優しさの裏側
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〜優しさの裏側〜
夕暮れ時の教室。
委員会の集まりが終わり、椅子を引く音や、チャックを閉める音があちこちで響き、生徒たちが教室から出ていく。
そんな中、私も鞄を肩にかけ、教室を後にしようとした、その時。
「●●、待って」
不意に呼び止められ、熱を帯びた手が私の手首を強く掴んだ。
驚いて振り返ると、そこには三谷君が立っていた。
「……どうしたの、三谷君?」
「えっと……。その……」
彼は視線を泳がせ、掴んでいた手を離すと、今度は忙しなく指先を動かしている。
教室に差し込む西日のせいなのか、心なしか頬が赤い。
やがて、最後の1人が教室を出ていき、扉が閉まる音がした。
残されたのは私たち2人だけ。
そこで、ようやく三谷君は意を決したように私を真っ直ぐ見つめた。
「●●、好きだ。……俺と付き合ってほしい」
少し照れたように笑う彼に、胸が高鳴った。
他クラスの彼とは、この委員会でしか接点がなかったけれど、その短い時間だけで、彼の誠実さを知るには充分だった。
「……はい。よろしくお願いします」
この返事をした瞬間から、私の高校生活はバラ色に染まるのだと、その時は信じて疑わなかった。
……けれど、幸せだったのは最初だけだった。
付き合って1ヶ月も経つと、あんなに頻繁だった通知音はパタリと止んだ。
こちらから送ったメッセージに対して、3日後にようやく届く「了解」の2文字。
当日のドタキャンはもはや日常となり、私のカレンダーは、彼によって引かれた二重線ばかりが増えていく。
……。
…………。
ある日の放課後。
「三谷君、今日は一緒に帰れるかな?」
期待半分、諦め半分で彼の教室を訪ねる。
教室内は騒がしく、友達に囲まれて笑う三谷君の姿があった。
だけど、入り口に立つ私と目が合った瞬間、彼の表情からスッと笑顔が消えるのが分かった。
「悪い、これからコイツらとカラオケ行くことになったからさ。今日は1人で帰って」
「そ、そっか……。じゃあ、明日はどうかな?」
食い下がる自分の声が、情けなくて震える。
「明日も……ちょっと無理かも。帰れそうなら連絡するから」
三谷君は面倒そうに前髪を掻き上げると、一度もこちらを振り返ることなく、友人の肩を叩いて教室を出て行った。
廊下に残された私は、1人蚊帳の外に置かれたようだった。
私より後に決まったはずの予定が優先され、私との約束はなかったものにされる。
常に一番でありたいなんて贅沢は言わない。
だけど、今の私は彼にとってクラスメイトよりもずっと下の存在。
その他大勢のように扱われているようでならない。
結局、翌日になっても私のスマホの画面が震えることはなかった。
付き合う前、あんなに三谷君の方から積極的に連絡してくれたのに、今ではすっかり立場が逆になってしまった。
こんな関係になるくらいなら、初めから付き合わなければよかった。
不安は募るばかりだ。
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