嘘つキ
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とある日の職員室。
静まり返った部屋の中、私は自分のデスクに向かい、黙々と小テストの採点をしていた。
これが終わったら帰ろう。
そう意気込んでいるけれど、正直、鬼の面のせいで答案用紙が見えにくく、嫌になる。
でも、これがなければ、人間だと一瞬でバレてしまうから外せない。
以前、職員室に誰もいないと思い、仮面を外しながら採点をしていたことがある。
だけど、いないと思っていたのは私の大きな勘違いで、実際には小さすぎて気が付かなかっただけで、そこには他の先生がいた。
幸い、私はその先生に背を向けていたため、顔は見られなかった。
あのひやりとした感触は今も忘れられない。
だから、私は本州に帰るまでは外さないと心に決めた。
後少しで採点が終わろうとしていたとき、デスクの端にコトリと缶コーヒーが置かれた。
顔を上げると、神酒先生が静かに立っていた。
「◯◯さん、お疲れ様」
柔らかく、どこか気遣う声。
「ありがとうございます。神酒先生もお疲れ様です」
他愛のない挨拶を交わすと、
「なあ、その仮面、蒸れへんの?」
思わずドキリとする質問をされてしまった。
妖怪だと偽っている身としては、こういう何気ない言葉ほど焦る。
「まあ、多少は……。でも、人見知りなので着けている方が安心できるので」
苦し紛れの言い訳。
だけど、仮面越しの私の声は、自分で思うより落ち着いていた。
神酒先生はそれを聞くと、小さく頷きながら、どこか哀れむような眼差しを向けてきた。
「そうか、大変やな」
……まただ。
神酒先生は時々じっと私の顔……いや、仮面を覗き込むような視線を向けて、なんとなく落ち着かない時がある。
今だって、その目で私の仮面の向こう側を見透かしている、そんな気がする。
何を言うワケでもないけれど、神酒先生は私から視線を外さない。
それが気まずくて、口を開いた。
「あの……」
すると、神酒先生は、
「あ……ああ、すまんな、仕事の邪魔して。ほな、頑張ってぇな」
それだけ言い残すと、そそくさと職員室から出て行った。
室内には、私と残された缶コーヒーだけが取り残される。
プルタブを指先で弾き、カチリと開けると、ふわっと漂う香ばしい匂いが鼻をかすめた。
一口飲むと、口の中にほろ苦い風味が広がる。
「苦いな……」
それは、本当にコーヒーの苦さなのか、はたまた嘘を吐いている心苦しさからきたものなのか。
今は上手く答えが出せなかった。
静まり返った部屋の中、私は自分のデスクに向かい、黙々と小テストの採点をしていた。
これが終わったら帰ろう。
そう意気込んでいるけれど、正直、鬼の面のせいで答案用紙が見えにくく、嫌になる。
でも、これがなければ、人間だと一瞬でバレてしまうから外せない。
以前、職員室に誰もいないと思い、仮面を外しながら採点をしていたことがある。
だけど、いないと思っていたのは私の大きな勘違いで、実際には小さすぎて気が付かなかっただけで、そこには他の先生がいた。
幸い、私はその先生に背を向けていたため、顔は見られなかった。
あのひやりとした感触は今も忘れられない。
だから、私は本州に帰るまでは外さないと心に決めた。
後少しで採点が終わろうとしていたとき、デスクの端にコトリと缶コーヒーが置かれた。
顔を上げると、神酒先生が静かに立っていた。
「◯◯さん、お疲れ様」
柔らかく、どこか気遣う声。
「ありがとうございます。神酒先生もお疲れ様です」
他愛のない挨拶を交わすと、
「なあ、その仮面、蒸れへんの?」
思わずドキリとする質問をされてしまった。
妖怪だと偽っている身としては、こういう何気ない言葉ほど焦る。
「まあ、多少は……。でも、人見知りなので着けている方が安心できるので」
苦し紛れの言い訳。
だけど、仮面越しの私の声は、自分で思うより落ち着いていた。
神酒先生はそれを聞くと、小さく頷きながら、どこか哀れむような眼差しを向けてきた。
「そうか、大変やな」
……まただ。
神酒先生は時々じっと私の顔……いや、仮面を覗き込むような視線を向けて、なんとなく落ち着かない時がある。
今だって、その目で私の仮面の向こう側を見透かしている、そんな気がする。
何を言うワケでもないけれど、神酒先生は私から視線を外さない。
それが気まずくて、口を開いた。
「あの……」
すると、神酒先生は、
「あ……ああ、すまんな、仕事の邪魔して。ほな、頑張ってぇな」
それだけ言い残すと、そそくさと職員室から出て行った。
室内には、私と残された缶コーヒーだけが取り残される。
プルタブを指先で弾き、カチリと開けると、ふわっと漂う香ばしい匂いが鼻をかすめた。
一口飲むと、口の中にほろ苦い風味が広がる。
「苦いな……」
それは、本当にコーヒーの苦さなのか、はたまた嘘を吐いている心苦しさからきたものなのか。
今は上手く答えが出せなかった。
