キミを見つける桜
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〜キミを見つける桜〜
初めはどこにでもいる女子高生だった。
不安を持ちながら入学式に臨み、どんな友達ができるかワクワクし、恋なんかもするのかと色めいていた。
だけどいつの日からだろう、夏休みを明けてしばらくすると、急に学校に行けなくなった。
別に虐められているワケでもないし、恐い先輩がいるワケでもない。
勉強だって得意じゃないけれど、赤点は取らない程度には済んでいる。
それなのに、学校へ行こうとすると動悸が激しくなり、上手く呼吸ができなくなる。
親はそんな私を見て病院へ連れて行ったけれど、精神的な要因だろう、と具体的な理由は分からず、気休めの精神安定剤を処方されるのみ。
しばらくは保健室登校をして粘ったけれど、やがてそれすら出来なくなった。
こうして私は1年生の冬頃から完全な不登校になった。
ーーーー
季節は一巡し、春がやってきた。
学校に行かなくても学年は上がっていくワケで、私は3年生になった。
もちろん始業式に出ていないため、自分のクラスすら分からない。
ある日、クラスの担任が私の家を訪ねてきた。
すっかりだらけきった格好で、渋々リビングへ行くと、私のお母さんと男性の担任の先生、それから知らない男子生徒がいた。
知らない男子生徒とはいえ、うちの学校の制服を着ているから、大方同じクラスの生徒なんだろう。
私がお母さんの隣に座わると、先生は話し始めた。
「さて、揃ったことですし、話をしましょうか。率直に申しますと、このままでは娘さんは単位が足りずに留年します」
「……」
なんら不思議ではない。
それだけ学校に行かなかったんだから。
むしろ、今から学校に行けばまだ留年を免れることに驚きだ。
だけど、そう思っていたのは私だけの様で、隣を見るとお母さんは涙を堪えていた。
「そう……ですか……」
平静を装っているみたいだけれど、ようやく絞り出た言葉はこの一言。
「◯◯さん、お母様のためにも明日から学校に来れませんか?」
「……」
私は先生の質問には答えず、隣に座っていた男子生徒をチラりと見た。
人当たりが良さそうなイケメン。
きっとモテるんだろうな。
そんなことを考えていると、男子生徒もこちらの視線に気付いたのか、柔らかくほほ笑んだ。
そうかと思えば、
「先生」
男子生徒は先生を呼び、何やら目配せをした。
「ああ、すまんな及川」
彼、及川君って言うのか。
先生は及川君から私へと顔を向けて、話を続けた。
「◯◯さん、彼は及川徹。◯◯さんのクラスメイトの1人なんだか……、明日から急に来いって言われても戸惑うと思ったから、彼を連れてきた」
「はじめまして、って言うのも変だけど。◯◯さんが困らないように俺がサポートするから、学校に来てみない?それで、一緒に卒業しよう!」
及川君は明るい声で言い、私に手を差し出してきた。
大きくてゴツゴツして、私のとは違う手。
だけど、その声のどこかに胡散臭さを感じた。
単に内申点を稼ぎに来ているだけなんじゃないのか、いざ学校へ行ってもサポートなんてしてくれないんじゃないのか……と、勘ぐってしまう。
だから、その手を取れないでいた。
「……」
行き場を失った彼の手は、気まずそうに引っ込んだ。
悲しそうに眉毛をハの字にさせる及川君。
手を取らなかった私が悪いみたいじゃない。
いや、悪いんだけども。
「まあ……話は以上だ。◯◯さん、明日学校で待っているからな」
「……」
先生に対しても返事をできないでいると、お母さんが慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「先生、今日はわざわざご足労いただきありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ急に押しかけてしまって」
お母さんは先生と及川君を見送るためにリビングを出た。
去り際、及川君に、
「バイバイ、●●ちゃん」
と笑顔で手を振られたけれど、やっぱり何も出来なかった。
……。
…………。
見送りから戻ってきたお母さんは、
「●●……今日はいきなり先生が来て疲れちゃったね。だから、夜ご飯はどこか食べに行こうか」
私を責めるでもなく、笑顔で提案してくれた。
本当は強く私を責め立てたいはずなのに、引きずってでもして学校に行かせたいはずなのに。
今にも泣きそうなお母さんの笑顔を見ていると、胸がキュッと締め付けられる気分になった。
明日……学校に行ってみようかな……。
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