キミを見つける桜
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冗談とはいえ、及川君に授業をサボらせるワケにもいかず、私はしっかりと睡眠を取り、万全の体調で期末テストに臨んだ。
その甲斐あって、返却されたテストは平均点には届かなかったものの、どの教科も赤点だけは避けられた。
周囲の生徒たちは平均点に届かなかったことを嘆いていたけれど、私にとってはこれだけでも充分すぎる結果だ。
こうして私は、無事に夏休みを迎えることができた。
ーーーー
学校の教室から見える空は青々としていて、雲ひとつない。
おまけに、グラウンドの方からは、蝉の声が耳に痛いほど響いてきた。
夏休み中にも関わらず、不登校期間の穴を埋めるための補習と自習のため、私は相変わらず登校していた。
私1人のために冷房など点けてもらえるはずもなく、卓上扇風機とクールネックリングを首に掛け、少しでも暑さを凌ぎながら、黙々と問題を解く。
それでも額にはじんわり汗が滲み、用紙に手を置いた箇所は汗で少し濡れる。
今日は終わったら絶対にアイスを買って帰るんだ……。
自分にそう言い聞かせて、苦手な問題に挑むものの、意識が朦朧としてきて、ふとノートを見ると、隅の方にソフトクリームやアイスキャンディの落書きがいくつも増えていた。
「はは……」
思わず苦笑してしまう。
これは現実逃避なのかもしれない。
そんなとき、机の上のスマホが2度、短く震えた。
メッセージアプリを開くと、
“やっほー!勉強捗ってる?”
という明るい文章とともに、ユニフォーム姿の及川君と、背景には部員らしき男子たちが楽しげに写る写真が送られてきた。
画面越しでも伝わってくる眩しさに、こちらまで目を細めてしまう。
返信を考えているうちに、もう1通メッセージが届いた。
“今休憩中なんだけど、汗だく地獄だよ〜!”
静かに座っている自分ですらこんなに暑いのに、及川君たちはコートの上で走り回っているのだ。
きっとこっちより、ずっと暑いんだろうな。
うまく気の利いた言葉が浮かばなくて、
“大変そうだね”
なんて、つい素っ気ない返事をしてしまう。
でも送信してすぐ、返事が返ってきた。
“大会前だからね。でも、●●ちゃんも頑張ってるじゃん。偉い!”
サムズアップのスタンプも一緒についてきた。
そのキャラクターは絶妙に間抜けで、思わず吹き出してしまう。
「ふふ、何このキャラ」
教室に自分の笑い声だけが響いた。
この静かな教室には私1人しかいないけれど、体育館では及川君たちも頑張っている。
そう思うと、少しだけやる気が出た。
「さて、もうひと頑張りしますか」
私はノートの隅に描いた落書きを消してから、問題集と向き合った。
……。
…………。
首に掛けていたクールネックリングはすっかり温くなった。
だけど、それでも平気なくらい熱気も落ち着き始めている。
窓の外は淡い茜空。
補習を終えて昇降口に向かうと、ちょうど及川君が部活帰りのジャージ姿で出てきた。
「あ、●●ちゃん!今日も補習お疲れ様!」
「及川君も部活お疲れ様……」
そんなやりとりをしながら、お互い靴箱で外靴に履き替えて、自然な流れで校門まで並んで歩いた。
「私、こっちだから」
校門の手前で立ち止まり、私は自分の帰る方向を指さして、及川君に背を向ける。
だけど、私は及川君に言いたいことがある。
別に重要なことではない。
なんだったら、言わなくてもいいことだけれど、せっかくだから……。
振り向くと、別れたはずの及川君もこちらを向いていた。
「「ねぇ!」」
2人して同時に口を開く。
「……あ、ごめん、先に言って?」
私が遠慮がちに促すと、
「いや、せーので言おうよ」
及川君がいたずらっぽく笑いながら提案する。
それに私は頷いた。
そしてタイミングを合わせて、
「「せーのっ!……アイス食べたくない?」」
2人揃って同じ言葉が飛び出した後、思わず声を出して笑ってしまう。
こんなふうにタイミングが合うのが、ちょっとおかしかった。
「やっぱり考えること一緒だったね」
「ね、今日めっちゃ暑かったもん!」
そのまま意気投合して、コンビニまでの道を並んで歩き出す。
蝉の声が薄れた夕暮れの帰り道、いつもと変わらないはずなのに、どこか特別に感じた。
その甲斐あって、返却されたテストは平均点には届かなかったものの、どの教科も赤点だけは避けられた。
周囲の生徒たちは平均点に届かなかったことを嘆いていたけれど、私にとってはこれだけでも充分すぎる結果だ。
こうして私は、無事に夏休みを迎えることができた。
ーーーー
学校の教室から見える空は青々としていて、雲ひとつない。
おまけに、グラウンドの方からは、蝉の声が耳に痛いほど響いてきた。
夏休み中にも関わらず、不登校期間の穴を埋めるための補習と自習のため、私は相変わらず登校していた。
私1人のために冷房など点けてもらえるはずもなく、卓上扇風機とクールネックリングを首に掛け、少しでも暑さを凌ぎながら、黙々と問題を解く。
それでも額にはじんわり汗が滲み、用紙に手を置いた箇所は汗で少し濡れる。
今日は終わったら絶対にアイスを買って帰るんだ……。
自分にそう言い聞かせて、苦手な問題に挑むものの、意識が朦朧としてきて、ふとノートを見ると、隅の方にソフトクリームやアイスキャンディの落書きがいくつも増えていた。
「はは……」
思わず苦笑してしまう。
これは現実逃避なのかもしれない。
そんなとき、机の上のスマホが2度、短く震えた。
メッセージアプリを開くと、
“やっほー!勉強捗ってる?”
という明るい文章とともに、ユニフォーム姿の及川君と、背景には部員らしき男子たちが楽しげに写る写真が送られてきた。
画面越しでも伝わってくる眩しさに、こちらまで目を細めてしまう。
返信を考えているうちに、もう1通メッセージが届いた。
“今休憩中なんだけど、汗だく地獄だよ〜!”
静かに座っている自分ですらこんなに暑いのに、及川君たちはコートの上で走り回っているのだ。
きっとこっちより、ずっと暑いんだろうな。
うまく気の利いた言葉が浮かばなくて、
“大変そうだね”
なんて、つい素っ気ない返事をしてしまう。
でも送信してすぐ、返事が返ってきた。
“大会前だからね。でも、●●ちゃんも頑張ってるじゃん。偉い!”
サムズアップのスタンプも一緒についてきた。
そのキャラクターは絶妙に間抜けで、思わず吹き出してしまう。
「ふふ、何このキャラ」
教室に自分の笑い声だけが響いた。
この静かな教室には私1人しかいないけれど、体育館では及川君たちも頑張っている。
そう思うと、少しだけやる気が出た。
「さて、もうひと頑張りしますか」
私はノートの隅に描いた落書きを消してから、問題集と向き合った。
……。
…………。
首に掛けていたクールネックリングはすっかり温くなった。
だけど、それでも平気なくらい熱気も落ち着き始めている。
窓の外は淡い茜空。
補習を終えて昇降口に向かうと、ちょうど及川君が部活帰りのジャージ姿で出てきた。
「あ、●●ちゃん!今日も補習お疲れ様!」
「及川君も部活お疲れ様……」
そんなやりとりをしながら、お互い靴箱で外靴に履き替えて、自然な流れで校門まで並んで歩いた。
「私、こっちだから」
校門の手前で立ち止まり、私は自分の帰る方向を指さして、及川君に背を向ける。
だけど、私は及川君に言いたいことがある。
別に重要なことではない。
なんだったら、言わなくてもいいことだけれど、せっかくだから……。
振り向くと、別れたはずの及川君もこちらを向いていた。
「「ねぇ!」」
2人して同時に口を開く。
「……あ、ごめん、先に言って?」
私が遠慮がちに促すと、
「いや、せーので言おうよ」
及川君がいたずらっぽく笑いながら提案する。
それに私は頷いた。
そしてタイミングを合わせて、
「「せーのっ!……アイス食べたくない?」」
2人揃って同じ言葉が飛び出した後、思わず声を出して笑ってしまう。
こんなふうにタイミングが合うのが、ちょっとおかしかった。
「やっぱり考えること一緒だったね」
「ね、今日めっちゃ暑かったもん!」
そのまま意気投合して、コンビニまでの道を並んで歩き出す。
蝉の声が薄れた夕暮れの帰り道、いつもと変わらないはずなのに、どこか特別に感じた。
