キミを見つける桜
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体育の授業。
体操着に着替えた男女の生徒たちがグラウンドへと集まる。
暖かくなってきたとは言えまだ肌寒いため、ほとんどの生徒が長袖を着ている。
そんな今期の種目は持久走。
時間内にグラウンドを何周できるのかを競う。
引きこもっていた私にとっては体育そのものが億劫なのに、よりによって持久走とは。
先生の合図とともに一斉に走り出す。
私も無理のない範囲で走り始めた。
……。
…………。
「ハァ……ハァ……」
走り始めて数周。
あまり体力のない私は早くも息が上がり、走るペースが落ちていく。
その間、何人もの生徒に抜かされた。
「残り20分ー!!」
体育の先生が残りタイムを知らせるために叫ぶ。
その先生の側で1人の生徒が見学をしていた。
及川君だ。
足を捻挫しているのだから走れないのは当たり前だけれど、少しだけ羨ましかった。
足を止めたい。
サボりたい。
そう思いながら彼の側を通過しようとしたら、何故か目が合った。
ほんの一瞬だったけれど、それはまるで止まるなよ、と言っているかのような眼差し。
その目を見て、私はまた走り始める。
及川君のために走っているワケじゃないけれど、彼の目がそうさせた。
だけど、私の意思に体は追い付かず、派手に転んでしまった。
恥ずかしい、痛い、惨め。
色んな感情がぐちゃぐちゃになり、中々起き上がれなかった。
そんな私の手を引いて起こしてくれたのは及川君だった。
「●●ちゃん!大丈夫?!」
「うん……」
そうは言えど、足首に違和感がある。
捻ったのかな。
だけど、走っていれば治るはず。
「手、離して……」
持久走を再開しようと、及川君に手を離すよう促した。
それなのに、何故か彼は離してくれない。
それどころか、
「●●ちゃん、足痛い?」
と、聞いてきた。
私は首を横に振る。
これくらい大した事ない。
だけど及川君は、
「嘘」
それだけ言うと私から先生の方に向き直し、
「彼女、足痛めたみたいなので保健室へ連れていきます」
私は及川君に保健室へと連れて行かれた。
ーーーー
1年生の夏から冬までの半年間、保健室登校をしていた。
だから、ここに来るのも久しぶり。
だけど、保健室に入ると私の知らない先生がいた。
安田先生、異動になっちゃったのか……。
新しい保健室の先生は及川君の顔を見るや否や、
「あら、及川君。怪我悪化したの?」
彼の名前を呼んだ。
さながら私の方が付き添いか。
何も言えないでいる私の代わりに、及川君が説明をした。
「いえ、俺じゃなくて彼女の方を。体育の授業中に足を捻ったみたいなんです」
「あらあら大変。そこの椅子に座って足出して。及川君も立っているのがツラかったら座っていいから」
先生に言われた通り、椅子に腰掛けてからジャージと靴下を捲る。
すると、足首は思っていた以上に赤く腫れ上がっていた。
「これは……完全に捻挫ね。えーっとテーピングと氷嚢……」
先生はそう言って棚をあさり、次に冷凍庫を開けた。
「……って、氷切らしてるじゃない。ちょっと氷取りに職員室行くから、待っていてちょうだい」
「はい」
先生は氷嚢を片手に慌てて出ていった。
保健室に残された私と及川君。
「……」
「……」
気まずい。
あ、そうだ。
ここまで連れてきてくれたお礼をまだ言っていなかった。
「及かゎ──」
「痛いね」
だけど、及川君は私の声に被せるよう、先に言ってきた。
そして、彼は私の前にしゃがむと、足首をそっと触った。
まるで労るように、優しい手つきで。
その触り方に、変に意識してしまう。
「ぁ、……あの」
「ん?」
頬が熱くなり、少し声が上ずる。
そんな私に及川君は首を傾げた。
「ここまで連れてきてくれてありがとう。もう1人で大丈夫だから、授業に戻ってもいいよ」
じゃないと、いつまでも熱が引かない気がしたから。
それなのに、
「戻ったところで俺もこの足だから参加できないし……。それとも俺がいると迷惑?」
困り顔で言われて迷惑だなんて言えない。
「そ、そんな……ことは……ない、けど……」
「ならここにいる」
「……っ」
やっぱり無理にでも帰ってもらった方が良かったか。
そんなことを考えていると、
「俺たち、お揃いだね」
及川君は嬉しそうに怪我をしている自分の足を出した。
「……全然違うし」
そう、同じにしては駄目。
だって私のはただの運動不足と鈍くささのせいで負ったものだから。
及川君と同じにしたら失礼になる。
だけど、お揃いという言葉が少しくすぐったかった。
先生が戻ってくるまでに顔の火照りが収まればいいけど。
体操着に着替えた男女の生徒たちがグラウンドへと集まる。
暖かくなってきたとは言えまだ肌寒いため、ほとんどの生徒が長袖を着ている。
そんな今期の種目は持久走。
時間内にグラウンドを何周できるのかを競う。
引きこもっていた私にとっては体育そのものが億劫なのに、よりによって持久走とは。
先生の合図とともに一斉に走り出す。
私も無理のない範囲で走り始めた。
……。
…………。
「ハァ……ハァ……」
走り始めて数周。
あまり体力のない私は早くも息が上がり、走るペースが落ちていく。
その間、何人もの生徒に抜かされた。
「残り20分ー!!」
体育の先生が残りタイムを知らせるために叫ぶ。
その先生の側で1人の生徒が見学をしていた。
及川君だ。
足を捻挫しているのだから走れないのは当たり前だけれど、少しだけ羨ましかった。
足を止めたい。
サボりたい。
そう思いながら彼の側を通過しようとしたら、何故か目が合った。
ほんの一瞬だったけれど、それはまるで止まるなよ、と言っているかのような眼差し。
その目を見て、私はまた走り始める。
及川君のために走っているワケじゃないけれど、彼の目がそうさせた。
だけど、私の意思に体は追い付かず、派手に転んでしまった。
恥ずかしい、痛い、惨め。
色んな感情がぐちゃぐちゃになり、中々起き上がれなかった。
そんな私の手を引いて起こしてくれたのは及川君だった。
「●●ちゃん!大丈夫?!」
「うん……」
そうは言えど、足首に違和感がある。
捻ったのかな。
だけど、走っていれば治るはず。
「手、離して……」
持久走を再開しようと、及川君に手を離すよう促した。
それなのに、何故か彼は離してくれない。
それどころか、
「●●ちゃん、足痛い?」
と、聞いてきた。
私は首を横に振る。
これくらい大した事ない。
だけど及川君は、
「嘘」
それだけ言うと私から先生の方に向き直し、
「彼女、足痛めたみたいなので保健室へ連れていきます」
私は及川君に保健室へと連れて行かれた。
ーーーー
1年生の夏から冬までの半年間、保健室登校をしていた。
だから、ここに来るのも久しぶり。
だけど、保健室に入ると私の知らない先生がいた。
安田先生、異動になっちゃったのか……。
新しい保健室の先生は及川君の顔を見るや否や、
「あら、及川君。怪我悪化したの?」
彼の名前を呼んだ。
さながら私の方が付き添いか。
何も言えないでいる私の代わりに、及川君が説明をした。
「いえ、俺じゃなくて彼女の方を。体育の授業中に足を捻ったみたいなんです」
「あらあら大変。そこの椅子に座って足出して。及川君も立っているのがツラかったら座っていいから」
先生に言われた通り、椅子に腰掛けてからジャージと靴下を捲る。
すると、足首は思っていた以上に赤く腫れ上がっていた。
「これは……完全に捻挫ね。えーっとテーピングと氷嚢……」
先生はそう言って棚をあさり、次に冷凍庫を開けた。
「……って、氷切らしてるじゃない。ちょっと氷取りに職員室行くから、待っていてちょうだい」
「はい」
先生は氷嚢を片手に慌てて出ていった。
保健室に残された私と及川君。
「……」
「……」
気まずい。
あ、そうだ。
ここまで連れてきてくれたお礼をまだ言っていなかった。
「及かゎ──」
「痛いね」
だけど、及川君は私の声に被せるよう、先に言ってきた。
そして、彼は私の前にしゃがむと、足首をそっと触った。
まるで労るように、優しい手つきで。
その触り方に、変に意識してしまう。
「ぁ、……あの」
「ん?」
頬が熱くなり、少し声が上ずる。
そんな私に及川君は首を傾げた。
「ここまで連れてきてくれてありがとう。もう1人で大丈夫だから、授業に戻ってもいいよ」
じゃないと、いつまでも熱が引かない気がしたから。
それなのに、
「戻ったところで俺もこの足だから参加できないし……。それとも俺がいると迷惑?」
困り顔で言われて迷惑だなんて言えない。
「そ、そんな……ことは……ない、けど……」
「ならここにいる」
「……っ」
やっぱり無理にでも帰ってもらった方が良かったか。
そんなことを考えていると、
「俺たち、お揃いだね」
及川君は嬉しそうに怪我をしている自分の足を出した。
「……全然違うし」
そう、同じにしては駄目。
だって私のはただの運動不足と鈍くささのせいで負ったものだから。
及川君と同じにしたら失礼になる。
だけど、お揃いという言葉が少しくすぐったかった。
先生が戻ってくるまでに顔の火照りが収まればいいけど。
