嘘つキ
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〜嘘つキ〜
私は小学生の頃、神隠しに遭ったことがある……気がする。
気がする、と言うのは当時その自覚がなかったから。
だけど大学生になった今、思い返せばあれは神隠しだったのでは、と思うようになった。
ーーーー
あれは10年くらい前。
小学校の社会学習で知らない土地へ行った。
その、とある商店街で迷子になったのだ。
その上、雨が降り始め、私はひとまず誰も使っていなさそうなボロボロのビルの入り口で、雨宿りをすることにした。
「最悪……」
迷子になった挙句、雨にも降られるなんて。
皆と合流したら絶対に笑われる。
濡れた服を申し訳程度に手で払うけれど、当たり前のように乾かず。
「あーあ、嫌だなー」
雨で張り付いた服が気持ち悪いのもそうだけれど、迷子になったことが恥ずかしくて、クラスメイトと会いたくない気持ちが募る。
そう思う半面、不安も感じるワケで、それらを紛らわすためにやたら独り言を呟いた。
「……暇」
あまりにも暇すぎる。
その上、雨も止む気配がない。
「建物の奥でも探検しようかな」
少しだけ建物の中を覗き込むと、電気は通っていないけれど、窓から差し込む外の光でそこまで暗くはない。
「この程度なら行けそうかも」
怖い物知らずの私は、電気の通っていないビルの中を探検することにした。
奥へ進むと、各階にお手洗いと部屋が数部屋ある、至ってシンプルな構造。
だけど、意外にも部屋の中はどれも空っぽだった。
元々何の建物だったのか。
前の住人が処分したのか。
分からないけれど、これでは探検のし甲斐がない。
どうせこの扉の向こうも空っぽの部屋なんだろう。
そう思いながら2階のとある部屋の扉を開けると、そこは想像とはかけ離れた光景が広がっていた。
「……っ!?」
言葉が出ないとはこのこと。
そこに広がっていた光景とは、赤を基調とした6階建ての大型建造物。
おまけに中庭もあり、そこから大きな木が吹き抜けに伸びている。
そんな建物の廊下に、私は出た。
「うわ〜……凄っ」
同じ建物内だとは思えない。
まるで別世界。
食い入るように建物内を歩き回ると、
「あたっ!」
「うおぁっ?!」
よそ見をしていたせいで誰かにぶつかってしまった。
誰もいないと思っていたのに。
「あれ、なんでこないところに、こんな小さな子が……」
その人はスーツを着ており、左目を髪で隠した大人の人だった。
一瞬女の人かとも思ったけれど、声が男の人。
それほど見た目が綺麗だった。
だけど、1点おかしなところを挙げるとすれば、隠れていない方の目の上にコブのような大きな突起がある。
その鋭さはまるで、角のようだった。
角と言えば鬼。
「あの……私……」
予想が当たっていれば、私は食べられてしまうかもしれない。
だって昔話に出てくる鬼は人間を食べる、と相場は決まっているから。
「えっと……その……」
どうやって逃げよう。
そもそも逃げ切れるのか。
足りない頭をフル回転させるけれど、良い案が浮かばず、ただたじろぐばかり。
すると、意外にもその男の人は少し考える素振りをしたかと思えば、
「あー……はいはい、迷い込んだんやね」
面倒くさそうに言った。
この感じからして、もしかして助かる?
「ったく、使わへんときは鍵かけておけよな」
何やらよく分からないことをブツブツ言っている。
「んで、どの部屋から来たのかな?」
男の人はかったるそうな表情から、何故かにこやかな表情に変わり、私に尋ねてきた。
「えっと……」
そう言われて、来た方を振り向くけれど似たような扉が並んでおり、どの扉から自分が出てきたのか分からない。
帰り道が分からない不安から、涙が堪えきれずに溢れ出た。
「うっ……ひっく……ぅぅ……」
こんな、初対面の人の前で泣くなんて……。
「ちょっ、泣かんといて!」
ほら、困っている。
だけどポロポロと溢れる涙は止まらない。
ーーーー
その後のことは覚えていない。
どうやって戻ってきたのか、気が付いたら元いたボロボロのビルの入り口で横たわっていた。
起き上がると、遠くの方から先生の声が聞こえてきた。
「◯◯さん!こんなところにいたのね」
「先生……」
「心配したのよ。さあ、皆の元へ帰りましょう?」
「はい……」
あの出来事は夢だったのか。
だけど、建物の窓ガラスに映った自分の顔には微かに泣いたような跡が残っていた。
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