純白の清掃員
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数日後、降りしきる雨の渡り廊下。
校舎内は泥跳ねと水滴で、清掃員泣かせの状態になっていた。
「あーあ、最悪。湿気臭いし、床もベタつくし……。全部アイツのせいに決まってんじゃん」
曲がり角の向こうから、聞き慣れた棘のある声が聞こえる。
先日、私を避けて歩いていた生徒たちだ。
「垢舐めが掃除サボって、どっか舐め回してんじゃないの?」
「うわ、想像しただけで鳥肌。マジで不潔」
いつもなら、下を向いて通り過ぎるのを待つ。
反論したところで、種族のイメージは変えられないと諦めていたから。
だけど……。
「そこまでにしとき。見苦しいで」
低く、けれど鋭く通る声が、湿った空気を切り裂く。
角から現れたのは、神酒先生だった。
彼は冷ややかな視線を生徒たちに向けている。
「神酒先生……!いや、これはその、冗談で……」
「冗談?自分の身の回りも整えられんヤツが言う冗談か?……足元見てみ」
先生が指差した先。
生徒たちの足元には、外から持ち込んだ泥が点々とこびりついていた。
対して、私が今しがた磨き終えたばかりの背後の床は、雨天とは思えないほど、曇りなく反射している。
「彼女は、キミらが持ち込んだ汚れを、文句1つ言わずに拭いとる。どっちが不潔か、鏡を見てから言った方がええな」
先生の圧に押され、生徒たちは顔を真っ赤にして、逃げるように走り去っていった。
静かになった廊下で、私は呆然と立ち尽くし、先生の背中を見上げる。
「神酒先生……。あの、あんな風に庇っていただかなくても……」
「庇ったワケやない。事実を言ったまでや」
先生は相変わらず、気怠げに首筋を掻きながら、私の方へ歩み寄ってくる。
そして、私の横を通り過ぎる際、耳元で小さく囁いた。
「……いつも、綺麗にしてくれてありがとうな」
ふわりと、先生から微かに漂う柔軟剤の香りが鼻をくすぐる。
先生は振り返ることなく歩いていく。
私は、濡れたモップを握り直した。
白のツナギは雨で少し重いけれど、心は驚くほど軽かった。
ーーFinーー
校舎内は泥跳ねと水滴で、清掃員泣かせの状態になっていた。
「あーあ、最悪。湿気臭いし、床もベタつくし……。全部アイツのせいに決まってんじゃん」
曲がり角の向こうから、聞き慣れた棘のある声が聞こえる。
先日、私を避けて歩いていた生徒たちだ。
「垢舐めが掃除サボって、どっか舐め回してんじゃないの?」
「うわ、想像しただけで鳥肌。マジで不潔」
いつもなら、下を向いて通り過ぎるのを待つ。
反論したところで、種族のイメージは変えられないと諦めていたから。
だけど……。
「そこまでにしとき。見苦しいで」
低く、けれど鋭く通る声が、湿った空気を切り裂く。
角から現れたのは、神酒先生だった。
彼は冷ややかな視線を生徒たちに向けている。
「神酒先生……!いや、これはその、冗談で……」
「冗談?自分の身の回りも整えられんヤツが言う冗談か?……足元見てみ」
先生が指差した先。
生徒たちの足元には、外から持ち込んだ泥が点々とこびりついていた。
対して、私が今しがた磨き終えたばかりの背後の床は、雨天とは思えないほど、曇りなく反射している。
「彼女は、キミらが持ち込んだ汚れを、文句1つ言わずに拭いとる。どっちが不潔か、鏡を見てから言った方がええな」
先生の圧に押され、生徒たちは顔を真っ赤にして、逃げるように走り去っていった。
静かになった廊下で、私は呆然と立ち尽くし、先生の背中を見上げる。
「神酒先生……。あの、あんな風に庇っていただかなくても……」
「庇ったワケやない。事実を言ったまでや」
先生は相変わらず、気怠げに首筋を掻きながら、私の方へ歩み寄ってくる。
そして、私の横を通り過ぎる際、耳元で小さく囁いた。
「……いつも、綺麗にしてくれてありがとうな」
ふわりと、先生から微かに漂う柔軟剤の香りが鼻をくすぐる。
先生は振り返ることなく歩いていく。
私は、濡れたモップを握り直した。
白のツナギは雨で少し重いけれど、心は驚くほど軽かった。
ーーFinーー
