失恋同盟
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ようやくたどり着いたビーチ。
「うわぁ……すっごく綺麗!」
どこまでも続く空と海。
白い砂浜。
「さっきまで泣きそうだった顔が、少しはマシになったな」
耕太郎は私を見て、からかうように言った。
「泣きそうになってないし!そう言う耕太郎だって……!」
そこまで言って、私は言葉を失った。
夕日に照らされる彼の横顔があまりにも綺麗だったから。
それを誤魔化すように、私はヒールとストッキングを脱いで裸足になった。
そして、砂浜を歩き始めた。
砂の上はひんやりとしていて気持ちがいい。
そうだ。
濡れない安全圏でビーチを眺めている耕太郎に、イタズラしちゃおう。
私はしゃがみ込み、手で海水をすくった。
そして、振り向きざまに耕太郎目掛けてかけてやった。
「うわあっ!」
彼の慌てる顔が目に浮かぶ。
だけど、実際に私の目に飛び込んできた光景は、慌てる耕太郎ではなく、醜い化け物だった。
「……ぇ」
言葉を失った。
なんで……?
私、海水をかけただけだよね?
それなのに、海水がかかった部分が泥のように溶け出している。
「……こ、耕太郎?」
「見るな!……見るな……」
耕太郎だった化け物は、慌てて溶けた部分を手で隠す。
だけど、もう見てしまった。
全てが遅い。
「どういうこと……?」
「……」
化け物が少しだけ呼吸を整えると、溶け出していた部分が元に戻り、普通の人間の姿になった。
それはさっきまで見ていた耕太郎の姿。
「俺……妖怪なんだ」
「妖……怪……?」
「ああ、泥田坊って妖怪。だから、水に濡れると溶けるんだよ」
耕太郎は静かに話し始めた。
「眼帯の下、気になるって言っていたよな?」
「う、うん……」
「ほら、見せてやる」
ペラリと捲られた眼帯の下には何もなかった。
言葉通り、目すらない。
「ひっ……!」
「お前みたいな反応するから人間が嫌いなんだよ」
その表情は落胆したような、悲しい顔をしていた。
「ごめん!……ごめんなさい……」
「だから、姉ちゃんも人間と結婚してほしくなかった……」
「人間を嫌いにさせちゃって、ごめんなさい……」
震える声で謝罪を口にしたけれど、耕太郎は何も応えない。
どうしよう。
どうしたらいい。
考えがうまくまとまらない。
あの時と同じだ。
大好きだったお兄ちゃんの結婚式から逃げ出して、途方に暮れていた、あの時と。
そんな私に手を差し伸ばしてくれたのは耕太郎だった。
彼だって大好きなお姉さんが結婚してツラかったはずなのに、私のことを気にかけてくれた。
それなのに、たった一度の恐怖で、彼の心を閉ざしてしまった。
そうさせてしまった私が、彼に何か言う資格はあるのだろうか。
分からない。
分からないけれど、何も言わないワケにはいかない。
「耕太郎……聞いて……?」
正直に言うと、まだ少し怖いし、耕太郎が妖怪だと言う現実が受け入れられない。
でも、その恐怖を乗り越えなければ、いけないと思った。
私は一歩、また一歩と彼に近付く。
「さっきは、驚いてごめんなさい。正直、怖かった。妖怪なんて信じていなかったから……」
どう伝えたら、気持ちが伝わるだろうか。
私は言葉の続きを慎重に探した。
「怖がっちゃったけど、あの場から……式場から連れ出してくれたのは嬉しかったの」
「……」
「一緒にパンケーキ食べたり、笑い合ったり、お土産を探したり……」
「何が言いたい」
耕太郎の苛立った声が、私の胸に突き刺さる。
だけど、ちゃんと言わないと。
「私はお兄ちゃんの結婚式からも、耕太郎からも一度は逃げ出した。だけど、もう一度仲良くなるチャンスが欲しいの!」
「今更……」
「今からだって遅くないはず!だって、私たち、失恋同盟なんでしょ?」
「……」
耕太郎の片目が大きく見開かれたかと思うと、彼は少しだけ笑った。
「ふっ……。お前、馬鹿だな。こんな妖怪の俺に……」
その顔は、もう悲しそうではなかった。
「分かった、俺の負けだよ。失恋同盟、再結成だな」
「!」
その言葉が嬉しくて、顔がくしゃくしゃになるほど笑ってしまった。
「ハッ、不細工な顔。どっちが妖怪なんだか」
「なんだってー!」
鼻で笑う耕太郎に怒ってみせたけれど、皮肉が言えるくらい私たちの関係が修復できたと思えば許せた。
私、もう耕太郎のこと、怖くないよ。
海風が2人の間を通り抜けた。
それはまるで、もう喧嘩しないでね、と言っているように、私たちを包み込んだ。
ーーFinーー
「うわぁ……すっごく綺麗!」
どこまでも続く空と海。
白い砂浜。
「さっきまで泣きそうだった顔が、少しはマシになったな」
耕太郎は私を見て、からかうように言った。
「泣きそうになってないし!そう言う耕太郎だって……!」
そこまで言って、私は言葉を失った。
夕日に照らされる彼の横顔があまりにも綺麗だったから。
それを誤魔化すように、私はヒールとストッキングを脱いで裸足になった。
そして、砂浜を歩き始めた。
砂の上はひんやりとしていて気持ちがいい。
そうだ。
濡れない安全圏でビーチを眺めている耕太郎に、イタズラしちゃおう。
私はしゃがみ込み、手で海水をすくった。
そして、振り向きざまに耕太郎目掛けてかけてやった。
「うわあっ!」
彼の慌てる顔が目に浮かぶ。
だけど、実際に私の目に飛び込んできた光景は、慌てる耕太郎ではなく、醜い化け物だった。
「……ぇ」
言葉を失った。
なんで……?
私、海水をかけただけだよね?
それなのに、海水がかかった部分が泥のように溶け出している。
「……こ、耕太郎?」
「見るな!……見るな……」
耕太郎だった化け物は、慌てて溶けた部分を手で隠す。
だけど、もう見てしまった。
全てが遅い。
「どういうこと……?」
「……」
化け物が少しだけ呼吸を整えると、溶け出していた部分が元に戻り、普通の人間の姿になった。
それはさっきまで見ていた耕太郎の姿。
「俺……妖怪なんだ」
「妖……怪……?」
「ああ、泥田坊って妖怪。だから、水に濡れると溶けるんだよ」
耕太郎は静かに話し始めた。
「眼帯の下、気になるって言っていたよな?」
「う、うん……」
「ほら、見せてやる」
ペラリと捲られた眼帯の下には何もなかった。
言葉通り、目すらない。
「ひっ……!」
「お前みたいな反応するから人間が嫌いなんだよ」
その表情は落胆したような、悲しい顔をしていた。
「ごめん!……ごめんなさい……」
「だから、姉ちゃんも人間と結婚してほしくなかった……」
「人間を嫌いにさせちゃって、ごめんなさい……」
震える声で謝罪を口にしたけれど、耕太郎は何も応えない。
どうしよう。
どうしたらいい。
考えがうまくまとまらない。
あの時と同じだ。
大好きだったお兄ちゃんの結婚式から逃げ出して、途方に暮れていた、あの時と。
そんな私に手を差し伸ばしてくれたのは耕太郎だった。
彼だって大好きなお姉さんが結婚してツラかったはずなのに、私のことを気にかけてくれた。
それなのに、たった一度の恐怖で、彼の心を閉ざしてしまった。
そうさせてしまった私が、彼に何か言う資格はあるのだろうか。
分からない。
分からないけれど、何も言わないワケにはいかない。
「耕太郎……聞いて……?」
正直に言うと、まだ少し怖いし、耕太郎が妖怪だと言う現実が受け入れられない。
でも、その恐怖を乗り越えなければ、いけないと思った。
私は一歩、また一歩と彼に近付く。
「さっきは、驚いてごめんなさい。正直、怖かった。妖怪なんて信じていなかったから……」
どう伝えたら、気持ちが伝わるだろうか。
私は言葉の続きを慎重に探した。
「怖がっちゃったけど、あの場から……式場から連れ出してくれたのは嬉しかったの」
「……」
「一緒にパンケーキ食べたり、笑い合ったり、お土産を探したり……」
「何が言いたい」
耕太郎の苛立った声が、私の胸に突き刺さる。
だけど、ちゃんと言わないと。
「私はお兄ちゃんの結婚式からも、耕太郎からも一度は逃げ出した。だけど、もう一度仲良くなるチャンスが欲しいの!」
「今更……」
「今からだって遅くないはず!だって、私たち、失恋同盟なんでしょ?」
「……」
耕太郎の片目が大きく見開かれたかと思うと、彼は少しだけ笑った。
「ふっ……。お前、馬鹿だな。こんな妖怪の俺に……」
その顔は、もう悲しそうではなかった。
「分かった、俺の負けだよ。失恋同盟、再結成だな」
「!」
その言葉が嬉しくて、顔がくしゃくしゃになるほど笑ってしまった。
「ハッ、不細工な顔。どっちが妖怪なんだか」
「なんだってー!」
鼻で笑う耕太郎に怒ってみせたけれど、皮肉が言えるくらい私たちの関係が修復できたと思えば許せた。
私、もう耕太郎のこと、怖くないよ。
海風が2人の間を通り抜けた。
それはまるで、もう喧嘩しないでね、と言っているように、私たちを包み込んだ。
ーーFinーー
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