透明なアナタだから
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〜透明なアナタだから〜
今日、私は一世一代の決心を胸に抱いている。
想い人……いや、正しく言えば、想い妖怪である山崎さんに、告白するのだ。
この想いが、彼に伝わりますように……。
事の発端は、今を遡ること3ヶ月前のことだった。
あの日の記憶は、今でも忘れられない。
残業を終え、夜道をぼんやりと歩いていたときのことだった。
途端に、私の耳に、耳障りな甲高いきしみ音が飛び込んできた。
「……え?」
反射的に振り返った私の瞳に映ったのは、真夜中の闇を切り裂く、恐ろしいほどのメラメラとした明かりだった。
次の瞬間、私を襲ったのは、突然の浮遊感と、それを打ち消すような激しい痛み。
体は宙に投げ出され、すぐさま地面に叩きつけられた。
ほんの一瞬の出来事だ。
「……っ!」
全身を駆け巡る激痛に耐えながら、視界の隅で私はそれを捉えた。
炎を纏った巨大な車輪、輪入道が狂ったようにアスファルトを削りながら、猛スピードで走り去っていく様を。
どうやら、私はあの暴走した妖怪の事故に巻き込まれたらしい。
現世にいたときも、確か交通事故で死んだんだっけ……。
私は人間としての生を終え、交通安全を呼びかける妖怪である『アマビエ』になった。
まさか、妖怪になってもまた轢かれる日が来るとは。
全身の細胞が悲鳴を上げる中、ふと、疑問が頭を過ぎった。
妖怪って、死ぬの?
もし死んだら、次はどこへ行くのだろう?
このまま、無の状態で、永遠に彷徨うだけ?
途切れそうな意識。
この痛みを手放してしまえば、きっと楽になるだろう。
だけど、もしここで意識を手放したら、次に目が覚める場所があるという保証はどこにもない。
「嫌だ……」
不安と恐怖が、津波のように押し寄せる。
私は必死に、頭を回転させて意識を保ち続けた。
そのとき、遠くからサイレンの音が近付いてきた。
柔らかな布の羽ばたきのような音と共に、空飛ぶ一反木綿のパトカーが現場に到着した。
降りてきたのは、数名のお巡り妖怪だ。
その中の1人、全身を真っ白な包帯でぐるぐる巻きにし、顔つきから性別すら判別できないお巡りさんが、私に駆け寄ってきた。
彼は信じられないほど優しく私を抱きかかえた。
「大丈夫ですか!意識はありますか!」
その声は低く、男性の声だった。
「……っ……ぅ……」
なんとか呼び掛けに応えようとしたけれど、喉からは掠れた、声にならない音しか出ない。
だけど、その包帯の彼には、私の苦痛が確かに伝わったようだ。
彼は、まるで子をあやすように、優しく、強く言った。
「もう喋らなくていいから。直ぐに救急車が到着しますからね!」
それからずっと、彼は私に励ましの言葉をかけ続けてくれた。
その一言一言が、私の意識を現世に繋ぎ止める。
その甲斐あって、私は一命を取り留めた。
あのとき抱えられたぬくもりは、今も忘れられない。
そして、その包帯ぐるぐる巻きの親切な彼こそが、後の私の想い妖怪、山崎さんだったのだ。
1/7ページ
