親指の恋
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~親指の恋~
ずっと片思いをしていた徹がアルゼンチンへ行くと知ったときには、既に高校3年生が終わろうとしていた。
卒業式を終え、在校生から写真や第2ボタンをねだられている徹。
本当は私もあそこに混ざりたい。
最後に写真撮ろうって、ずっと好きだったんだよって。
私が臆病なばっかりに。
「泣いて直ぐに帰ってこないでよね」
なんて、可愛げのないことしか言えなかった。
あのとき徹がどんな顔をしていたのか今となっては思い出せない。
ーーーー
「徹、行っちゃったね」
今頃は飛行機の中だろうか。
空を飛んでいる飛行機を漠然と眺める。
「好きなら告白すればよかっただろうが」
「簡単に言わないでよ」
岩ちゃんにはいつも徹の相談に乗ってもらっていた。
それももう終わり。
トークアプリに徹への思いをつらつら書いた告白文も無駄になってしまった。
出会った頃の思い出、好きになったきっかけ、アルゼンチンでも頑張ってほしい旨。
見てよ、と岩ちゃんに画面びっしりに恋文の書かれたスマホを見せる。
「ふーん……ほらよ」
ポチッ
「え!なんで、え、伝えるつもりなかったのに!」
岩ちゃんにメッセージの送信ボタンを押されてしまった。
「取り消すなら今のうちだぞ」
そう、飛行機の中なら機内モードになっているはず。
見られる前に送信を取り消すことができる。
でも本当は誰かにボタンを押してほしかったのかもしれない。
「このままでいい」
「そうか」
岩ちゃんにポンッと頭を軽く叩かれた。
「伝わるといいな」
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