純白の清掃員
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ーーおまけ(神酒side)ーー
数日前、放課後の教室にて。
今日の授業も全部終わって、生徒らが教室から出ていくんを見送る。
一段落つきたい気持ちをグッと抑えて、僕は小テストの採点に取り掛かった。
マル、マル、バツ……。
一定のリズムで赤ペンを動かしとったら、教室の扉がガラッと開いた。
忘れ物した生徒が戻ってきたんかと思った。
せやけど、顔を上げたら、そこにはバケツとモップを持った清掃員の◯◯さんがおった。
「あ、神酒先生。……失礼しました。まだいらしたんですね、後で出直します」
髪の毛1本も逃さへん清潔なキャップに、首元までキッチリ閉められた、汚れひとつない白のツナギ。
僕は女性が苦手や。
せやけど、彼女みたいに仕事に徹しとる女性やったら緊張せえへん。
やから、本来やったら問答無用で追い返すところ、彼女やったらおっても構わへん。
「そのままでええよ。邪魔をしてんのは、居残っとる僕の方やから」
僕は、わざと気怠げに椅子に深く腰掛けた。
彼女は困ったように視線を泳がせて、黙々と床を磨き始める。
キュッキュッ、と響く乾いた音。
彼女が通った後の床は、鏡みたいに光を反射しとる。
ふと、廊下で生徒らが彼女に吐き捨てとった言葉を思い出した。
不潔……か。
滑稽な話や。
香水で体臭をごまかして、化粧で顔を偽る連中より、よっぽど彼女の方が清らかやないか。
必死に、教壇の周りを磨く彼女。
時折、汗を拭う素振りを見せるけれど、それが不思議と嫌やない。
「……◯◯さんは、いつも丁寧やな」
気付けば、声が出てた。
「あ、ありがとうございます。……仕事ですから」
彼女の肩が跳ねる。
その小さな反応が、なんや少し面白うて、僕は立ち上がり、彼女の元へ歩み寄った。
これほど女性に近付いても、動悸が起きひんのは初めてかもしれん。
彼女が徹底して女の部分を隠してくれとるおかげで、僕は彼女を1人の妖怪として、正しく見つめることができる。
「ほな、頑張ってな。あんまり根詰めすぎんように」
僕は軽く彼女の頭を撫でる仕草をして、教室を後にした。
数日前、放課後の教室にて。
今日の授業も全部終わって、生徒らが教室から出ていくんを見送る。
一段落つきたい気持ちをグッと抑えて、僕は小テストの採点に取り掛かった。
マル、マル、バツ……。
一定のリズムで赤ペンを動かしとったら、教室の扉がガラッと開いた。
忘れ物した生徒が戻ってきたんかと思った。
せやけど、顔を上げたら、そこにはバケツとモップを持った清掃員の◯◯さんがおった。
「あ、神酒先生。……失礼しました。まだいらしたんですね、後で出直します」
髪の毛1本も逃さへん清潔なキャップに、首元までキッチリ閉められた、汚れひとつない白のツナギ。
僕は女性が苦手や。
せやけど、彼女みたいに仕事に徹しとる女性やったら緊張せえへん。
やから、本来やったら問答無用で追い返すところ、彼女やったらおっても構わへん。
「そのままでええよ。邪魔をしてんのは、居残っとる僕の方やから」
僕は、わざと気怠げに椅子に深く腰掛けた。
彼女は困ったように視線を泳がせて、黙々と床を磨き始める。
キュッキュッ、と響く乾いた音。
彼女が通った後の床は、鏡みたいに光を反射しとる。
ふと、廊下で生徒らが彼女に吐き捨てとった言葉を思い出した。
不潔……か。
滑稽な話や。
香水で体臭をごまかして、化粧で顔を偽る連中より、よっぽど彼女の方が清らかやないか。
必死に、教壇の周りを磨く彼女。
時折、汗を拭う素振りを見せるけれど、それが不思議と嫌やない。
「……◯◯さんは、いつも丁寧やな」
気付けば、声が出てた。
「あ、ありがとうございます。……仕事ですから」
彼女の肩が跳ねる。
その小さな反応が、なんや少し面白うて、僕は立ち上がり、彼女の元へ歩み寄った。
これほど女性に近付いても、動悸が起きひんのは初めてかもしれん。
彼女が徹底して女の部分を隠してくれとるおかげで、僕は彼女を1人の妖怪として、正しく見つめることができる。
「ほな、頑張ってな。あんまり根詰めすぎんように」
僕は軽く彼女の頭を撫でる仕草をして、教室を後にした。
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