芽引き目吹かれ
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消灯時間が過ぎ、院内が寝静まった頃。
私は行動に移した。
元々私の病室にはたかはし先生以外立ち寄らないけれど、念のために荷物をベッドに仕込む。
私が寝ているように見せかける細工をしてから病室を出た。
痛みに堪えながら、そろりと壁を伝い廊下を歩く。
1歩1歩着実に。
ときたま見回りの看護師なのか、懐中電灯らしき明かりを見かけたけれど、息を潜め事なきを得た。
非常階段を呼吸を乱れながらも登り切り、屋上の扉を開けるとそこには外の世界が広がっていた。
だけど、
「星、見えないや」
吸い込まれそうなくらい真っ暗。
おまけに、
「寒っ……」
冷たい風がただだた肌を刺すようだった。
カーディガンはベッドの中に仕込んできたため、身に纏っているのは入院着のみ。
これから飛び降りようとする人間が身だしなみなんて気を付けても無意味だと思ったから。
フェンスは私の背丈ほどあったけれど、この程度ならなんとか越えられそう。
スチール製の網に手をかけ、意気込む。
「よしっ……」
そんなとき、
「そんなところで何をしているんだい?危ないからフェンスから離れて」
「え……?」
振り向くとたかはし先生がいた。
「なん……で」
なんで……なんで先生がこんな時間に、こんなところにいるのよ!
「僕には全てが見えているからだよ」
そんなの、答えになっていない。
「近付かないで!私、もう疲れちゃったの!だから楽にさせて!」
これ以上先生の顔を見ていると決心が鈍る。
それなのに、
「キミの人生、そんな終わり方でいいの?それに死なれたら病気を解明できなくなる」
こんなときにまで解明とか……。
本当にたかはし先生って人は。
「じゃあ……せめて先生の手で私を殺してよ……」
それで解剖でもなんでもして解明すればいい。
先生ならできる。
それなら問題ないでしょ。
だけど、
「それは出来ない。とある人に言われたんだ。人を殺すと牢屋に入れられて、その間何の知識も得られなくなるって。僕は知識を得るのが大好きでね。だから僕はもう誰も殺さない」
“もう誰も殺さない”ってことは過去に誰かを殺したのだろうか。
医療ミス?
受け持った患者さんの病状が悪化した?
でも、今の私にはどうでもいい。
先生が私を殺してくれないことが分かればそれで……。
「もういい……」
やっぱり自分の手で終止符を打たないと。
私は再び視線をフェンスに向けて1歩、また1歩とよじ登る。
そんな私を止めるように、たかはし先生は手を握ってきた。
自分的には登ったように感じても、背の高い先生にとっては、手を伸ばせば届く高さまでしか登れていなかったようだ。
「離してください」
離してくれないと、私の手が震えているのがバレちゃうから。
「離さない。キミは僕にとって特別な患者だから」
「とく……べつ……?」
よくもそんな嘘を……。
「先生、言ったじゃないですか!私のこと、僕にとっては特別でも何でもないって!」
「それは……」
「先生にとって、私もたかが患者の1人なんですよね?!」
「違うんだ!」
「何が違うんですか?!」
感情の赴くまま言葉をぶつけたら、突然手を引っ張られた。
そして次の瞬間、私は先生に抱きしめられていた。
「えっ……?」
何なの?
なんでいきなりハグされているの?
意味が分からない。
抗議しようとたかはし先生の顔を見上げると、先生は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「……百々目鬼って知ってる?」
「百々目鬼?」
確か、無数の目玉を持つ妖怪。
それが今何の関係があると言うのか。
すると、たかはし先生は静かに語り始めた。
「そう。僕はその百々目鬼なんだ」
ふざけているようには見えなかった。
その証拠に、先生の腕や顔から無数の目玉が出現した。
「……っっ!?」
あまりの禍々しい光景に声が出ない。
1つ1つの目が私を捉える。
だけど、私もその無数の目から視線を逸らせずにいた。
これが百々目鬼の力なのか、それとも私の感情か。
どちらかは分からないけれど、まるで吸い込まれるようだった。
そんな私を見て、たかはし先生は困り顔で話を続けた。
「◯◯さんの全身に現れている種と、僕の全身に現れる目玉が似ているから……。だから見慣れているって意味だったんだよ」
確かに、言われてみれば似ている。
そして、先生は考え込む素振りをしてから最後の言葉を放った。
「これは最終手段だったんだけど……◯◯さん、人間をやめてみない?それで、僕と同じ百々目鬼になろうよ」
私も百々目鬼になれるの?
なったらどうなるの?
この醜い姿から……苦しみから解放されるの?
「…………はい」
気が付いたら私は返事をしていた。
ーーーー
1ヶ月後、たかはし先生は予定通り他の病院に移った。
それと同時に特別病棟の女性患者がこつ然と姿を消した。
ーーFinーー
私は行動に移した。
元々私の病室にはたかはし先生以外立ち寄らないけれど、念のために荷物をベッドに仕込む。
私が寝ているように見せかける細工をしてから病室を出た。
痛みに堪えながら、そろりと壁を伝い廊下を歩く。
1歩1歩着実に。
ときたま見回りの看護師なのか、懐中電灯らしき明かりを見かけたけれど、息を潜め事なきを得た。
非常階段を呼吸を乱れながらも登り切り、屋上の扉を開けるとそこには外の世界が広がっていた。
だけど、
「星、見えないや」
吸い込まれそうなくらい真っ暗。
おまけに、
「寒っ……」
冷たい風がただだた肌を刺すようだった。
カーディガンはベッドの中に仕込んできたため、身に纏っているのは入院着のみ。
これから飛び降りようとする人間が身だしなみなんて気を付けても無意味だと思ったから。
フェンスは私の背丈ほどあったけれど、この程度ならなんとか越えられそう。
スチール製の網に手をかけ、意気込む。
「よしっ……」
そんなとき、
「そんなところで何をしているんだい?危ないからフェンスから離れて」
「え……?」
振り向くとたかはし先生がいた。
「なん……で」
なんで……なんで先生がこんな時間に、こんなところにいるのよ!
「僕には全てが見えているからだよ」
そんなの、答えになっていない。
「近付かないで!私、もう疲れちゃったの!だから楽にさせて!」
これ以上先生の顔を見ていると決心が鈍る。
それなのに、
「キミの人生、そんな終わり方でいいの?それに死なれたら病気を解明できなくなる」
こんなときにまで解明とか……。
本当にたかはし先生って人は。
「じゃあ……せめて先生の手で私を殺してよ……」
それで解剖でもなんでもして解明すればいい。
先生ならできる。
それなら問題ないでしょ。
だけど、
「それは出来ない。とある人に言われたんだ。人を殺すと牢屋に入れられて、その間何の知識も得られなくなるって。僕は知識を得るのが大好きでね。だから僕はもう誰も殺さない」
“もう誰も殺さない”ってことは過去に誰かを殺したのだろうか。
医療ミス?
受け持った患者さんの病状が悪化した?
でも、今の私にはどうでもいい。
先生が私を殺してくれないことが分かればそれで……。
「もういい……」
やっぱり自分の手で終止符を打たないと。
私は再び視線をフェンスに向けて1歩、また1歩とよじ登る。
そんな私を止めるように、たかはし先生は手を握ってきた。
自分的には登ったように感じても、背の高い先生にとっては、手を伸ばせば届く高さまでしか登れていなかったようだ。
「離してください」
離してくれないと、私の手が震えているのがバレちゃうから。
「離さない。キミは僕にとって特別な患者だから」
「とく……べつ……?」
よくもそんな嘘を……。
「先生、言ったじゃないですか!私のこと、僕にとっては特別でも何でもないって!」
「それは……」
「先生にとって、私もたかが患者の1人なんですよね?!」
「違うんだ!」
「何が違うんですか?!」
感情の赴くまま言葉をぶつけたら、突然手を引っ張られた。
そして次の瞬間、私は先生に抱きしめられていた。
「えっ……?」
何なの?
なんでいきなりハグされているの?
意味が分からない。
抗議しようとたかはし先生の顔を見上げると、先生は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「……百々目鬼って知ってる?」
「百々目鬼?」
確か、無数の目玉を持つ妖怪。
それが今何の関係があると言うのか。
すると、たかはし先生は静かに語り始めた。
「そう。僕はその百々目鬼なんだ」
ふざけているようには見えなかった。
その証拠に、先生の腕や顔から無数の目玉が出現した。
「……っっ!?」
あまりの禍々しい光景に声が出ない。
1つ1つの目が私を捉える。
だけど、私もその無数の目から視線を逸らせずにいた。
これが百々目鬼の力なのか、それとも私の感情か。
どちらかは分からないけれど、まるで吸い込まれるようだった。
そんな私を見て、たかはし先生は困り顔で話を続けた。
「◯◯さんの全身に現れている種と、僕の全身に現れる目玉が似ているから……。だから見慣れているって意味だったんだよ」
確かに、言われてみれば似ている。
そして、先生は考え込む素振りをしてから最後の言葉を放った。
「これは最終手段だったんだけど……◯◯さん、人間をやめてみない?それで、僕と同じ百々目鬼になろうよ」
私も百々目鬼になれるの?
なったらどうなるの?
この醜い姿から……苦しみから解放されるの?
「…………はい」
気が付いたら私は返事をしていた。
ーーーー
1ヶ月後、たかはし先生は予定通り他の病院に移った。
それと同時に特別病棟の女性患者がこつ然と姿を消した。
ーーFinーー
