深夜の来訪者
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私はぐいっとお猪口に入った酒を呷る。
彼はまだ躊躇しているようだ。
「……キミは、なんでそんなに疲れてるん?」
そう尋ねてきた彼の瞳は、どこか優しげだった。
「なんでって……仕事だよ。毎日、毎日、終わりの見えない仕事に追われているの」
お猪口に口をつけながら、ぽつりぽつりと愚痴をこぼす。
彼の前で、普段は誰にも言えない弱音を吐き出している自分が不思議だった。
「そっか……人間も大変なんやな」
彼は静かに耳を傾けてくれた。
「そうだ、まだ自己紹介していなかったね。私は◯◯●●。しがないOLです」
「僕は神酒凜太郎。さっきも言 うたけど、妖怪学校の教師や」
「酒呑童子が名前じゃないんだね」
「それは種族」
「へ〜。で、妖怪学校はどんなところなの?」
私が聞くと、彼は少し考え込んでから答えた。
「せやな……。多分人間の学校と大差ないで。体育祭も文化祭もある。……あー、ただ、身体測定とか家庭訪問は命懸けやな。生徒に潰されかけたり、親御さんに食われかけたこともあったわ」
彼はそう言って、苦笑いを浮かべた。
妖怪なだけあって特殊な生徒や親御さんはいれど、学校の先生も大変そうだった。
「なんだ、妖怪も大変じゃん」
私はそう言って、からりと笑った。
「お互い様やな」
「じゃあ、そんな私たちに乾杯!」
神酒さんにお猪口を渡して、私は先に自分のお酒を飲んだ。
だけど、彼はお猪口を口に含む直前、動きを止めた。
「危ない、危ない。僕、酒を飲むと大変なことになるから、周りに止められとるんよ」
「大変って、例えば?」
「物を破壊したり、暴力を振るったり……?」
「それは困るかな……」
だって、うちは賃貸だから。
壁に穴でも開けられたら、修繕費がバカにならない。
「あ、そうだ、代わりにノンアルのカクテルを作ってあげるよ」
私はキッチンへと戻り、グラスに氷を入れた。
次にりんごジュースと生姜の効いた炭酸ジュースを同じ割合で注ぎ入れ……。
「はい、アップルジンジャーの出来上がり」
私は薄黄色のノンアルカクテルが入ったグラスを、彼の前の机にことりと置いた。
神酒さんは興味深く見つめたかと思えば、それをぐっと一口飲む。
「あ……美味いな……」
「よかった!」
それから私たちは色々と語り合った。
さすがに私の仕事の話は企業秘密で言えないし、神酒さんも生徒の話は、個人情報の問題もあって詳しくは話してくれなかった。
だけど、代わりに私は人間界の、神酒さんは妖怪の世界のことを教え合った。
……。
…………。
「今日は本当にありがとう。こんなに誰かとちゃんとした会話ができたの、久しぶりだったから、楽しかった」
素直な気持ちを伝えると、神酒さんは少し驚いたような顔をした後、優しい声で言った。
「こちらこそ。●●さんのおかげで、人間も捨てたもんやないなって思ったわ。疲れとるのに、僕みたいなわけの分からんもんを招き入れてくれて……」
彼は少し照れくさそうに頬を掻いた。
「いやいや、ゾンビでも宇宙人でも歓迎だったから、尚更神酒さんでよかった」
そう言って、私はまた笑った。
窓の外では、月が静かに私たちを照らしている。
たまにはこんな来訪者も悪くない。
そう思えるほど、疲れていたはずの私の心は、すっかり満たされていた。
ーーFinーー
彼はまだ躊躇しているようだ。
「……キミは、なんでそんなに疲れてるん?」
そう尋ねてきた彼の瞳は、どこか優しげだった。
「なんでって……仕事だよ。毎日、毎日、終わりの見えない仕事に追われているの」
お猪口に口をつけながら、ぽつりぽつりと愚痴をこぼす。
彼の前で、普段は誰にも言えない弱音を吐き出している自分が不思議だった。
「そっか……人間も大変なんやな」
彼は静かに耳を傾けてくれた。
「そうだ、まだ自己紹介していなかったね。私は◯◯●●。しがないOLです」
「僕は神酒凜太郎。さっきも
「酒呑童子が名前じゃないんだね」
「それは種族」
「へ〜。で、妖怪学校はどんなところなの?」
私が聞くと、彼は少し考え込んでから答えた。
「せやな……。多分人間の学校と大差ないで。体育祭も文化祭もある。……あー、ただ、身体測定とか家庭訪問は命懸けやな。生徒に潰されかけたり、親御さんに食われかけたこともあったわ」
彼はそう言って、苦笑いを浮かべた。
妖怪なだけあって特殊な生徒や親御さんはいれど、学校の先生も大変そうだった。
「なんだ、妖怪も大変じゃん」
私はそう言って、からりと笑った。
「お互い様やな」
「じゃあ、そんな私たちに乾杯!」
神酒さんにお猪口を渡して、私は先に自分のお酒を飲んだ。
だけど、彼はお猪口を口に含む直前、動きを止めた。
「危ない、危ない。僕、酒を飲むと大変なことになるから、周りに止められとるんよ」
「大変って、例えば?」
「物を破壊したり、暴力を振るったり……?」
「それは困るかな……」
だって、うちは賃貸だから。
壁に穴でも開けられたら、修繕費がバカにならない。
「あ、そうだ、代わりにノンアルのカクテルを作ってあげるよ」
私はキッチンへと戻り、グラスに氷を入れた。
次にりんごジュースと生姜の効いた炭酸ジュースを同じ割合で注ぎ入れ……。
「はい、アップルジンジャーの出来上がり」
私は薄黄色のノンアルカクテルが入ったグラスを、彼の前の机にことりと置いた。
神酒さんは興味深く見つめたかと思えば、それをぐっと一口飲む。
「あ……美味いな……」
「よかった!」
それから私たちは色々と語り合った。
さすがに私の仕事の話は企業秘密で言えないし、神酒さんも生徒の話は、個人情報の問題もあって詳しくは話してくれなかった。
だけど、代わりに私は人間界の、神酒さんは妖怪の世界のことを教え合った。
……。
…………。
「今日は本当にありがとう。こんなに誰かとちゃんとした会話ができたの、久しぶりだったから、楽しかった」
素直な気持ちを伝えると、神酒さんは少し驚いたような顔をした後、優しい声で言った。
「こちらこそ。●●さんのおかげで、人間も捨てたもんやないなって思ったわ。疲れとるのに、僕みたいなわけの分からんもんを招き入れてくれて……」
彼は少し照れくさそうに頬を掻いた。
「いやいや、ゾンビでも宇宙人でも歓迎だったから、尚更神酒さんでよかった」
そう言って、私はまた笑った。
窓の外では、月が静かに私たちを照らしている。
たまにはこんな来訪者も悪くない。
そう思えるほど、疲れていたはずの私の心は、すっかり満たされていた。
ーーFinーー
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