透明なアナタだから
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次に目が覚めたとき、私の視界に映ったのは、見知らぬ白い天井だった。
頭は重く、ぼんやりとしている。
鼻を突く薬品の匂い、規則正しく響く機械音。
ここが病院なのは、ぼんやりとした思考の中で理解した。
腕に目をやると、細いチューブやセンサーが無機質に貼り付けられている。
そして、そのとき、視線が手の甲で止まった。
「……火傷?」
私の腕の皮膚が、ところどころ赤くただれていることに気が付いた。
輪入道が纏っていたあの猛々しい炎によって負った傷だろうか。
腕がこうなら、きっと顔にも負っているだろう。
……ああ、鏡を見るのが怖い。
だけど、それよりも何よりも、まず胸に込み上げてきたのは、安堵だった。
「私……助かったんだ……」
正確に言えば、1度死んでいる身。
それでも、私は、この世界に、まだ留まることができたのだ。
次に視界に入ったのは、ベッドに括り付けるように垂れ下がったナースコール。
押すべきだろうか。
起きたばかりのぼんやりとした頭では、それ以上考えることができなかった。
そのとき、控えめなノックの音が、静かな部屋に響いた。
「は、はーい……!」
情けない、裏返った声で応じると、ゆっくりと開かれたドアから入ってきたのは、看護師さんではなかった。
そこに立っていたのは、あの夜、私を抱きかかえてくれた、全身包帯ぐるぐる巻きのお巡りさんだった。
彼は被っていた制帽を丁重に取り、ベッドサイドに近付いてきた。
「やあ、目が覚めたのかい?」
包帯に隠された表情は読み取れないけれど、声は温かく、安心感を覚える。
「あ、はい。ついさっき……」
「そうか。それは良かった。それなら、まず先生を呼ぼうか」
やっぱり、呼んだ方が良かったのかと、少しの気恥ずかしさを覚える。
彼がナースコールを鳴らすと、間髪入れずに、白衣を着た医師と看護師が部屋へとやって来た。
医師と看護師さんは、お巡りさんにペコリと軽く会釈をしてから、問診を始めた。
「自分の名前、言えますか?」
「◯◯●●です……」
「意識ははっきりしているね。機械の数値も安定しているし、大丈夫そうだ。ただ、怪我が完治するまでは安静にしてくださいね」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
私の言葉に、医師はにっこりと笑い、静かに部屋から出ていった。
「……」
再び、部屋には私と、終始その様子を見守っていたお巡りさんだけが残される。
一体、何の用だろう……?
そう思っていたら、彼は察したように口を開いた。
「さて、意識が戻ってそうそう悪いんだけど。キミが轢かれた時の状況を、覚えている範囲で構わない。犯人のことを教えてくれないか?」
事情聴取だ。
私がどれくらい眠っていたか分からないけれど、輪入道の捜査は難航しているのだろう。
私は呼吸を整え、覚えている限りのことを懸命に話した。
「えっと……私を轢いたのは輪入道で、炎を纏っていました。あと────」
話終わると、彼は静かに頷き、手元のメモを取る。
「なるほど、ありがとう。貴重な証言だ」
「いいえ、全然お役に立てなくてすみません……」
私は力になれなかった申し訳無さから、思わず視線をシーツに落とした。
すると、次の瞬間、彼は、私を助けてくれた時と同じ、優しく、包み込むような声音で囁いた。
「……火傷の跡、治るといいな」
そして、彼はそっと私の頬に優しく手を添えた。
指先から伝わるのは、あの夜、私を抱きかかえてくれたときと同じ温もり。
だけど、今はそれを味わう余裕はない。
あまりに不意打ちで、胸が高鳴る。
「え、あ、へ……?!」
思わず顔を上げる。
包帯で覆われた彼の顔の表情は、当然、読み取れない。
だけど、彼の纏う空気は、なんだか微笑んでいるように感じられた。
頭は重く、ぼんやりとしている。
鼻を突く薬品の匂い、規則正しく響く機械音。
ここが病院なのは、ぼんやりとした思考の中で理解した。
腕に目をやると、細いチューブやセンサーが無機質に貼り付けられている。
そして、そのとき、視線が手の甲で止まった。
「……火傷?」
私の腕の皮膚が、ところどころ赤くただれていることに気が付いた。
輪入道が纏っていたあの猛々しい炎によって負った傷だろうか。
腕がこうなら、きっと顔にも負っているだろう。
……ああ、鏡を見るのが怖い。
だけど、それよりも何よりも、まず胸に込み上げてきたのは、安堵だった。
「私……助かったんだ……」
正確に言えば、1度死んでいる身。
それでも、私は、この世界に、まだ留まることができたのだ。
次に視界に入ったのは、ベッドに括り付けるように垂れ下がったナースコール。
押すべきだろうか。
起きたばかりのぼんやりとした頭では、それ以上考えることができなかった。
そのとき、控えめなノックの音が、静かな部屋に響いた。
「は、はーい……!」
情けない、裏返った声で応じると、ゆっくりと開かれたドアから入ってきたのは、看護師さんではなかった。
そこに立っていたのは、あの夜、私を抱きかかえてくれた、全身包帯ぐるぐる巻きのお巡りさんだった。
彼は被っていた制帽を丁重に取り、ベッドサイドに近付いてきた。
「やあ、目が覚めたのかい?」
包帯に隠された表情は読み取れないけれど、声は温かく、安心感を覚える。
「あ、はい。ついさっき……」
「そうか。それは良かった。それなら、まず先生を呼ぼうか」
やっぱり、呼んだ方が良かったのかと、少しの気恥ずかしさを覚える。
彼がナースコールを鳴らすと、間髪入れずに、白衣を着た医師と看護師が部屋へとやって来た。
医師と看護師さんは、お巡りさんにペコリと軽く会釈をしてから、問診を始めた。
「自分の名前、言えますか?」
「◯◯●●です……」
「意識ははっきりしているね。機械の数値も安定しているし、大丈夫そうだ。ただ、怪我が完治するまでは安静にしてくださいね」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
私の言葉に、医師はにっこりと笑い、静かに部屋から出ていった。
「……」
再び、部屋には私と、終始その様子を見守っていたお巡りさんだけが残される。
一体、何の用だろう……?
そう思っていたら、彼は察したように口を開いた。
「さて、意識が戻ってそうそう悪いんだけど。キミが轢かれた時の状況を、覚えている範囲で構わない。犯人のことを教えてくれないか?」
事情聴取だ。
私がどれくらい眠っていたか分からないけれど、輪入道の捜査は難航しているのだろう。
私は呼吸を整え、覚えている限りのことを懸命に話した。
「えっと……私を轢いたのは輪入道で、炎を纏っていました。あと────」
話終わると、彼は静かに頷き、手元のメモを取る。
「なるほど、ありがとう。貴重な証言だ」
「いいえ、全然お役に立てなくてすみません……」
私は力になれなかった申し訳無さから、思わず視線をシーツに落とした。
すると、次の瞬間、彼は、私を助けてくれた時と同じ、優しく、包み込むような声音で囁いた。
「……火傷の跡、治るといいな」
そして、彼はそっと私の頬に優しく手を添えた。
指先から伝わるのは、あの夜、私を抱きかかえてくれたときと同じ温もり。
だけど、今はそれを味わう余裕はない。
あまりに不意打ちで、胸が高鳴る。
「え、あ、へ……?!」
思わず顔を上げる。
包帯で覆われた彼の顔の表情は、当然、読み取れない。
だけど、彼の纏う空気は、なんだか微笑んでいるように感じられた。
