キミを見つける桜
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この日も、公園でぼんやりと時間を潰していた。
湿った秋の空気、誰もいない静かな公園。
ベンチに座り、ひたすら膝を抱えて俯く。
誰にも気付かれず、このまま1日が終わればいい。
そう思っていた。
なのに……。
「●●ちゃん、こんなところにいたの?!」
突然声を掛けられて、肩が跳ねた。
顔を上げると、目の前に息を切らした及川君が立っていた。
「え、なんで……」
思わず言葉が漏れる。
この時間、及川君がいるはずがない。
だって学校で授業を受けているはずなのに。
彼は息を整えながら、ちょっと笑って言った。
「あれ?忘れたの?今日は文化祭だよ。だからちょっと抜け出してきても大丈夫。ほら、一緒に戻ろう?」
手を差し出されて、私はそっと首を横に振る。
「行けない……もう行けないの」
卒業しよう、って励ましてくれたアナタを裏切ったから。
逃げたから。
だから、もう優しくしないでよ。
それでも、及川君は少し困った顔で私を見つめてくる。
「知ってる?受験ってチームプレイなんだよ。みんなで切磋琢磨しながら勉強して、高め合う。だから、●●ちゃん1人が落ちればいいなんて、俺は思っていない」
私は視線を落として、かすれた声で呟く。
「それでも……もう間に合わないよ……」
いくら頑張ったって、もう単位が足りない。
卒業したくてもできないの。
その不安と絶望ごと見透かしたように、及川君は柔らかく言った。
「卒業までの期間が延びただけで、ゴールは逃げていないよ」
「……」
「大事なのは歩みを止めないこと。寄り道をしたって、遠回りをしたって、ちゃんと前に進めば辿り着ける」
しばらくの沈黙の後、私はふと呟くように聞いてみた。
「私でも……できるかな、ゴール」
及川君は、少しも迷わず頷いてくれる。
「もちろんだよ」
そのまっすぐな目に見つめられて、胸の奥がじんわり熱くなった。
「私……もう1年間、3年生を頑張ってみる」
「うん」
及川君のその声に背中を押される。
私はそっと彼の顔を見て、勇気を出して言葉を続けた。
「だから……お願いがあるんだけど……もし卒業できたら、一緒に桜を見てくれる?」
1年生の春は及川君の存在を知らなかった。
2年生の春は不登校で見られなかった。
3年生の春は、勇気を出して学校に通い出した頃には散っていた。
及川君は、少しだけ視線を遠くへ外してから、ぽつりと打ち明ける。
「俺、春からバレーしにアルゼンチンへ行くんだ……」
「……そっか。じゃあ難しいね」
自分でも驚くほどすんなり受け入れられた。
寂しくないと言ったら嘘になる。
だけど、ゴールするために選んだ道を、私が否定する資格なんてない。
でも、及川君はゆっくりとした声で言った。
「帰ってくる」
「……?」
「●●ちゃんが卒業したら、俺帰国するから。そしたら一緒に桜を見よう」
彼の目が真っすぐ、私を射抜く。
私は涙がこぼれないように唇を噛み締めて、そっと微笑んだ。
「約束だよ」
及川君も、にっこりと笑う。
「うん、約束」
どんなに遠回りしても、どんなに時間がかかっても、進み続ければいずれ辿り着ける。
私は、差し出された手をぎゅっと握りしめながら、静かにその未来を見つめた。
ーーFinーー
湿った秋の空気、誰もいない静かな公園。
ベンチに座り、ひたすら膝を抱えて俯く。
誰にも気付かれず、このまま1日が終わればいい。
そう思っていた。
なのに……。
「●●ちゃん、こんなところにいたの?!」
突然声を掛けられて、肩が跳ねた。
顔を上げると、目の前に息を切らした及川君が立っていた。
「え、なんで……」
思わず言葉が漏れる。
この時間、及川君がいるはずがない。
だって学校で授業を受けているはずなのに。
彼は息を整えながら、ちょっと笑って言った。
「あれ?忘れたの?今日は文化祭だよ。だからちょっと抜け出してきても大丈夫。ほら、一緒に戻ろう?」
手を差し出されて、私はそっと首を横に振る。
「行けない……もう行けないの」
卒業しよう、って励ましてくれたアナタを裏切ったから。
逃げたから。
だから、もう優しくしないでよ。
それでも、及川君は少し困った顔で私を見つめてくる。
「知ってる?受験ってチームプレイなんだよ。みんなで切磋琢磨しながら勉強して、高め合う。だから、●●ちゃん1人が落ちればいいなんて、俺は思っていない」
私は視線を落として、かすれた声で呟く。
「それでも……もう間に合わないよ……」
いくら頑張ったって、もう単位が足りない。
卒業したくてもできないの。
その不安と絶望ごと見透かしたように、及川君は柔らかく言った。
「卒業までの期間が延びただけで、ゴールは逃げていないよ」
「……」
「大事なのは歩みを止めないこと。寄り道をしたって、遠回りをしたって、ちゃんと前に進めば辿り着ける」
しばらくの沈黙の後、私はふと呟くように聞いてみた。
「私でも……できるかな、ゴール」
及川君は、少しも迷わず頷いてくれる。
「もちろんだよ」
そのまっすぐな目に見つめられて、胸の奥がじんわり熱くなった。
「私……もう1年間、3年生を頑張ってみる」
「うん」
及川君のその声に背中を押される。
私はそっと彼の顔を見て、勇気を出して言葉を続けた。
「だから……お願いがあるんだけど……もし卒業できたら、一緒に桜を見てくれる?」
1年生の春は及川君の存在を知らなかった。
2年生の春は不登校で見られなかった。
3年生の春は、勇気を出して学校に通い出した頃には散っていた。
及川君は、少しだけ視線を遠くへ外してから、ぽつりと打ち明ける。
「俺、春からバレーしにアルゼンチンへ行くんだ……」
「……そっか。じゃあ難しいね」
自分でも驚くほどすんなり受け入れられた。
寂しくないと言ったら嘘になる。
だけど、ゴールするために選んだ道を、私が否定する資格なんてない。
でも、及川君はゆっくりとした声で言った。
「帰ってくる」
「……?」
「●●ちゃんが卒業したら、俺帰国するから。そしたら一緒に桜を見よう」
彼の目が真っすぐ、私を射抜く。
私は涙がこぼれないように唇を噛み締めて、そっと微笑んだ。
「約束だよ」
及川君も、にっこりと笑う。
「うん、約束」
どんなに遠回りしても、どんなに時間がかかっても、進み続ければいずれ辿り着ける。
私は、差し出された手をぎゅっと握りしめながら、静かにその未来を見つめた。
ーーFinーー
