど浮き輪を貸し出してくれた、あのお姉さんだろうか。
誰を見ても、地味な河童の自分よりずっと前田君にお似合いに見えて、胸の奥がチクリと疼く。
そんな時、隣にいる泥田君が、忙しなく手を動かしているのが視界に入った。
見てみると、彼は砂をこね始め、何かを作っている様子だった。
「何してるの?」
堪らず尋ねると、
「城でも作ろうと思ってな!」
「お城……」
「波打ち際に行けなくてもよ、砂浜に立派な城を築けば、物珍しさにギャルが寄ってくるんじゃねえかって。これぞ泥田流ナンパ術よ!」
どうやら彼は、生存の危機に瀕しながらも、ナンパへの情熱だけは枯らしていなかったらしい。
「そ、そうなんだ……。頑張ってね」
「だからよ、◯◯も手伝え!手、空いてるんだろ? 」
「……えっ?!」
結局、手伝わされる羽目になった。
だけど、出来上がったのは、立派な城とは程遠い、どこか不気味にうねった泥の塊だった。
「……ワンチャン、芸術的というか、独創的に見えなくもない……か?これを量産すれば……」
泥田君が不安げにブツブツと呟く。
私はそんな彼を横目に、少しだけ勇気を出して立ち上がった。
「……泥田君、私、そろそろ海に浸かってくるね」
私は浮き輪を抱えて、前田君が消えた青い境界線へと歩き出した。
サチコは、レンタルショップのロゴが入った小さなレジ袋から、真新しい日焼け止めのボトルを取り出した。
手慣れた手つきでキャップを開けると、私の背中にひんやりとしたクリームを広げた。
「冷たくて気持ちいい……」
「直射日光が苦手なら、尚更念入りに塗らないとね!」
今度は私がサチコの背中に手を伸ばした。
「サチコも……はい、塗るね」
「あはっ、くすぐったいってば!」
「こら、動かないの!」
「もう、そのくらいでいいよ!さて、私も泳いでくるけど、●●はどうする?」
「私は……」
相変わらずパラソルの下でうずくまっている泥田君をチラリと見た。
「泥田君、退屈していそうだし、私は残ってるよ」
「いいの?浮き輪もせっかく借りてきたのに」
サチコの視線の先には前田君が優雅に泳いでいた。
「うん……。でも、後で少しだけ浸かりに行くから。サチコは気にせず楽しんできて」
「そう……?じゃあ、早く来てね!」
サチコを見届けた後、私は砂を払って泥田君の横へ腰を下ろした。
パラソルの影に入ると、ジリジリとした肌の痛みが和らぎ、思ったよりも快適だった。
ふと、私は今日ここへ来た最大の目的を思い出した。
みさきさん……。
あの日、廊下で前田君の口からこぼれた名前。
隣にいる泥田君ですら知らなそうな口ぶりだった、謎の女性。
私はパラソルの隙間から、波打ち際をキョロキョロと見渡した。
パラソルの下で寛ぐ、モデルのようにスタイル抜群の女性。
海の家で忙しなく焼きそばを焼く、快活な看板娘。
あるいは、先ほど浮き輪を貸し出してくれた、あのお姉さんだろうか。
誰を見ても、地味な河童の自分よりずっと前田君にお似合いに見えて、胸の奥がチクリと疼く。
そんな時、隣にいる泥田君が、忙しなく手を動かしているのが視界に入った。
見てみると、彼は砂をこね始め、何かを作っている様子だった。
「何してるの?」
堪らず尋ねると、
「城でも作ろうと思ってな!」
「お城……」
「波打ち際に行けなくてもよ、砂浜に立派な城を築けば、物珍しさにギャルが寄ってくるんじゃねえかって。これぞ泥田流ナンパ術よ!」
どうやら彼は、生存の危機に瀕しながらも、ナンパへの情熱だけは枯らしていなかったらしい。
「そ、そうなんだ……。頑張ってね」
「だからよ、◯◯も手伝え!手、空いてるんだろ? 」
「……えっ?!」
結局、手伝わされる羽目になった。
だけど、出来上がったのは、立派な城とは程遠い、どこか不気味にうねった泥の塊だった。
「……ワンチャン、芸術的というか、独創的に見えなくもない……か?これを量産すれば……」
泥田君が不安げにブツブツと呟く。
私はそんな彼を横目に、少しだけ勇気を出して立ち上がった。
「……泥田君、私、そろそろ海に浸かってくるね」
私は浮き輪を抱えて、前田君が消えた青い境界線へと歩き出した。
