座敷わらしと雷神
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翌日、テストは盗まれることも、燃やされることもなく、予定通り行われた。
内容も簡単どころか難しかった。
「はい、そこまで!後ろから答案用紙を回収しろ」
先生の掛け声と共に、ため息や小さなうめき声があちこちから漏れる。
私も、深く息を吐いた。
答案用紙が後ろから順に回収されていく。
1番後ろの席の生徒が、束ねた用紙を持って歩き始める。
その途中、私の横を通り過ぎたとき、
「……チッ」
舌打ちのような音が、はっきりと聞こえた。
一瞬、背筋がぞくりとする。
でも私は、顔を上げられず、じっと机の端を見つめたまま動けなかった。
文句があるなら、私じゃなくて先生に言えばいいのに。
心の中でそっと思う。
……。
…………。
昼休み、私は教室に居場所がなくて、いつものように屋上で過ごしていた。
「今日も光君はいない、か」
なんとなく自分のクラスに目をやると、いつも私の陰口を叩いている女子生徒たちが、ベランダに出ていた。
そして、そこから楽しげに鞄を投げ捨てた。
「……!?」
まさかと思い、慌てて階段を駆け下りると、鞄は運動場に面した花壇に、無防備に落ちていた。
中身は散らばり、教科書やノートは土にまみれ、花壇の花も何本か折れている。
「……っ」
これは私の鞄だ。
なんでこんなことをするのよ……。
情けなさと悔しさで胸がぐっと詰まりながらも、鞄に手を伸ばす。
その瞬間、背後から何かが弾けるような音がした。
びくりと振り返ると、いつの間にかすぐ後ろに光君が立っていた。
「光……君……」
「今日は屋上じゃないんだね」
彼の姿を見た瞬間、張り詰めていたものがふっと緩み、涙が込み上げそうになる。
それを隠そうと、私は無理に笑ってしゃがみ込んだ。
「ちょっと、鞄を落としちゃって。あはは……ドジだよね、私……」
声が震えるのをごまかすように、手早くノートや教科書を拾い集める。
そんな私に、光君は何も言わず、黙って一緒に教材を集めてくれた。
そして、全て拾い終わると、
「●●ちゃんのクラスってどこ?」
意外な質問に、きょとんとする。
「あの3階の右から2番目の教室だけど……」
指を差しながら教えると、光君は微笑んだ。
その瞬間、空が不意に暗くなったかと思うと、ゴロゴロと小さな雷鳴が辺りに響いた。
見上げれば、さっきまで晴れていたのに真上の一角だけ、厚い雲が渦巻いている。
「え、何をするの?」
「いいから、見てて」
光君は相変わらず、笑ったまま。
だけど、いつも隠れている金色の目が鋭く光っているようにも見えた。
思わず息を呑む。
そのとき、私のクラス目掛けて、ピシャリと雷が落ちた。
幸い窓は割れなかったが、真っ白な校舎の壁にはしっかりと黒い煤 の跡が残っていた。
しばらくすると、慌てた様子のクラスメイトたちが窓から顔を出した。
空を見上げ、次に下を向く。
そこで教室を見上げていた私と目が合った。
彼女たちは、なぜか怯えた顔をしてすぐさま室内へと戻っていった。
不思議に思っていると、
「……いやー、危なかったね」
光君が、私の肩にそっと手を置いた。
その手はほんのり電気を帯びたように温かい。
「もしかしたら、次は人に当たっちゃうかもね」
そう呟く彼の横顔は、まるで本物の“雷神”のようだった。
「今の、光君がやったの……?」
いや、聞かなくても分かる。
だって気が付いていたから。
1番最初に出会ったときから、光君が人間じゃないことくらい。
どこからともなく、知らない制服を纏った生徒が現れたら、誰だって怪しく思うはずだ。
その時の私は、怪しくても弱音を吐きたくて、見て見ぬフリをしていたんだと思う。
だけど、今の私には光君が本物だとか偽物だとかどうでもいい。
ただ、私の味方で居てくれるなら、誰だって良かった。
ーーFinーー
内容も簡単どころか難しかった。
「はい、そこまで!後ろから答案用紙を回収しろ」
先生の掛け声と共に、ため息や小さなうめき声があちこちから漏れる。
私も、深く息を吐いた。
答案用紙が後ろから順に回収されていく。
1番後ろの席の生徒が、束ねた用紙を持って歩き始める。
その途中、私の横を通り過ぎたとき、
「……チッ」
舌打ちのような音が、はっきりと聞こえた。
一瞬、背筋がぞくりとする。
でも私は、顔を上げられず、じっと机の端を見つめたまま動けなかった。
文句があるなら、私じゃなくて先生に言えばいいのに。
心の中でそっと思う。
……。
…………。
昼休み、私は教室に居場所がなくて、いつものように屋上で過ごしていた。
「今日も光君はいない、か」
なんとなく自分のクラスに目をやると、いつも私の陰口を叩いている女子生徒たちが、ベランダに出ていた。
そして、そこから楽しげに鞄を投げ捨てた。
「……!?」
まさかと思い、慌てて階段を駆け下りると、鞄は運動場に面した花壇に、無防備に落ちていた。
中身は散らばり、教科書やノートは土にまみれ、花壇の花も何本か折れている。
「……っ」
これは私の鞄だ。
なんでこんなことをするのよ……。
情けなさと悔しさで胸がぐっと詰まりながらも、鞄に手を伸ばす。
その瞬間、背後から何かが弾けるような音がした。
びくりと振り返ると、いつの間にかすぐ後ろに光君が立っていた。
「光……君……」
「今日は屋上じゃないんだね」
彼の姿を見た瞬間、張り詰めていたものがふっと緩み、涙が込み上げそうになる。
それを隠そうと、私は無理に笑ってしゃがみ込んだ。
「ちょっと、鞄を落としちゃって。あはは……ドジだよね、私……」
声が震えるのをごまかすように、手早くノートや教科書を拾い集める。
そんな私に、光君は何も言わず、黙って一緒に教材を集めてくれた。
そして、全て拾い終わると、
「●●ちゃんのクラスってどこ?」
意外な質問に、きょとんとする。
「あの3階の右から2番目の教室だけど……」
指を差しながら教えると、光君は微笑んだ。
その瞬間、空が不意に暗くなったかと思うと、ゴロゴロと小さな雷鳴が辺りに響いた。
見上げれば、さっきまで晴れていたのに真上の一角だけ、厚い雲が渦巻いている。
「え、何をするの?」
「いいから、見てて」
光君は相変わらず、笑ったまま。
だけど、いつも隠れている金色の目が鋭く光っているようにも見えた。
思わず息を呑む。
そのとき、私のクラス目掛けて、ピシャリと雷が落ちた。
幸い窓は割れなかったが、真っ白な校舎の壁にはしっかりと黒い
しばらくすると、慌てた様子のクラスメイトたちが窓から顔を出した。
空を見上げ、次に下を向く。
そこで教室を見上げていた私と目が合った。
彼女たちは、なぜか怯えた顔をしてすぐさま室内へと戻っていった。
不思議に思っていると、
「……いやー、危なかったね」
光君が、私の肩にそっと手を置いた。
その手はほんのり電気を帯びたように温かい。
「もしかしたら、次は人に当たっちゃうかもね」
そう呟く彼の横顔は、まるで本物の“雷神”のようだった。
「今の、光君がやったの……?」
いや、聞かなくても分かる。
だって気が付いていたから。
1番最初に出会ったときから、光君が人間じゃないことくらい。
どこからともなく、知らない制服を纏った生徒が現れたら、誰だって怪しく思うはずだ。
その時の私は、怪しくても弱音を吐きたくて、見て見ぬフリをしていたんだと思う。
だけど、今の私には光君が本物だとか偽物だとかどうでもいい。
ただ、私の味方で居てくれるなら、誰だって良かった。
ーーFinーー
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